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ライトノベルというものが世に生まれ落ちてたぶん、おそらく、30年近く経った。 「字マンガ」「文学ではない」「貧相な読書」などと一部から言いがかりをつけられ難色を示されながらも、その歴史はスレイヤーズにブギーポップやハルヒ、SAO、Reゼロなど数多の名作で彩られた華やかで豊かなものであることに間違いはない。 だが、ラノベの歴史はそれだけでは語れない。 SFやミステリといったジャンルとの汽水域でのせめぎ合い、既存文壇の権力構造から切り離されているがゆえの前衛性、何が売れる
気がつくと年の瀬です。 皆様いかがお過ごしでしょうか。 とは言ってももう一日しかないので急いでベスト5(ヘンな本5選ともいう)を作る! 今年もあったぞヘンな本が! ヘンな本しか読んでない気がするけど! 今年はPV数を稼ぎたいという姑息な意図のために個別感想があるものについてはリンクを貼っておきます。 一応順位はつけない方針なので順番に意図はありません。 というわけでしばしお付き合いくださいませ。 これを読まずして今年のロボットラノベは語るなかれ 海外のオタクがダーリン・イ
仮面ライダーミステリこと宇野常寛『チームオルタナティブの冒険』を読んでしまった。 これが仮面ライダー小説であることはおそらくネタバレになるのだろうが、この小説が好きな人は「仮面ライダーだよ」と言わないと絶対に読んでくれないだろうと思う。 なので、声高にして断言しよう。 この本は、仮面ライダーミステリである。 地方都市で、青春に屈折したものを抱きながら親友の藤川らとともに自作のボードゲームをやったり生徒会を出し抜いたりしている高校生の森本は、密かに思い焦がれてい
ライト文芸を中心に大ブームとなっている後宮もの中華ファンタジー。 後宮ものの中心と言えばやはり皇帝との恋愛ですが、恋愛劇はちょっと苦手……という読者もいることでしょう。 中華後宮や恋愛ファンタジーに苦手意識のある方にこそ読んでもらいたいライト文芸が、『後宮の百花輪』です。 最初に言っておくと、これは恋愛ものではなく、『異修羅』や『嘘喰い』に近いバトルものです。 嘘だろ!?と思う人はこれからあらすじを紹介するので読んでください。 兄嫁に虐げられる毎日を
みなさんはかわいい女の子と、東大模試の数学の点数を競いたいと思ったことはありますか? かわいいラノベヒロインは好きでも、数学に対して良い記憶がない人もそれなりにいるのではないでしょうか。 ……今回紹介するのは、数学が嫌な人にも読んでもらいたい、フライ先生が描いたかわいいヒロイン達と東大数学バトルをするラノベ『君と紡ぐソネット』です。 数学バトル小説というとやはり超有名な『青の数学』を思い出すマニアな方もいらっしゃるとは思いますが、この作品で取り扱われるのは受験数学、
まず最初に言っておくと、この本を面白いと思う人は『ダーリン・イン・ザ・フランキス』よりも、万難を排して『クロスアンジュ』と『真ゲッターロボ』を絶対に観た方がいいです。 『鋼鉄紅女』は男女ペアが乗るロボットものという設定はありますが、作者はダリフラに対して批判的であり、テーマ性という面では『クロスアンジュ』とチェンゲを観た方がより作品を理解できるだろうと思います。 まあそんなことを抜きにしても、『鋼鉄紅女』は非常に面白いラノベなので読んだ方がいいです。 デュエルマスタ
最近、ライト文芸路線に力を入れているガガガ文庫。 その最新作である石川博品の『冬にそむく』を読みました。 石川博品といえば、ライトノベル作家やマニアの間で絶大なカルト的人気を誇り、ライトノベル出身の直木賞作家である桜庭一樹からも作品が絶賛されたライターズライターの筆頭的存在です。 ガガガ文庫からは『先生と、そのお布団』以来となる作品となります。 『冬にそむく』は氷河期が訪れた世界、神奈川県において恋愛する二人の高校生を描いたライト文芸です。 こう言
みなさんこんにちは。 昨年衝撃的なデビューを果たし、「これはラノベとして出すべきではなかったのか」と論争を呼んだ四季大雅の2作目となる電撃金賞受賞作『ミリは猫の瞳に住んでいる』が刊行されたので、読みました。 デビュー作の『わたしはあなたの涙になりたい』が極めてライト文芸的作風(とそういったものへの毒)だったため、電撃受賞作である本作もMW文庫に割り振られることが予想されていましたが、実際の割り振りは電撃文庫でした。(電撃大賞は受賞後、電撃文庫かMW文庫かに割り振られる
今年はラグビーワールドカップが開催される年なので、それにちなんでラグビーラノベを紹介しようと思います。 『君と一緒にごはんが食べたい』です。 ラグビー部の主将(ゴリラと形容されるほど体型がガチムチである)が、高校一と持て囃される美貌とピアノの腕前を持つヒロインの手作りする料理を食べながら親睦を深めていく青春恋愛ものです。 タイトルの通り、おいしい料理をたくさん描写した飯テロ小説かと思いきや、 メシマズ小説です。 はい、ヒロインが唯一苦手とするもの、それは料理だっ
食い入るように読んでしまった、というのが正直な感想だ。 限界研の誌舞澤沙衣さんが絶賛していたのを見て気になっていた本だったが、なかなか手に入れることができず、先日ようやく入手して、一気に読んだ。 本書は「みるならなるみ」と「シラナイカナコ」の2つの短編が収録されている。このうち「シラナイカナコ」は2021年のノベル大賞を受賞している。 この2編は世界観や登場人物を共有しているが、二作読むとなにか衝撃の事実が出てくるようなものではないのでどちらから先に読んでもいいと思う
まずはじめに書いておくと、これは鬼滅の刃をパクった作品ではありません。 本作は2011年執筆のなろう小説を書籍化したものなので、鬼滅より先に世に出された作品であり、鬼滅を盗作したという事実は一切ありません。 なに?そのわりにタイトルロゴがなんとなく鬼滅っぽい?それは2019年にこれを出した出版社が悪いんだよ! というわけで、『鬼人幻燈抄』を読みました。 これを読もうと思ったのは、twitterでとあるライト文芸作家のW先生から「鬼滅のパクりでは?」と流れてきて興味が湧
ガガガ文庫から7月21日に発売されたライトノベル『ミモザの告白』を読みました。 この作品は保守的価値観が支配する地方都市に住むセクシャルマイノリティの少女の青春を描いたもので、(作者のこれまでの作品もそうですが)ライト文芸的な色合いが強いです。 まず前提にしてもらいたいのが、「作者はセクシャルマイノリティに対する悪意はなく、きちんと勉強してこの作品を書いている」というところです。 セクシャルマイノリティに対する差別や偏見を肯定的に書いているわけではないし、実際ジェンダー
「国民に夢と希望を与える」大義名分で強行されたスポーツの祭典に、リアルタイムで踏みにじられている人々が居ることに怒りを禁じえない。 ここ最近はナショナリズムと金と権力に汚染されたその祭典が本当に嫌いすぎるあまりに、関与するもの全員不幸な目にあって競技場が爆発四散してくれないかなとまで思っていたが、現状は怒るべきところと別に怒らなくていいところを切り分けることで感情を平静にしている。 さて、そんな祭典には箸にも棒にもかからなさそうなスポーツを描いた一冊を、秘蔵の本棚から持っ
HiGH&LOW以降のラノベこと『純白と黄金』を読んだ。 大々的な宣伝に比しての面白くなさでラノベ界隈からは大不評、というか炎上しているような気がする本作だが、個人的にはまあ、ありじゃないかというポジションです。 「本人の預り知らないところで肥大化し手に負えなくなった伝説といかにして向き合うか」というテーマは奇しくも『スターウォーズ 最後のジェダイ』と通じる部分があるし、敵ヤンキーの同性同士の巨大感情とか良かったと思う。 あとヒロインかわいかったですね。 でもわざわ