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レーダー照射事件における「遭難船」の対応と日韓海難救助協定

2018年12月の韓国海軍艦艇によるレーダー照射事件は未解決のままですが、最近韓国側から再度「レーダー照射」は無かった、と2022年11月に再度回答してきました。


経緯としては、韓国政府は当初は「哨戒機を追跡する目的ではない」「北朝鮮の遭難船のためにレーダーを稼働したのを日本側が誤解した」「火器管制レーダーではなく、捜索用レーダーを使っていたところ、誤って哨戒機に当ててしまった」などとレーダー照射したことを当初は認めていました。

しかし、その後の12月24日以降から一転して哨戒機へのレーダー照射自体が無かったと主張に変化しています。日本側は、日韓双方が生データをアメリカに提供することで第三者の判断と提案しましたが、韓国側は拒否しました。

韓国側の毎度おなじみになっているその場しのぎのウソには呆れますが、最近の『朝日新聞』の牧野愛博記者のコラムが興味深いところです。「ウソツキをとにかく弁護する」作文技術の見本で勉強になります。

牧野記者の「ここで昔の主張をひっくり返したら、もとの「ウソつき」に戻ってしまう。それは韓国の軍人として耐えられないことなのだろう。」という見立ては的外れだと思います。そもそもウソを恥とする韓国文化はありません。

私からすると、韓国メディアも「日本が威嚇の謝罪を未だにしてない」など認識の隔たりがあまりに大きく、この世論から事実関係を明らかにすると、収集がつかなくなることと、さらに事実関係を明確にするとおそらく文在寅政権が決定的に不利になるような情報が入っていて今後の政権交代次第では、事実関係を調査公開した韓国国防部が政治的報復を受ける可能性を恐れているのではないか、と見ています。しかも、それがレーダー照射の前の遭難したとされる船の件と関係もしているのではないでしょうか。

なお、この件では韓国側が威嚇された、として日本を国際的に非難した経緯もあります。この点も最近のニュースでは触れていないがこれも重大です。

なお、レーダー照射事件そのものについては、防衛省でも詳細が取り上げられており、私がわざわざ書き連ねる必要もないところです。(防衛省ホームページ参照)

https://www.mod.go.jp/j/approach/defense/radar/index.html

私が特に問題にしたいのはレーダー照射が起こる前段階の「北朝鮮の遭難船」についてです。韓国側に問いただすべきことを日本の外務省も問いただしているのかどうか、非常に疑問に感じます。

日韓では「日本国政府と大韓民国政府との間の海上における捜索及び救助並びに船舶の緊急避難に関する協定」(日韓海難救助協定)が締結されています。

この協定は、自国周辺水域における海難発生の情報を入手した場合には、捜索又は救助のための緊急措置を取ること(第1条)や、そのために必要な場合には関連情報の提供等できる限り相互に協力すること(第2条)を定めています(詳細条文上記参照)。

ここで、仮に韓国の主張の通り「遭難」であったなら、日本EEZ(排他的経済水域)内に韓国の艦艇がわざわざ行かなくても、同協定に基づき、日本に救助を要請すれば良かったはずです。日本側へ救助要請しなかった事情や理由がいまだ不明です。

仮にそれでも救助対象が韓国の漁船というならまだ理解はできます。しかし、対象は北朝鮮の漁船なのです。韓国が積極的に北朝鮮の漁船を救助する理由は一体何だったのでしょうか。

なお、そもそも遭難とも見られないとの指摘も数多くあります。映像を見る限り安定航行しているし、航海のセオリーとしても、どう考えても不自然な点が多くあります。

一方で、「北朝鮮の遭難(とされる)船」からの救難信号は自衛隊も海上保安庁も受信、感知していません。しかも日本のEEZ内からの救難信号は日本当局は受信感知できず、なぜかより離れた韓国側が遭難を把握しています。

不思議です。解せません。

しかも、日本を敵に回してまで(レーダー照射してまで)北朝鮮の艦艇をわざわざ、韓国がこの遭難(とされる船)を守る理由が見つかりません。レーダー照射をなかったことにする動機との関係も謎が深まるばかりです。

韓国側の説明への疑問点を挙げれば次から次へ出てきます。

なぜ救難活動中にもかかわらず日本のP1からの国際緊急周波数に『広開土大王』は応答しなかったのでしょうか。ノイズがひどいと言ってもコールを受けているのは明らかで、問い返せば済む話です。

もし本当に要救助者からの通報だったらどうするのでしょうか。それもしていない。応答しなかった理由も明確にしてもらう必要もあります。

そもそも『広開土大王』は、接近してきたのが日本のP1であることは、目視以前から搭載の捜索レーダーと連動する味方識別装置により認識できる能力があるはずです。必要な事項は、その時点で要請できるはずです。これもしていません。しなかった理由も明確にしていただく必要があります。

日本の海上保安庁の発表では2018年に日本沿岸に漂着した北朝鮮の漁船は200隻を超えていました。わざわざその内の1隻だけのために韓国海軍と海洋警察庁の艦船を出動させたということ自体が、どう考えても不自然なのです。

レーダー照射の件も、そもそもこの遭難船の話に触れたくない事情が動機なのか、考えてしまいます。実際、この漁船の乗員を韓国側が保護した後に北朝鮮に即時送還もしています。この点も謎を深め、さらに問題は深刻です。

北朝鮮からの密使だったとか、工作船だったとか、北朝鮮から青瓦台(当時大統領府)へ直接依頼があった等。あくまでレーダー照射を含めて否定している背景が解せないだけに、まともな回答がないために、簡単には陰謀論と片付けられない状況です。不信感は増すばかりです。

防衛省は管轄であるレーダー照射の部分を問題にしているが、この前段階の「北朝鮮の遭難船」については防衛省の管轄の問題からか言及を避けています。日本の外務省がこの点の協議を行っているのかが疑問です。

ひょっとすると、日韓海難救助協定そのものの破棄の宣言なのかもしれません。海洋船舶関係者・漁業従事者の生命にかかわることだから私には気がかりです。

例えば、長崎県五島列島沖から済州島にかけての海域で日本の漁船が難破したとしましょう。日本の漁船が遭難した際に先に救難信号で韓国海洋警察が先に見つけたとしても、日韓救助協定が無きものとされ、知らん顔。これがありうる、と理解すべきなのでしょうか。

また、先にも指摘している救難信号の検証も必要でしょう。日本の漁船の救難信号が韓国海洋警察には通じないのでしょうか?北朝鮮の遭難船の救難信号は日本が把握できなかったが、韓国海洋警察とは電波技術上の問題でもあるのでしょうか?

あり得ない、と笑う人もいるかもしれません。しかし、レーダー照射もあり得ない話が起こったし、その説明も謎だらけだ。説明してもらいたいところです。

韓国側が日常的にウソをついていて信用できません。

韓国側の回答が不誠実なまま「大人の対応」は、百害あって一利ないと断言します。絶対にウヤムヤにはできないし、断じて闇に葬ってはなりません。

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