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我が家の小さなもふもふ

我が家には昨年、迎え入れた犬がいる。トイプードルで、名前はプリン。

何も予定がなかったGWの昼下がり、「小動物を見て癒やされたい」と思い、ドライブがてら家族で立ち寄ったペットショップにプリンはいた。

わたしがお目当てのハムスターや小鳥を眺めていると、犬猫コーナーにいた娘がやってきた。「あっちに、可愛いわんちゃんがいる!」

行くと、生後4ヶ月過ぎた少し大きめの赤毛のトイプードルがいた。ゲージには「Special Price」の文字。なぜだろうと思い周りを眺めると、店内にいた他のトイプードルはもっと小柄な子ばかりだった。

きっとトイプードルは体が小さな子が人気で、この子は体格が良いから買い手が現れなかったのかな、と思った。今思えば、「Special Price」なんてすごく失礼だし、そもそも生き物を売るって何なんだろうと思うが。

我が家に来たばかりのプリン。もふもふ。

娘と一緒に「かわいいね~」と言いつつ、いつか保護犬を迎え入れたいと考えていたわたしは、ペットショップで犬を迎えることは全く考えていなかった。「じゃあ、帰ろうか」と娘に言うと、娘はその場で泣き出した。

「この子を連れて帰りたい・・・」

これには、わたしも夫も驚いた。今までペットショップの動物たちを見て「かわいい」と言うことはあっても、「この子がいい」なんて泣き出すことはなかったからだ。でも、目の前の命を「じゃあ連れて帰ろうか」なんて簡単に言えるわけがない。

笑顔で尻尾を振る赤毛のもふもふから娘を引き剥がし、気を紛らわせるために他のペットショップに連れて行った。

他のペットショップにもトイプードルの子犬がいた。どの子も間違いなく可愛い。しかし娘は、「やっぱり、さっきのあの子がいい」と言い張る。どうしたものかと困惑しながら、「寝たら忘れるだろう」と、しぶる娘をなだめて帰宅した。

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翌朝、起きてリビングにやってきた娘の第一声は、「あの子のお名前、プリンにするね。茶色い毛がプリンの上のところと同じだから」だった。

「そう言うなら、プリンやなくて『カラメル』やろ」と思いながら、また私たち夫婦は困惑した。娘は寝ても、あの子犬を忘れていない。その日から娘は、「プリンのご飯は、何をあげたらいいのかな?」とか「プリンにこのオモチャをあげたら喜ぶかな」とか、事あるごとにプリンプリン言った。

そしてプリンプリン口撃が丸3日続き、ついに大人が折れた。「そこまで言うなら、考えてみようか」

まずは我が家にプリンを迎え入れられるのか、犬の飼い方や犬種の特徴、生涯かかる費用を調べて検討した。娘はアレルギー持ちだが、検査結果を引っ張り出して見ると、犬アレルギーはなかったからそこはクリアした。次に役割分担を考えながら、毎日本当にお世話できるかどうか、娘も交えて家族全員でさらに3日かけて話し合った。

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「プリンがいなくなってたら、諦めよう」

話し合いを重ねて、プリンを迎え入れることを決めた我が家は、再びペットショップの扉を開いた。奥の犬猫コーナーを見ると、赤毛のもふもふが尻尾を振ってこっちを見ていた。

「プリンーーー!!」と駆け寄る娘。その後、必要用品を買い揃え、自宅の準備ができてから、プリンをお迎えした。

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プリンを迎え入れて、もうすぐ一年。まさか、ペットショップで犬を迎え入れるなんて、保護犬について2年くらい調べていた自分には想定外の出来事だった。でも、人生にはこんな出会いもあるのかも知れない。

お互いわたしに叱られたあとは、いつも慰め合っている。

プリンは活発で、人や犬誰とでも仲良くできる、娘にそっくりの性格だ。最近は年下の子犬にじゃれて来られることも多く、遊び方を教えてあげている。娘に急に抱きつかれても絶対に怒らないし、まだ力加減の分からない子犬に噛まれても怒らない。とにかく優しい犬だ。

近所にはプリンと仲の良いわんちゃんもたくさん増えた。そしてわたしや娘にとっても、プリンがいなければ知り合えなかった地域の知り合いが増えた。

また、胃腸が弱いプリンは、しょっちゅうお腹を壊して病院に行っている。昨年の年末からお腹の調子が優れず色々な検査をしたが、生まれつき胃腸が弱いそうだ。夜中突然お腹を壊すことがあるので、夜中に看病することもあれば、急遽病院に連れて行かなければならないことも多い。

娘は一人っ子だということもあり、今まで大人が娘の都合に合わせて動くばかりだったが、今では遊んでいる途中でも、プリンの病院や散歩の時間になると途中でやめて付いてくるようになった。大きな成長だと思う。

さらに、プリンの誕生日には、自ら「お年玉でオモチャを買ってあげたい」と言って、バナナの犬用ぬいぐるみをプレゼントしていた。

娘があげたバナナで毎日遊んでいるプリン。今のところ、一番気に入っているらしい。

娘にとって、はじめて自分のお金で買ったものが、このオモチャだった。プリンに出会って、娘も「誰か自分以外の存在の都合に合わせる」「自分以外の存在を大切にする」ということもできるようになったと思う。

思いがけず出会った小さなもふもふは、娘をはじめ、私たち家族に日々大切なことを教えてくれている。そして人との新たな繋がりも与えてくれた。これからも家族みんなで、プリンに「毎日楽しいなぁ」と思ってもらえるよう、一緒に過ごしていきたいと思う。プリン、これからもよろしくね。



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