マガジンのカバー画像

滝口寺伝承

9
「横笛」:横笛は平安末期のお話(エピソード0) 「火宅の女(ひと」:は現在執筆中の鎌倉~南北朝時代のお話です。 同じ滝口寺であった二つの物語です。
運営しているクリエイター

2021年11月の記事一覧

【滝口寺伝承(1)横笛】小さな愛の寺

【滝口寺伝承(1)横笛】小さな愛の寺

滝口入道
ある高野聖がおりました。名を滝口入道と申します。

在俗のときの名を斎藤滝口時頼と申しまして、名門滝口武士の出であったことから13歳で召し出され、小松殿(平重盛)の衛士をしておりました。

ある日時頼は、建礼門院(徳子)の雑役に従事する下級の侍女であった「横笛」という名の娘と出会い、恋に落ちます。

時頼を良家の婿にして宮仕えをさせようと思っていた時頼の父は、娘の身分の低さを理由に、結婚

もっとみる
【滝口寺伝承(2)火宅の女①】

【滝口寺伝承(2)火宅の女①】

後醍醐帝(ごだいごてい)の御時のお話です。

鎌倉幕府が滅び、朝敵足利尊氏を追討した京の都は束の間の平和に酔いしれておりました。

そんな弥生の空の下、都はある武将の噂でもちきりでした。清和源氏の嫡流、源八幡太郎義家の後裔にして、この度左近衛ノ中将に昇進されたー新田義貞(にったよしさだ)のことです。

義貞は、挙兵してわずか半月で鎌倉幕府を打ち滅ぼし、朝廷に反旗を翻した足利尊氏を破って九州へ敗走さ

もっとみる