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「出会い」も「別れ」も全て物語の1ページに

いろんな肩書きを持つ人が最近増えている。
この前も聞き慣れない肩書きの方に出会った、その名も「団欒(だんらん)コーディネーター」。

その方が主催する日本酒イベントがあると友達から教えてもらい、参加すると。美味しいお酒と共にふんわり現れたのが、団欒コーディネーター 森田聖也さんだった。


団欒コーディネーターとは一体何をするのだろうか。森田さんの団欒に込められた想いなどを聴かせていただきました。

▼プロフィール
森田 聖也(もりた せいや)/ 団欒コーディネーター
おにぎりの宴主宰。食とものづくりを通してゆるやかなコミュニティをつくることを得意としている。 日本酒と和食が大好物。



記憶に残る繋がりをつくりたい

おにぎりの宴、ピザ釜づくり、代々木公園で缶けり、日本酒を楽しむ会など、さまざまなイベントを開催している森田さん。イベントをやり始めたきっかけは、友人が行っていたクリエイター交流会のお手伝いから。月1回イベントを開催し、参加者が刺激ある交流ができるよう試行錯誤していった。
 
「表面的な関わりだけで、終わりにしたくないんですよね。」

他のイベントに参加して感じてた、物足りなさ。自分達がつくるイベントでは感じさせないよう、参加者同士が深く関わる仕掛けを組み込んでいくようになった。そうして、クリエイター交流会に関わり始めて1年たった頃、主催メンバーそれぞれに、やりたいことが出てきたため解散することに。森田さんの中にも、やりたいイベント像が芽生えていた。

そして、2018年の冬「おにぎりの宴」を開催した。

「おにぎりの宴」は、参加者が各々のおにぎりを握りながら、団欒を楽しむ会。(詳しくはこちら) 元々大学のころTable For Twoの“おにぎりアクション”に参加してから、卒業後も関わり続けたいと思っていた。

「おにぎりの宴」では参加者がそれぞれおにぎりを握り、1つのテーブルを囲んで食べる。一人ひとりの人生が違うように、おにぎりにもそれぞれの個性やルーツが握られていった。おにぎりを通してお互いの人となりを知り合え、お腹も心も満たされる、なんともおいしいイベントだ。 


自分も素であること

イベントを開催することは、手間がかかって面倒くさいもの。それでも森田さんが、人を集めてイベントを行いたいと思うのはどうしてだろう。

「シンプルに思うのは、参加した人たちが楽しそうにしていたら、やった意義はあると思います。」

真っ直ぐな思いに続いて、森田さんらしい考えも教えてくれた。

「1から10まで全部予想できるイベントは、主催者側としては楽しくない。ある程度のレールは用意するけど、何が起こるか分からない余白を残しておきたいんです。そうすると、自分もみんなと一緒の空気感でその場を楽しめる。素でいられることは、自分が目指す団欒の場では大事なコトのような気がしています。」

何か企画すると、“イベント”と名称づけてしまうが、森田さんの場合、全てが“団欒”に置き換わっているようだ。


日常の延長線上だけどちょっと特別な時間

森田さんの“団欒”の起源は、小学生のころの体験からつくられている。近所の仲が良い家族2、3組が定期的に家に集まり、一緒にご飯を食べていた。

「その体験は本当に楽しかった。料理がいっぱい並んでいて、ご飯食べた後に子供たちは2階でゲームして、親達は下でしゃべっていて、めっちゃワチャワチャしてたけど、とにかく楽しかった。」

いつもの家族だけで食べる食卓とは違う、大皿料理が並ぶテーブル。たくさんの料理をみんなで分け合いながら食べ、親も自分も自然体で過ごせる幸せな時間がそこにはあった。

「空間としては日常なんだけど、中身はちょっとしたお祝い事みたいな感じ。ハレではないけどケでもない、ちょうどいいところで、日常の延長線上だけど、特別な感じが心地いい感覚があります。」

大人になって環境が変わると、同じことを再現するのは難しい。おにぎりの宴を皮切りに、大人になった森田さんの団欒づくりは広がっていった。


1つ知ると、芋ずる式に知りたくなる

団欒づくりで大事にしていることは「1つのテーブルを囲んで食事をすること」。そして、そのテーブルに並ぶ「食」にも森田さんの興味は注がれている。

「日本酒とか和食とか、日本のどこかで採れているものや、ゆかりがあるものによく惹かれます。」

最近は特に日本酒に興味があり、日本酒バーでも働いているほどだ。

「日本酒の文化とか酒造りのストーリーを知っていくうちに、どんどん好きになっていきました。日本のいろんな地域や蔵の歴史とか、その場所でしかできないことをお酒に詰めている酒造さんが多い。そういう魅力に触れていくのが楽しい。それぞれに職人のプライドがあったり、蔵として守っているものがある。そこも好き。」

話し出すと止まらない……。日本酒の知識もだいぶと溜まってきているそうだが、まだまだ知らないことが多いらしい。

 「知ったものはなんでも、掘り下げていきたくなるタイプなんです。人や物が関わっていると、興味を持つポイントが増えて、飽きがこない。常に色んなことに興味持ちっぱなしです。(笑)」
 
知ってしまったからには、掘り下げないともったいないと思う精神の持ち主ともいう。森田さんの知的好奇心は留まることを知らない。


おかずとして、ただそこにいる

いろんなことに興味を持って掘り下げていきたくなる森田さんだが、決してそれをひけらかすことはない。

「イベントでは自分の話も知識も全部、おかずとしてそこにある感じです。」

自分の興味があることでイベントを企むが、最終的には来てくれた人達が笑っていてくれることや、新しいつながりが生まれることの方に重きを置いている。

「とりもち係ですね。」

にやりと笑う。森田さんはお声がけする人の組み合わせに、一番神経を使っていると教えてくれた。

「この空間に、この人いたら面白そうだなって考えて、お声がけしています。誘う時が一番エネルギーを使いますね。」

森田さんが素で参加しているからこそ、感じとれる人の波長。おかずとして、ただそこにいるだけではなかった。


人生丸ごと小説になるから、何が起きても楽しめる

どんな人やモノ、コトでも興味を持って楽しめてしまう森田さん。そんな彼をつくり出したのは、小学生のころに読んだ、ファンタジー小説が影響していた。
 
「小さい頃に夢みていた小説の世界を、大人になってリアルに体験できることを知ったら、断然リアルの方が楽しいって気づきました。そこから全てがファンタジーの1ページを繰り広げている感覚。誰かと話すときもその内容がコンテンツになるというか。何かに記すわけじゃないんですけど自分の記憶として残り、物語のページをどんどん増やしているようで、楽しい。」
 
ファンタジー系の小説はいろんな種族に出会い、仲間になり、一緒に敵を倒し、時には別れ、また出会い、ゴールを目指す。フィールドは違えど私達の人生も、確かに1つの物語といえる。ドラゴンもいないし、魔法は使えないけど、それに変わるものはいくらでもある。

「人生最後振り返った時に、1つの物語になってたらいいなっていう感覚です。」


尽きない探究心と、団欒の心地よい思い出、そしてファンタジー小説を繰り広げるように出会うリアルな人との出会いや出来事。誰かと何かを比べることなく、ただ自分の想いに従い形にしていく。

「形はどうあれ団欒の空間を作ることは、たぶん死ぬまでやるんじゃないかな。特に終わりはないんですよね。」

森田さんがつくり出す団欒の時間が、きっと誰かにとっての忘れられない時間になり、また別の場所で団欒が開かれる。そんな風に、人と人との温かい関係が広がっていくのかもしれない。


今後も色々やりたい企画があると、楽しそうに話す森田さん。小説になったらいったい何部作になるのだろうか、まだまだ森田の大冒険は続いていく……。

[撮影場所]池尻大橋


森田 聖也 / 団欒コーディネーター
twitter @wami_gibson
instagram @morita_no_nihonshu


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