見出し画像

医院長先生はホスト

2023年振り返ると「聴かせて屋」の活動は3月の投稿以来ご無沙汰していることに気づいた12月31日。このままではいけないと思い立ち、今年の紅白ではブラピもポケビも25年ぶりに復活したこともあり、私も過去に書いたエッ
セイを復活させようと思い投稿いたします。

本年も
聴かせていただいた方、読んでいただいた方、ありがとうございました!
来年もどうぞよろしくお願いいたします。

2023.12.31


「院長先生はホスト」


電車の移動中もスマホ
信号の待ち時間でスマホ
待ち合わせの数分の時間でさえもスマホ
私たちの隙間時間はスマホに支配されている。

そして、
仕事ではメール、オンライン会議、資料作成で
画面とにらめっこする毎日。

そんな私たちは
肩こり、眼精疲労、頭痛、腰痛と切っても切り離せないご縁が繋がってしまった。便利になる世の中に順応した結果、体のいろんなところが悲鳴をあげている。ヒトが適応するまでの、成長痛のようなものだろうか。

いや、違う。

この苦痛から逃げ出すために、今後AIがすべの業務を引き受けてくれると願いたい。そして私たちは、自然の中で悠々と寝転がりながら本でも読んでいたいところだ。



私も仕事柄パソコンをよく使う。
そのため、体の節々からの痛みの声は鳴り止まない。
ストレスも感じやすく胃は弱い方だ。
日々ストレッチや食べ物に気をつけてはいるが、蓄積される疲労はつもり続けるばかり。“止まない雨はない”と人は言うけれど。ストレスという雨はいつまでも、いつまでも降り続ける。
ストレスの雨が止む頃は、頭の上に輪っかをつけてお花畑を歩いている頃なのではないだろうか……


ある時期、人間関係のもつれや休日出勤などが重なり、ストレス過多で身体も精神も疲弊していた時があった。

周りは敵だらけ、誰も味方なんていない……
味方だと思っていた人でさえ裏切られる
信じられるのは自分しかない。

疲労感と、悲壮感。
時折訪れる虚無感。
足ない時間、不足している信頼。
浴びせられる自己中心的な愚痴の嵐。

色々なストレスと疲労で疲れ果てていた。
このままではいけないと思い立ち、まずは身体の調子を整えようと駅前の整骨院に駆け込んだ。

「こんちは! 久しぶりだね!」
整骨院の医院長先生は明るい声で迎えてくれた。

「最近忙しくて……」
マッサージを受けながら、ポツリポツリと最近の出来事を話していく。

医院長先生はすごい聞き上手な先生で、何事もポジティブに捉えてくれる。私の話もふんふんと聞いてくれ、大変だねとねぎらってくれた。(と思う)

今となっては具体的になんと言われたか覚えていないけど、
気持ちだけは救われたのを覚えている。

そして、その時この医院長先生の存在がすごく温かいものに感じた。
『やっと味方を見つけた!
私を受け入れてくれる人はこの人しかいない!』 と。

身も心も軽くなった私は帰るなり、
「味方がいたよ!」ということを早速ルームシェアしていた友達に伝えた。
だが、友達は冷静にこう返して来た。

「それは、お金もらっているからだよ、ホストと一緒じゃん」

そっけない一言。
こんなにも沈んだ私の心を暖かく包んでくれたのに……
ホストなんて、あんなチャラ男と一緒にしないで……

いや、でも、ちょっと待てよ。
よくよく考えてみると、ホストみたいなものかも?

また整骨院に来てもらうために、お客様に不快な思いをさせるわけがないし、回数多く通ってもらいお金を落としてもらわないといけない。駅前には他にもお店があるのでライバル店に行かれては困る。

整骨院としてマッサージプラス、ストレス軽減のために話を聞いてくれただけの行為だけど、医院長の思いとしては他のお店に行かれては困るという考えも少なからずあるであろう。

そしてたまたま、自分が疲弊してところに、付け込んだ優しさ。
勝手に味方だと思ってしまったのかもしれない。
ホストにハマる女性の気持ちがこの瞬間少し理解できた。

自分を受け入れてくれる人。
人はそんな人にお金をつぎ込んで、シャンパンタワーを作ってしまうのだ。
ホストをNo.1にさせる代わりに、自分の存在を肯定してもらっているのではないだろうか?

では、キャバクラはどうだろう? メイド喫茶も同じだろうか?
今まであまりそういうところに興味はなかったが
人の心を癒してくれる場所という目で見ると、視点が変わってくる。

奥さんに愛想つかされた会社役員達がキャバクラに通うのは
自分を受け入れてもらいに行っているのだろうか?

メイド喫茶も「おかえりなさいませ、ご主人様」と迎えてくれ、誰よりも自分を必要としてくれる。
考えてみると、どんな男性も最高の至福の時間を過ごせる場所だろう。
想像するだけで満たされる感がわかる。

お金で人の心は買えないと思っていたが、
不覚にもお金で心の癒しを購入していた。
それほど疲弊していたのかもしれないし、人とはそういう生き物なのだろう。
本心ではないと解っていながらも、実際優しい言葉をかけられると人は弱いのである。

一度自分を受け入れられると、人はその人のことを信頼する。
引越しをして少し遠くなってしまったけど
私は未だにその整骨院に通っている。

私はこの医院長を街のNo.1整骨院に成し遂げるほど
お金をつぎ込んでいくのだろうか?
いや、そこまでははまっていない。まだ大丈夫。

でもしばらく通い続けそうだ。



2019年に書いた文章をブラッシュアップしました。
元記事はこちら↓
https://tenro-in.com/mediagp/91881/


この記事が参加している募集

最近の学び

この経験に学べ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?