「鬼滅のパクリ」と云われているラノベを読んだら意外と面白くてびっくりした
まずはじめに書いておくと、これは鬼滅の刃をパクった作品ではありません。
本作は2011年執筆のなろう小説を書籍化したものなので、鬼滅より先に世に出された作品であり、鬼滅を盗作したという事実は一切ありません。
なに?そのわりにタイトルロゴがなんとなく鬼滅っぽい?それは2019年にこれを出した出版社が悪いんだよ!
というわけで、『鬼人幻燈抄』を読みました。
これを読もうと思ったのは、twitterでとあるライト文芸作家のW先生から「鬼滅のパクりでは?」と流れてきて興味が湧き、本当にパクっているかどうか確かめてみるかという邪な動機でございます。
舞台は江戸時代のタタラ村で、幼少期に父親から虐待を受けていた妹を連れて村に逃げてきた主人公が村の鬼退治係になって鬼と戦い、村を守る巫女となった幼馴染と淡い恋模様を描くというストーリーです。
ところが妹は鬼の血を引いているためにいつまでも年を取らず肉体が幼女のままになってしまっていますが、それでも健気に楽しく生きています。
歴史ファンタジーでござい、みたいな面をしているくせに本の半分くらいがラブコメじみた日常描写に費やされているため多少面喰ってしまいましたが、巫女の幼馴染が竿役にNTRされたところから物語は急変します。
本心では結ばれたいと思っているのにそれぞれの立場を重んじて身を引いてしまう主人公とヒロイン……その背後で鬼の王を誕生させようと画策する鬼達……レイプしてでもヒロインとえっちしたい竿役……突然出てくる黒ギャル……様々な人物の情念が歪みとなり、ほんの少しのズレでそれは一気に決壊、物語は全て破滅に向かって突き進んでいきます。
そう、ヒロインと無理やりHしようとしている竿役の姿を見てしまい怒り狂った妹は鬼の本性を現し、「お兄ちゃんを好きでいながら他の男に手を出すアバズレ」とヒロインを罵り惨殺してしまうのです。
危機を知った主人公が駆け付けたときには既に村は壊滅、大切な人と場所を奪われ憎悪に身を焦がした主人公は鬼の力を手にして、妹を殺すべく旅に出ます。
ここで1巻は終わりとなりますが、まさかこれほどまでに急転直下なストーリーになるとは誰が予想できただろうか。
まあ平和な描写を積み重ね、それを一気に突き崩す手法は珍しくありませんが、なんかこう……ジャンプ履修済みだと謎の面白さが滲み出てくるんですよね。
そもそも何も知らない状態で読んだら「鬼滅のパクリ」と云われても正直しょうがないかなと思います。(繰り返しますが本作の方が発表は先です)
それは「主人公の妹が鬼になる」というところだけでなく、原作終盤の展開を知っているとかなりオーバーラップしてくる点があり、「偶然にしては鬼滅のオチまで知ったかのような話になっててすごいな……」と思ってしまいました。
本作の内容を簡単に言い表すと「竿役にヒロインをNTRされたのを見た禰豆子がマキマさん化して村を焼く」というものになりましょうか。
……本当にマキマさん化してるんだよ!
悲しいシーンなんだけど本当に笑っちゃったよ!
あと突然出てくる黒ギャルは一体なんなの……。
出版社は「泣ける歴史ファンタジー」と宣伝していますが、実際はかなり変な小説だと感じました。
シリーズものであり、今後江戸から幕末、明治へと話が進んでいくようなのでゆっくり読んでいきたいですね。
文庫版は最初の1巻しか出ていませんが……。
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