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ヒロイン達と東大数学バトルをするラノベ『君と紡ぐソネット』を読んだ

 みなさんはかわいい女の子と、東大模試の数学の点数を競いたいと思ったことはありますか?
 かわいいラノベヒロインは好きでも、数学に対して良い記憶がない人もそれなりにいるのではないでしょうか。

 ……今回紹介するのは、数学が嫌な人にも読んでもらいたい、フライ先生が描いたかわいいヒロイン達と東大数学バトルをするラノベ『君と紡ぐソネット』です。
 数学バトル小説というとやはり超有名な『青の数学』を思い出すマニアな方もいらっしゃるとは思いますが、この作品で取り扱われるのは受験数学、その中でも東大の模試や入試の点数を競う東大数学バトルです。

 時代は理系学部受験の趨勢が数学の点数で決まる大数学時代。
 数学が全くダメダメで赤点ばかり取っているのに何故か理系を選んでしまった数馬は、神頼みに行った神社で祀られている数学の神様の依代にされ、神様に数学を教えてもらうことに。教えるのが超上手い神様の手腕で、みるみる成績を伸ばしていく数馬。いつしか彼の前には、「数学の女王」と呼ばれる成績優秀な有理や彼女を(数学的に)超える謎の美少女転校生圏が現れ、東大を志望する彼女達との東大数学の点数を競う東大数学バトルの扉が開かれる……。

 こういうテーマで書くと「どうせ数学はフレーバーなんでしょう?」と思われがちですが、この作品の場合ガチなので問題がちゃんと用意されています。
 いちいち答えが用意されていない上大量の数学・受験数学用語(東大数学の大問を完答した数を「〇完」と呼ぶなど)が飛び交いだすので実際に読み込むと悶絶するのですが、問題と戦闘するときの思考や解法が丁寧に書き込まれており、数学のことが何一つわからなくても本当に試験を受けて問題を解いているような臨場感が出ています。
 やってることが東大数学バトルなのですごいイロモノに見えるんですが、要は『ちはやふる』や『ブルーロック』を全部数学に置換したものなのでかなり飲み込みやすいです。

 とはいってもこれはラノベであるため、「数学の成績が上がったらヒロインとデートする」イベントが頻繁に発生(特に序盤)し、そういう下心のために数学の点数を上げていく展開が繰り広げられるのですが、物語が中盤に差し掛かってくるとスイッチが入ります。

 明かされる「神様」の真相、突如として本性を現すクレイジーサイコ激重百合女、そして最終決戦となる東大入試。
 
 数学が全く分からなかった数馬の成長、何故か理系を選んだ理由、数学を楽しむために・大切なものたちを幸せにするために挑む最後の東大数学バトル。

 怒涛の勢いで最終決戦になだれこむテンションの高さに刮目してほしい。

 大数学時代って設定なんなんだよ現実だと数学科は就職に弱すぎて不人気コースじゃんとか、喪ってしまった女を取り戻さんとたったふたりの世界を突き進もうとするクレイジーサイコ激重百合女のインパクトが強すぎてもう一人のヒロインが途中から大逆転敗北を喫したり、ラノベ的お約束が途中から全部消えて数学バトル描写に全振りしだしたりと新人らしいヤンチャな部分も多々あれど、読み終わった今ならむしろ愛しいね……となる。

 ……実はこれが刺さるのは数学を愛して好きでたまらない人間ではなく、数学が嫌いで苦しくて仕方ない人間のほうなのではないかと思っています。
 数学知識のあけっぴろげに終わらないストーリーの熱量もさることながら、作中出てくるわけのわからない東大受験問題に悶絶し「そもそもお前は絶対主人公にはなれないし、お前の周りには数学が好きな女の子なんていない」という事実を突き付けられて胸をかきむしりながら読むと非常にのめり込めるのではなかろうか。

 というわけで、数学が嫌な人ほど読んでほしい東大数学バトルラノベ『君と紡ぐソネット』でした。

 
 

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