見出し画像

トム・クルーズに幸あり。

僕が『トップガン・マーヴェリック』を楽しみにしていたのは、そこいらで「トップガンよかった!」なんて言っている輩とは比べものにならぬほど昔からだと自負しており、それは高校3年生の頃……つまり4年前まで遡る。ちなみに、『トップガン』というのはトニー・スコット監督が1986年にトム・クルーズを主演にして撮った名作であり、エリート・パイロット(戦闘機乗り)を育てるための機関の名称だ。

当時上映していた『ミッション・イン・ポッシブル/フォールアウト』を観たことをきっかけに『トップガン』の続編が出るという情報を小耳に挟んだ。『トップガン』というと、父親が大好きな映画であり、中学だったか高校だったかの下校の音楽が、『トップガン』の冒頭ー夕焼けの中、空母から戦闘機が発艦する様子が映されるあの冒頭ーで流れている「Danger Zone」だったという話を聞き、僕もなんとなく興味が湧いたので観た。


高校の頃『トップガン』を観て、大学に入って何回か観て、『トップガン・マーヴェリック』の上映が始まる頃にもう1度観た。それくらい、僕は『トップガン・マーヴェリック』を待ち望んでいた。某ウイルスの影響で公開日が幾度も伸びてしまったが、2020年7月10日に公開されるはずだった頃のチラシを持っているほど、待ち望んでいた。

アルバイトが終わり、控えめに雨が降る中、ぼくは自転車を漕いで京都にあるシネマコンプレックスに出かけた。ついでにいうと、その前にチラッと餃子屋さんに寄ってから生ビールと餃子をいただいた。そして時刻は20時。久しぶりにシネマコンプレックスのシアターに人が詰まっているのを見た。そしてあくびが出てまぶたが重くなるほど長くてつまらない映画の予告編をやり過ごした先に、『トップガン』がいた。

夕焼けの中、空母から戦闘機が発艦する様子が映される映像に「Danger Zone」が添えられ、開始から興奮が高まる。マーヴェリック(トム)が無茶な飛行をして上官に叱られ、「荷物をまとめろ」と言われ告げられた行き先がトップガンであるというラッキーサプライズから物語が始まり、超音速で飛び交う戦闘機の空中戦の迫力のあるカット割、トムの戦友の息子がピアノで弾き語る曲、砂浜での球技(バレーとアメフトという違いはあるが)、時折挟まれる色恋、挫折を乗り越え飛行するマーヴェリック、そして止むを得ず35年前と同じ戦闘機に乗り、曲芸的な飛行で敵を撃破するマーヴェリック。前作を丁寧に踏襲し、かつての記憶や熱といった類のものを「思いださせ、観客に興奮を覚えさせる作品に、僕は小さく震えてしまった。

帰り道、『トップガン』のサウンドトラックを聴くわけでもなく自転車に乗り、『トップガン』の戦闘機を思い浮かべながら超音速で自転車を漕いで自宅へと帰った。今思えば、その時の顔はちょっとばかりトム・クルーズになっていたような気もしないことはない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?