カバ

米軍 Love Scammer 28

クロエが ラインで

「ティンダー(デートアプリ)で知り合った男性と今話ししてるんだけど。 彼、米軍で医者として働いてて。今、韓国にある基地で働いてるからスカイプで顔見て話せない、って言ってて、しかもアメリカ人なのに英語がヘタなの。怪しいよね。まだ会ってもいないのに、君の事いつも考えてるよ、だって。 それで彼のFace bookを覗いたら1週間前にアカウントが作られたばかりで、そこにその日に5枚の写真だけがアップされていてるんだけど、どう思う?」と彼のティンダーのプロフィール写真を送ってきた。

「これ詐欺だよ、そのうちお金要求してくるよ、military romance scam(米軍 、ロマンス、 詐欺、)でグーグルしてみなよ、沢山、騙されてる人いるよ、きっと彼が使ってる写真もどこからか盗んだ他人の写真だよ。」

「カオリは何でそう思うの?」

「今、彼は韓国にいるんでしょ? 今、向こう夜中の2時だよ。」

「あ、そうか、6時間差だと思ってた。」

「14時間だよ。 しかもクロエ!見て! 今、彼のプロフィール写真をよく見たら、17mile away(約27キロ)って書いてあるよ。それGPSから表示される彼の現在地だよ、ブルックリンからの距離で考えると多分ニュージャージーに住んでる韓国人の詐欺師なんじゃないかな? この詐欺師、脇が甘いね。」

「Ha! そっか、そうよね!?これってGPSだから今、彼のいる現在地なのか。前にニューヨークに住んでたから、韓国に来ても表示される距離が変わって無いんだって言われて信じてた。人の愛情につけこむなんて最低!ムカつくー!このScammer(詐欺師)!!」

「しかも、この写真の男、ゴリゴリにタトゥー入ってるじゃん、医者や弁護士でタトゥーある人いなくは無いけど。お医者さんて、なんだかんだnerdy(ださめ、おたくっぽい)じゃない? まあ、私はnerd好きだけど。」


と確信もって詐欺だと言いきる私も実は、1年前に米軍の詐欺の被害にあった。

あの頃、私の2匹飼っているうちの1匹、12年連れ添った最愛の猫がガンで亡くなった。半年以上看病し治ると信じきっていた私にとって、私の腕の中で息を引き取った瞬間、潤んでいた深いグリーンの瞳の中の水が引き潮のように引き、枯れたマットな色に変化した時、生から死への変化がはっきり目の前で起こって。本当に?本当に死んでしまったんだと認めざろうえなくなった。人間以上に私に愛情をくれていて、いつも私の体のどこかにピッタリとひっついていたあの黒と白のふさふさの存在が消え、私の身体と精神の一部が欠けた様な喪失感は愛猫が亡くなった後の何日もの間、尾を引いた。

今までの人生で一番辛いとも言える日々だった。

とにかく、猫サイズの黒いカバンや黒い物体は全て愛猫を思い起こさせ、1ヶ月ぐらい毎日独りで泣いた。。。朝泣いて仕事、帰宅して又泣くを涙が出なくなるまで繰り返し。水を沢山飲んでは又泣いた。


そんな愛猫が私の体から消え、もっとも抜け殻になっていた時、一つのデートアプリから、何度もメッセージが来たのが彼だった。米軍の彼はブルックリンの基地に最近転勤してきたと言う。サーチして確かめると確かに、そこには米軍基地がある。普段だったら戦う仕事をしている人は私のタイプではないので話す気も無かったが。

彼は毎日、毎日、メッセージをくれて。励ましてくれた。

ある日、落ち込んでカゼ気味で寝込んでいる時に彼から電話がかかってきた、誰とも話す気になれず、電話には出なかった。

その後も、彼は何度もテキスト(メール)してきたので、

次の週の土曜日の昼に会う事にした。

彼はまだ、NYに来て浅いので、私に場所を決めて欲しいと言ってきた。私は、どこでも良くて、サウスストリート シーポートは?と言った。

彼は約束の日までの1週間までの間にも、毎日メールで連絡をくれて。メールで色々な軍での経験を話してくれた。

軍の宿舎で初めて自分の部屋をもらったときの話しで。僕は、バラックの一番奥の部屋に住んでいたんだけど、その日はいい天気でクーラーをつけるほど暑くも無かったから窓を全開にしていたんだ、2階にある部屋の窓際の自分のベッドと誰も使っていないもう一つのベッドを繋げて、新しく買ったサテンのシーツを敷いて、シャワーの後、裸のまま思いっきりベッドにジャンプしたんだ、そうしたら、勢いで滑って開いていた窓からそのまま一階の芝生に落ちて、ミリタリーのバスストップの前に落ちて、柔らかい芝生と泥がついた俺のおしりを丁度そこに集まっていた人々に見られて、恥ずかしかったよ。

他には、

今、性欲が溜まった女性隊員が自分の隣のコンピューターで、変な画像を観ていて、なんかモゾモゾしてる音が聞こえる。そうそう、彼女は元カレの浮気を発見して半殺しにしたらしいよ。lol(笑)

軍人の性欲の処理のメインのロケーションはシャワー室で、もし排水溝が女性だったら子供がたくさん産まれているだろうね。

もちろん米軍内に同性愛者もいるけど、Don't ask,Don't tell(聞かない言わない)が原則だよ。

家族は、母親がオレゴン出身のアメリカ人、父親がスイス人で弟が1人いる。父が亡くなった後、アメリカに移って、テキサスに住んでいる叔父と16歳の時から暮らしていたんだ。母は僕が10歳の時に弟と自分をおいて出て行ったよ。母はまだスイスに住んでるらしいけど。ずっと会っていないし、憎んでいるけど会いたい。

子供がもうそろそろ欲しい、俺はアメリカ人じゃなくてヨーロピアンだから、女性に対して一途なんだ。

など。

でも彼はデートの約束の日、突然、テキサスの基地に出張になったのでと約束をキャンセルした。

その後、しばらく連絡が途絶え、

また連絡がきた時に彼は「ドイツのアメリカ基地に送られる事になったので、携帯が使えなくなるから、パソコンのメールでのやり取りしか出来なくなった」と言い。私達はGメールのチャット、hang outで連絡を取り合う事になった。

その後も

ドイツ軍とのアメリカ軍の合同訓練で、僕はスイス人だからドイツ語も話せるから通訳を頼まれて、沢山の軍人の前で通訳をしている最中に、がんばって堪えていたけれど、堪えきれずに、もの凄い爆音のおならがマイクを通じて響きわたってしまって。真面目な話しの最中に、その場が笑いでどよめいたんだ。などを話してくれて。

変な話しだけど、実際に出会ったこともないのに、面白い話しをしてくれる彼に段々と惹かれて行った。

私にとっての米軍の知識は、高校時代にハロウィーンのイベントで町田の方にある米軍基地に、黒いポリ袋をコスチューム代わりに着た友達に「ハロウィーンの時だけは米軍基地に入れるんだよ!」と連れて行ってもらった事があるぐらいで、それ以外は全く情報を持ち合わせていなかったので、彼の軍隊での話しを何の疑いも無く聞いた。

そして、3〜4週間が過ぎたある日を堺に、彼は少しずつお金の話しをし始めた。

彼の話しでは、自分の親が作った会社がロンドンにあり、今はロンドンにいる弁護士に毎月お金を払って、その会社を維持してもらっている。あと1年半ぐらいでアーミーを辞めて、その後にそこで働きたいと思っている。その会社を維持する為に、この日までに弁護士にお金を払わなければならない。と

私は、彼がお金の話しをし始めた時、若干の気持ち悪さ覚えたが。

自分を見捨てて出て行った母の愛情が欲しかった事、可愛がっている弟の事、アジア人があまり好きでない同僚のモーガンの事、遠距離していた前の彼女の話などをほとんど毎日の様にメールしてきて。そして弟、叔父、甥、元カノの写真を送ってきて彼らの詳細を説明し。もちろん自分の写真も何枚か送ってくる彼の話しは、米軍情報がほとんど皆無で最愛の猫を失ったボロボロの完全に弱っている私の心の隙間になんの疑いも無くすーっと入り込んできた。

私は、まだ、会った事が無い人に、お金が絡む様な事は出来ないと何度も断った。

しかし、ある日、私にカードが送りたいからと言って。私の住所を聞き出し、そこには2500ドル(約25万円)と書かれたチェックが送られてきた。

そして彼は私に、そのチェックを私の口座に入れて、その金額がすぐに振り込まれるのでATMで確認して、その金額を口座から引き出して、そのお金をマネーグラム(海外送金などを送金してくれるお店)でロンドンに送金して欲しいと言うのだ。

千夏に相談すると、「なにそれ?怪しいよ、やめなよ、詐欺だよ」と言われたものの、私は、彼の命令に洗脳されていて、自分の銀行の口座にチェックを入れてしまっていた。

ただ、20パーセントぐらいの気持ちは、なにかが変だし怪しいとは思っていた。

送金する前に、マネーグラム自体を知らなかった私は、近くのマネーグラムに行って、そこのおじさんに、今までの経緯を説明すると。「そのお金、誰に送るの?大丈夫?君のお金?」と聞き返され。「ロンドンのこの場所です。」と言うと、「この地域への送金は危険ゾーン(テロ組織など)に認定されているから、一度確認した方がいいよ。」と言われ。 

はたと気がついた。これ詐欺か、あやうくテロ組織に献金する所だった。マネーグラムのインド人のおじさんありがとう!!!感謝!!!

確かに、私が「あなたは軍人として、テロ組織についてどう考えてるの?」と質問した時、彼は「基本的にそういう政治的発言は控えている」と答えた事も思い出して、怖くなってきた。

そういえば、やり口的に、映画『コンプライアンス 服従の心理』に似ているかも、と、ふっと思い出した。顔の見えない声やメッセージからの洗脳と命令と服従。。。の心理。

その間にも彼は、何度も何度も早く期限に間に合わないから、早くロンドンに送金しろと命令調に急かしてくる。

絶対におかしいと思い。U.S. military scam(米軍、詐欺)で調べたら、出てくる、出てくる、たくさんの騙された被害女性達の声。アメリカの恋愛版オレオレ詐欺。

もう一度説明すると、要は、私の口座に彼の偽物のチェック(小切手)を一旦入れさせる、ATMやスマフォで見るとそのチェックに書かれている金額が振り込まれている様に見える、(ただ、その時点でそのお金が入る事が確定はしていないのに、私の残高とチェックの金額の仮の合計金額が表示される、)。そして彼は私の口座からそのチェックに書かれていた金額のお金を引き出す様に指示して、その金額がロンドンに送金されたら、その偽物のチェックを無効にし、その金額は振り込まれず。結局の所、私の口座に入っていた私のお金を引き出し、送金させるという手口だ。

それでも彼は送金したのか?送金したのか?と何度も執拗に訊ねてくるので。

これはまだ私のお金で、あなたのチェックは偽物かもしれないので送りません、あなたは詐欺だよね?と言うと。

チェックは本物で、俺のお金が振り込まれたんだから、送らないなら訴えると言ってきた。 けど。

グーグルマップで、チェックが送られてきた住所や、あなたの叔父さんの住所を調べたけど、その住所には何もなくて全て嘘ですから信じません。と返すと。

弁護士に電話をかけさせると言って、電話がすぐにかかってきた。

電話を取らずに、

私も弁護士を立てますので、そちらと会話してください、とメールをすると。

また電話が鳴ったので出ると、

いかにも頭の悪そうな偽物弁護士らしい男が話し始めたので。

「では、私も弁護士を連れて行きますので、実際に会いましょう。あなたのオフィスはどこですか?」と言うと

たじたじして、その男は「今、打ち合わせの最中だから、こちらから又、連絡する、」と言い残し電話を切った。

その後、電話がかかって来る事は無く、私と詐欺師との闘いはやっと終わった。

次の日、銀行に言って、「私、偽物のチェックを口座に振り込んでしまったんですが、どうしたらいいですか?」と聞くと「放っておくしか無いです。」と言われ。しばらくすると、やはりそのチェックは偽物で、そこに書かれていた金額は私の口座には振り込まれなかった。

そうやって、私は結局、約1ヶ月半の間、どこの誰とずっと話していたのかもわからず。

本人だと思って信じていた写真の中の人物も彼の仕事も年齢もなにもかもが嘘で。

愛情も時間も、もう少しでお金も、取られるロマンス詐欺にあった。


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