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豊津徳【HozuTalk】02「人生と芸術のライブとアーカイブ」

 人生/芸術/ライブ/アーカイブをそれぞれ単品で考えることって…ない。人生なら誰でもあると思うけど、芸術、ライブ、アーカイブはないし、人生と芸術をライブとアーカイブの視点で考えることなんか当然ない。人生はライブ、芸術はアーカイブ、宗教があって、宗教画があって、それが多くの人の目に触れると文化になり、宗教が抜けてアートに、なった…?
 私たちが思いつかない様な疑問をヨウイチロウさんが用意し、豊津さんにお渡し、豊津さんがアートと経済を軸に応えてくれる。何回聞き直しても話の表面をするする滑って深く潜り込めない。だけどいつか深く潜ることに成功したくなる、超面白いお話です。
見なきゃ絶対分からないメモ
墓→美術館
珍/異化 → 同化/ノリ → アーカイブ → 懐 → 美 → アート/価値
宗教画=神様の取扱説明書【珍・異化】
 →権力構造崩壊
 →宗教画の民衆化【同化=ノリ】
 →アーカイブ【懐】→美術の活用→文化資源のLive
 └→アート【価値】
  →神の不在【sign=作者特定】→時間の概念→人の自立
  →アートの自立
Live(発芽・成長)→(死)Archive(苗床)→Live…

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山本豊津(東京画廊)×ヨウイチロウ(バラエティプロデューサー)のアートを巡る知のライブトーク第二弾!

豊津徳【HozuTalk】(文字起こしの後に著作リンクあり)

01.

ヨウ どうも、バラエティプロデューサーのヨウイチロウと申します。豊津徳【HozuTalk】第二弾ということでございまして、今から開始したいと思います。前回ね、ちょうど1ヶ月前くらいにやったのは東京画廊のオーナーの山本豊津さんと私バラエティプロデュサーがたまたま誕生日が1週間違いだったってことで、まぁうちの親父が亡くなったみたいなこともあったんで「生と死とアートで巡る」というテーマでやりましたが。今回はですね、まさにYouTubeというアーカイブ、動画がアーカイブできるところで「人生と芸術のライブとアーカイブ」というテーマでやれると面白いかなと思っております。ではさっそくお呼びしましょう。山本豊津さんどうぞ!

豊津 はぁーい!はっはっはっはっ、どうも。よろしくお願いします。

ヨウ どうも!おはようございます!夜だけどおはようございます。ありがとうございます、こんなの付き合って頂いて。

豊津 いえいえ、もう、楽しいです。

ヨウ 前回もね、なんか本当に1時間で喋ったんですけど、結構色んな多方面に渡ってお話しして、すごいインスピレーションをいただきました。

豊津 頭の中がぐるぐるしちゃって、自分でも何喋ったか覚えてないんだけど。

ヨウ はい。いやーでもね、豊津さんとお会いするといつもこんな話してるじゃないですか。

豊津 そうですね。

ヨウ そう。で、今回のまさにさっそくテーマのライブとアーカイブみたいな話で言うと、いつも話してるのはライブ、今もライブですけど、豊津さんとの話ってどんどん巡るめく感じが面白いから、ちゃんと残しといた方が面白いよなーなんて思って。つまりアーカイブした方がいいなーなんて思って。だからこの番組をやってみようと思ったんですよね。

豊津 ありがとうございます。

ヨウ だから今日はライブ配信ですし、結果それがアーカイブされてる。はい、そんな感じなんですけど、ライブとアーカイブというテーマでお話ししようと思うんですけど。あの、どうですか?アートってライブな部分とアーカイブな部分ってあるじゃないですか。

豊津 というか、まぁあなたからお題いただいてね、ゆっくり考えたんだけどさ、なんとなくこう人生はライブで芸術はアーカイブじゃないかなと思ったんです。

ヨウ ぉおおーっ!なるほど!

豊津 うん。だからライブって言うと一応一般の言葉で言うとコンサートとかさ、演劇とかね、ああいうものなのかも知れないけど、本当のライブって毎日の生活じゃ無い?ねぇ、我々は毎日生きてるわけだから毎日がライブなわけですよね。で、それを生きながら何か落としていくものがアーカイブ。作品はアーティストの落とした排泄物?だからよく美術館は死体の山だって僕は言うんだけど。美術館にあんまり以下いない方がいいと、死に誘われるから(笑)

ヨウ なるほど。あー、そう言う意味で言うと排泄物置き場とも言えるってことですね。まぁしたい置き場とも言える。

豊津 やっぱりだって元々美術館の発想はお墓じゃない。だから副葬品って言ってさ、皇帝が死ぬとその皇帝が愛してたものを人も含めて埋めちゃうわけだからさ。だから墓場がミュージアムの最所じゃないの?

ヨウ あぁー!面白いですね。そうするとエジプトのピラミッドとか、前方後円墳、仁徳天皇陵とか、そういうものも元々はお墓だったのに、まぁ仁徳天皇陵は別としてですけど、お墓自体がなんとなく見物の場所になっちゃってますもんね。それって美術館とも言えますよね。

豊津 日本もはいっちゃいけないお墓がいくつかあるでしょ?

ヨウ ありますね。まさに仁徳天皇陵とかそうですもんね。

豊津 その中は本当に誰かに盗まれて空なのか、まだ何か残されてるのか、そういうこともまだよく分かんないんだろうと思うし、中国はもう完全に墓掘るの止めたらしいやね。掘っちゃった後が大変らしいんだよ、保存しなきゃならないから。山の様に出てくるらしいんだよね(笑)

ヨウ だって四千年のものが出てくるわけですもんね。やれ漢の時代だ、宗の時代だ、唐の時代だみたいな。

豊津 そうすると美術品で言うと一つの墓が出ちゃうとマーケット壊れちゃうからね(笑)

ヨウ はっはっはっはっなるほど!そっか、少ないから価値があるかも知れないってことですもんね。

豊津 そうなんですよ。

ヨウ はぁ〜、だから唐の時代の陶器がたくさんあっちゃったら価値が減っちゃうってことなんですね。

豊津 そう、ひとつ墓を暴いたら宗三彩が何満点って出てきたとすれば、今、副葬品っていうのは中国では扱っちゃいけないんですよ。オークションでもね。あの、やっぱりそれで売買が盛んになると盗掘が始まるって言うんで。

ヨウ なるほど、そっか、流通に乗っからなきゃ盗掘とかやらないってことですね。へぇ〜面白いなあ。

豊津 確かルーブルなんかもまだ手付かずのものが山の様にあるらしいよ。

ヨウ ルーブルの収蔵庫にですよね?

豊津 そう、収蔵庫にあるものでもまだ全部が調査しきれてないものがたくさんあるらしいよ。大英博物館も。

ヨウ 僕、今日たまたま東博、国立東京博物館の話をキュレータの方と聞いたんですけど、収蔵庫に11万点眠ってるんですって。

豊津 そんなもん、あなた、数じゃ無いですよ。

ヨウ で、年間展示されてるのって五千弱なんですって。ってことは4%とかしか展示されてないってことですもんね。

豊津 それで美術館の人に言うんだけど、稼働率が悪いから、普通だったら企業だったらそれ許されないって言ってるの。

ヨウ そうですよね、在庫みたいくなっちゃってますもんね。

豊津 そう。だからうちにあるものが何年もいじらないと税理士さんがきて(笑)、「社長、これはお金にしましょうよ。」って言うじゃん。でも美術館はさ、そういう発想無いでしょう?で、ルーブルなんか600万点とか800万点って言ってるから、日本の12万点なんていうのは博物館に入らない(笑)

02.

ヨウ なるほどなー!ライブとアーカイブって話って、もう話すことがたくさんあるんでどこからはなそうかな。僕ちょっとだけ思ったのは今ライブは人生、アーカイブは芸術だアートだって仰いましたけど、なんかそうだなと思った時に、例えば仏教寺院、仏像とかもそうかも知れないし絵画とかあるじゃないですか。あれって当時ってアートな気持ちで描いたり作ってたのかな?ってちょっと思ったりしてるわけですよ。なんとなく、素人で言うと。あれってだって宗教として必要だから作ってるんですよね?

豊津 あれはイラストレーションですよ。研究のための説明書だから。

ヨウ じゃあ取扱説明書の、冷蔵庫とか買うと冷蔵庫の説明に書いてるイラストと…一緒?

豊津 そう。それでほとんどの人が文盲だから。

ヨウ あー!なるほど!グラフィックじゃ無いと伝わらないんだ。ということは元々はアートじゃないってことなんですよね? 

豊津 アートになったのは近代になってからじゃない?

ヨウ それって時間が経ったからってことなんですか?

豊津 ううん、そうじゃなくてやっぱり民衆化したってことですよね。権力構造が壊れたから。

ヨウ そうすると民衆化したってことはみんなが欲しくなったってことなんですよね?

豊津 みんなが見ちゃったってこと。

ヨウ なるほど、みんなが見るとそこに美しければ美しいとか、かっこいいとか、価値を感じちゃったわけですね。

豊津 だからテレビの凄さはさ、みんなが見る機会のチャンスを与えたってことでしょ。ね。だから写真よりも映像の方が本物をみるリアリティがあるじゃない。だから例えば天皇陛下の写真があったとしますよね。陛下はこういうもんだっていうのとテレビで陛下が映るのとでは全然リアリティが違うじゃない。それをみんなが知っちゃったから。

ヨウ 一挙手一投足がわかりますもんね。

豊津 そうすると芸術っていうのが自立し始めるんです。

ヨウ 芸術の自立?!

豊津 そう。それまでは自立してないから。職人だから、アーティストは。だからギリシャのところへ行くと彫刻が置いてあったり壁画があるでしょ?サインがないじゃない。

ヨウ そうですよね、誰が作ったか分からないんですもんね。

豊津 そう。だいたい美術作品にサインが出始めたのって13世紀頃って言われてるんです。

ヨウ ルネッサンス前くらいってことですね。

豊津 そうそうそう、それがちょうど資本主義の萌芽と一緒らしいんだよ。

ヨウ はぁー、ということは民衆が出たとか資本主義がって意味とたぶん一緒だと思うんですけど、やっぱり自立という意味で個人っていうのが自立してきたってことかも知れないんですよね。

豊津 そういうことです。だから神が不在になっていくわけよね。

ヨウ そっか。だからそれまではもしかしたら神様の取説だったってことなんですね(笑)。

豊津 神様の問題でみんなが考えなきゃいけないのは神が頑然と社会の中にある場合は人々は未来のことを考えない。

ヨウ 良くも悪くも神様の世になっちゃうんですね。

豊津 未来を考える様になったのは近代からです。腕時計ですよ。

ヨウ ああ!つまり、時間という概念が!

豊津 そう、自分が時間をコントロールすることになったでしょう?昔は教会の鐘とかお寺の鐘じゃない。正午ですよーとか。そのうちに家庭の中に柱時計ってできたよね。各家々に時間が下りてきたわけだよね。そのうちに僕たちの頃だと中学生になると「あ、お前、高校になったな。じゃ時計買ってあげよう。」とか、初めて自分の時計買うじゃない。だからウォッチングってのは自分で時間をコントロールするってこと。

ヨウ あぁ、「見る」ですもんね。

豊津 それが一番顕著に現れるのがタレントがお金儲かると最初に買うのなぁに?

ヨウ フランクミュラーとか、そいういう時計ですよね(笑)

豊津 だからようやく自分で時間をコントロールしようと思ったんだよ。吉本とかそういうところから離脱する。

ヨウ コントロールじゃなくて、自立して! 

豊津 そう。だから時計を、タレントの人がみんな高い時計を買うのは、なんとなく自分たちは意識してないけど、自立の方に向かってるってことだよね。そこに本田くんが2つ時計してるじゃない(笑)

ヨウ やってる(笑)

豊津 ああいうのすごい面白いなと思う。

ヨウ 自立、過剰自立みたいな感じってことでね。

豊津 そう。そうすると自立すると何したいかっていうと自分で動きたがるでしょ?自動車買うじゃない。

ヨウ あー、なるほど。まさに自立の自と自動車の自は同じですもんね。自ら。

豊津 だから時計と自動車と家っていうのはお金儲かると最初に考えることじゃない。

ヨウ あぁー、まさにそうだ!へぇー。だからそれとアートの誕生ってのは根が一緒ってことなんですね。

豊津 うん。だからアートの誕生は一人の個人の人がサインをしてそれが誰が書いたかということが一人の人間だってことが確定されることなのよ。

03.

ヨウ 面白いですね。ここから僕、話を2つ持っていける方向があるんですけど、という風に自立した個人みたいなものってのが、今この、ここ10年20年揺らいでないのかな、特に日本人はって思ってて。

豊津 それは揺らいでる一番最大の問題は選挙に行かなくなったってことでしょう。選挙に行くっていうことが唯一僕がこの世の中にいる、発言する権利、一票なんだよね。

ヨウ 自立の証なわけですね。

豊津 そうそう。だから街頭でいくら騒いでもあんまり大したことないでしょう?だから僕たち大学時代に安保反対で学生運動起こしたけど、結局なんにもならないじゃない。それは選挙が問題で、選挙で岸さんを追い込むとか、そういうことがない限りは変わらないわけですよ。だからどんなに、テレビが一番難しいのは自民党も立憲君主党も同じように番組で扱うから、いかにも2つの二大政党があるように見えるけど、指示するパーセンテージ見ると自民党の10%くらいでしょ?そうすると画面のサイズ変えなきゃならない(笑)

ヨウ はっはっはっはっはっ!立憲民主党こんなに小ちゃくて、自民党はこのくらい(笑)

豊津 そうすると初めてリアリティが生まれるんだよ。安倍さんと枝野さんが二人ならんでるといかにも2つあると思うんだけど、本来は画面上は10分の1。だからここの画面だと今僕は角田君の顔を見てるんだけど、10分の1で僕の顔が上に付いてるじゃない(笑)、これよ、これ!

ヨウ ほんとですね!それ面白い!あの広告業界で言うと電博(でんぱく)って言葉あるじゃないですか。電博って言葉がすごいって言うか、つまり実際は電通の方が全然大きくて博報堂の方が小さいんですけど、電博っていうと電通と博報堂の2強みたく。だから電博って言葉を作った博報堂がすごいっていう(笑)。あれを言っただけで2強に見えちゃいますもんね。でも実際は全然2強じゃないのにっていう、よく博報堂の人が自虐的に言ってます(笑)

豊津 2大勢力があって均衡を保ってるように見せないといけないってことでしょ。だから独占禁止法違反とかも関係してるんじゃないの?

ヨウ 僕それで自立みたいなものってなんとなく弱まっちゃってる感じがしてるのって、今の話で根っこが一緒って意味で言うと、アートっていうのものちょっと衰退してるのかんって思っちゃったりするんですけど。

豊津 衰退してるより多様化しちゃったってことね。あまりにも広範囲に薄ーく広がっちゃったってこと。根を張るっていう奥に行かないで。だからこれでいうと大脳皮質化したわけよね。情報っていうのは僕たちの頭の中ではさっきのアーカイブで言えばデータが大脳皮質にあるわけでしょ?これは表面じゃない。だから表面の面積を増やすためにシワがついてるでしょ脳に。

ヨウ 伸ばすとすごいでかいんだけどシワをつけることでここに入ってるんですもんね。

豊津 うん。でもそこで考えてるかどうかだよね。考えてるんじゃなくてそこはデータの保存で、考えてる場所はどこか?ってことだよね。

ヨウ それって…どこなんですかね?

豊津 小脳らしいんですよ。これ受け売りだから間に受けないで欲しいんだけど、藤井君の話がそうなんだっていうんだよ。藤井君の一手は小脳で考えてる。

ヨウ ああ、藤井聡太さんですね。将棋の。

豊津 人工知能は大脳皮質で考えると。

ヨウ あー!ビックデータだから!

豊津 そうそう。だからデータで考えると人口知能に負けるけど。

ヨウ 人工知能の方が処理が早いですもんね。

豊津 何が違うかって言うと、最初の一手からこの一手が合理的かどうかを検証するのに時間かけてるのと、最後の一手を編み出すためにずーっと考えてデータを積み重ねて最後の一手を考えるのとでは方向が違うじゃない。その方向が人間と人工知能の違いじゃないか?って言われてる。

04.

ヨウ なんかそういう意味で言うと、例えば文章とかでもそうだと思うんですけど、こういう風に書くとバズるみたいなのとか、こういう風にすると広がるみたいなテクニックがあるからその通りに書きましたみたいなものってすごい多いなと思って。だからビックデータの中でまさに大脳皮質で考えてる、まあ文章もアートと言ってしまえば、そういうものがすごい多くなっちゃってるのってなんか退屈だなーと思っちゃうんですよね。

豊津 いやでもね、それはあなたに聞きたいんだけど、自分自身で言うと、このところ文章書くことが増えたじゃない。文章って面白いんだけど、自分がこういうこと書きたいなと思って始めるじゃない?すると僕の場合鉛筆じゃないとダメなんだけど、鉛筆でどんどん書いていくと自分が考えてたことじゃないことを書き始めてるんですよ。

ヨウ 書き始めますよね!!

豊津 ね?これじゃないかと思うんですよ、小脳が。

ヨウ あぁ〜………?!面白い!なるほど!

豊津 必ずそうなるでしょ?書き出すとさ、最初に話したことじゃない方へ行くでしょ。あれはなんなのかと思うんだけど(笑)

ヨウ つまり思ったことって文章にならないですよね(笑)

豊津 そうそう(笑)

ヨウ 僕いつもメルマガでそれ書いてて、結局思ったことが文章化されることって、思ったことが具体化することって永遠にないんだなと思うんですよ。実際手を動かすと変わって行くんですもん。

豊津 すっごい思った!で、文章を書くっていうのは手の作業じゃない。ただ今度面白いのは文章を書くっていうのは私の場合は線で書くけど、この今の人たちはパンチでしょ?
 ※ 線:筆記 / パンチ:タイピング

ヨウ あぁそうですね。カチャカチャカですね。僕もそうです。

豊津 カチャカチャの文章と線を書いてる人の文章はどう違うか?って言うのはちょっとあなたに調べてもらいたい。

ヨウ あぁー、でも全然違うんじゃないですかね。だってプロセスが違いますもんね。

豊津 すると人工知能の方はこのカチャカチャカチャじゃないかと思う。人間はあくまでも手を動かす線。

ヨウ カチャカチャはデジタル、線はアナログですよね、まさに。

豊津 だから思考が全くそこで似てる様でもどこか違うんだなと思うんですよね。

ヨウ ってことは結局、自分の身体でアウトプットするアウトプットの仕方で変わるってことなんですよね。

豊津 そうだと思うんです。だからそれがさっき言ったライブとアーカイブ。アーカイブはデータだから。そのデータを僕がライブで文章を駆使してデータを駆使してライブで書くわけでしょ?そのアーカイブとライブの役割ってそうじゃないかと思うんですよね。

ヨウ たぶんそれって自分の中の脳にアーカイブされたものがライブになったときには形が変わってるものになるってことですね。

05.

豊津 ということはそのライブでどれだけ面白いことが書けるかっていうのは、どこから来てるか?なんだよ。明らかにドフトエフスキーの文章と誰々の文章はちがうってのがあるない?するとドフトエフスキーが僕が見てる限りはカラマーゾフの兄弟読んだ時に、この人こんなことまで考えてるのか?ってことを感じるわけよね。すると僕にはない、その体験が。ってことはドフトエフスキーは僕よりとんでもない深度でものを考えてるってことじゃない。だからやっぱりその深度っていうのはそのライブとすごく関係あるんだけど、その深度はさっき角田君が言った7つの言語を一生懸命勉強するとかね。

ヨウ ああー!そうそう、それさっき楽屋で話してたんですけどね。楽屋っていうかこの前に、今僕ドイツ語、スペイン語、フランス語、イタリア語、ラテン語、ギリシャ後、くずし字、プログラミング言語を同時に習ってるって話をしたんです。

豊津 それは同時に習ってるけど、今あなたの中では身体化してるかどうかはこれからじゃない。これが身体化すると今までのアーカイブがあなたの脳から下りて来た時にその身体化したものが受けるわけよね。そこでライブが起こるんじゃないの?

ヨウ うん?!たぶん全然違うものですね。それさっき7カ国語くらいやっててこんがらがらないの?って豊津さんに言われた時に、こんがらがってはいるんですけど面白いんですよって言ったのって、なんか、何が面白いかちょっと分かったってい意味で言うと、ライブの時にアウトプットする時の手段が増えてる感じがするんですよね。だって今までだったら日本語の文字しかなかったのに、ドイツ語はこうなんだとかスペイン語はこうなんだというだけで頭の中での大脳皮質からの出し方が、ライブ感がちょっと違うなと思うんですよね。

豊津 だからたぶん僕にとって言語は美術だから、僕にとって美術をたくさん見て来たって言うのが自分の中に体内化してるから。

ヨウ 深度があるんですね。

豊津 その持ってるもので全く違うもの、例えばお笑いを見た時にお笑いの解釈がたぶん番組を作ってるあなた達とは違う解釈が発生するっていうのはそういうことだと思うんだよね。

ヨウ それ、面白いじゃないですか。だから何が言いたいかって言うと、なんかこう解釈って色々あるのにこの解釈が最短距離だねとか、この解釈が一番バズるよねみたいなことをみんな求めすぎてる気がしてて、本当は芸術の深さがある豊津さんが芸人のネタを見た時と、ただ面白いと、深さが違いますよね、見てるところの。それ面白いですよね、やっぱり、そっちの方がというか。

豊津 だからよく若い人にモンスターエンジンね、この間モンスターエンジンが面白いんだって言うと、なんで山本さんはそんなこと言うんだ?!って言うんだけど、モンスターエンジンを違った目で見る視点を僕はアートで獲得してるから言えるんで、それでわはは本舗行ったり、落語聞いたりしてるわけよね。

ヨウ ってことは、アーカイブって墓場だしウンチだみたいな(笑)話をさっきしましたけど、結局そういうところからまた新しいライブが生まれてくるってことなんですよね?

豊津 そう、だからいちいち生き返るゾンビだよね。

ヨウ ゾンビですよね!ゾンビとも言えるし、なんかこうイメージは死体から新しいライブの芽が出てきてるみたいな、着想の芽が出て来てるみたいな感じもしますね。

06.

ヨウ あとライブとアーカイブで言うと複製芸術ってあるじゃないですか。僕がテレビやっててYouTubeと一番違うところって、テレビって例えば放送するじゃないですか?あとでDVD化するって話もありますけど、結果的にライブで、日曜9時に半沢直樹はやってます、すごい視聴率です、そこのCMを見てもらうのは高い視聴率だと得だからスポンサーからたくさんお金をもらえるじゃないですか?テレビ局って。ってことはその作品がいいものを作らなきゃいけないって、現場は多分思ってると思うんですよ。なんだけど、結果ライブで観てもらうことに価値を求めてるビジネスじゃないですか、テレビって。ところがYouTubeってその瞬間観てもらった方いいなと当然思うんですけど、こういう風に豊津さんとのお話を何個も貯めといた方が、アーカイブしといた方が仮に半年後に仮に豊津徳の4回目を観た人が面白い!って1回目から観初めてくれたりしたら、それが蓄積するのが人気YouTuberなんですよね。それってつまり、同じ映像を扱うって言っても、ライブで勝負してるテレビと、アーカイブで勝負してるYouTubeってちょっと違うなーなんて思ってるんですよ。

豊津 僕はね、テレビとYouTubeの違いはね、YouTubeは管理されてないじゃない。あなた番組つくるときさ、管理が入るでしょ?こういうことしちゃいけないとか、こうしてくれとか、こうすれば売れるんじゃないかとか、このタレント使ってくれとか。あなたと2人これやってるのはあなたがやってるだけじゃない(笑)。だから非常にパーソナルな言語じゃない。誰も第三者がここに管理しようって意思がないじゃない。だからこっちの方がライブ感が強い。

ヨウ そうなんです。僕が言いたいのはそういうことで、YouTubeの方がYouTubeライブって言葉もあるし、すぐにこうやって配信できるからライブ感が強いなーとか思いながらも、実はYouTubeって蓄積されてくものに価値、ビジネスモデルがあるんだなって思った時に、当初のライブとアーカイブのイメージが逆転されてるなーと思うんですよね。つまりYouTubeって例えば人気YouTuberって100本とか1000本とか自分の動画を置いてることに価値があるんですよね。1本1本がどんどん観られていくのがYouTubeの価値だったりするんですけど、テレビってその瞬間に観られなきゃいけないっていうか。

豊津 あぁ、なるほど、瞬間芸だってことね。

ヨウ そうなんです。だから一瞬考えると逆だと思うんですよ、豊津さんが言った様に。YouTubeの方がすぐできるライブ感があるし、テレビの方がもしかしたら一回収録したものを一回編集して、編集して作ったご長寿早押しクイズをさんまさんに見せて、さんまさんにみせたものをまた編集してお送りするって、何回ライブと編集繰り返してるんだ?みたいな。ところがさっき言った他者が介在するってことろだと思うんですけど…

豊津 それはさ、ライブのもう一つの発想の中にコンサートとか演劇とかあるじゃない。あれはさ、集中でしょ。例えば僕にとって堺雅人君、堺君をずーっと観続けがわけじゃないじゃない。堺君が演じてるあの空間で一発勝負だよね。だからそのなかの視聴率じゃない。本来は堺君という人間がいて、どういう役者で、どういう役者になって行くんだろうって言うのがYouTubeじゃない。この間二人でここで収録したじゃない?これが何回か繰り返されると、何回か進んで行くと、あの時山本さんと角田君は変なこと話してたよねって、そっちに戻れるじゃない。でもテレビは戻りはないじゃない。だって僕はどこまでいっても堺君は半沢直樹しか観てないんだから。それを何度繰り返してもさ。その一発目の深度が深いものがあるよね?例えばスタンレーキューブリックの映画とかさ。あれはさ、深度が深いから何度も見直せるじゃない。で、何回観ても違う発見があるわな。でも半沢直樹君のドラマは意外と反復性は無いかも知れない。

ヨウ そうですね。2回観るかもしれないけど5回は観ないですよね。キューブリックの映画は10回観ますよね。

豊津 でしょ?で、今観ても飽きないじゃない。だからそれが作品と作品じゃ無いってことの違いじゃないかなと思うんです。

ヨウ 僕がテレビ作ってたっていうのは、それでテレビ局辞めちゃったのって、そのライブってものに寂しさというか、物足りなさを感じたんだろうなーと一方で思うんですよね。そうすると、それで別に制作費がどうだとか、豪華かチャチかとかそういうことは関係なくて、だってこれなんか別に豊津さんとzoomで話してるだけなわけで、チャチかどうか?と言われたらめちゃくちゃチャチなんですけど、ただこの話してる内容ってやっぱり面白いなーってすごく思った時に、これってテレビじゃできないんですよね。

07.

豊津 うん。そうなんですよ。例えばイエロー・マジック・オーケストラ、YMOを観るじゃない?そうすると坂本龍一君より細野君の方が面白いじゃない(笑)

ヨウ 皆さん面白いですけどね(笑)、ただ細野さん、面白いですよね!

豊津 やっぱり僕から見ると細野君のあの不思議な感覚、で、あの人が面白いのはアジアの音楽を全部勉強したらしいんだよね。だから彼がやってることにものすごくリラックスしてるんだけど、違うんだよ。坂本君は彼の方が博士って言うんだっけ?

ヨウ 教授です、教授。

豊津 権威があるんだけど、内容は細野君の方がずっと面白いじゃない。すると僕にとっては細野君は追いかけるけど坂本君はあんまり興味ないやな。するとテレビの中でも長く追いかけられる俳優と、有名だけど…っていうのはあるじゃない。で、その長く追いかける俳優が激減してるっていうのは事実だよな。

ヨウ なんかそうですね。それって何なんでしょうね?というか、それが仮に絵画で言うと、インスタレーションみたいなものってあるじゃないですか。それそんなに好きじゃないんですよね。何でかなーって思うと、テレビのライブ性が嫌だって言ってるのとちょっと似てるんですよね。

豊津 そっくりだと思いますよ。

ヨウ なんかやっぱり、絵があったとして、究極的には、ほんとに好きなものって飾っておきたいなって思うんですよね。自分じゃなくてもいいですよ、ルーブルでもいいんですけど、自分の場所に飾っておきたいなってものがアートを所有したい気持ちを含めて本質的なような気がしちゃうんですよね。ところがその瞬間面白いでしょ?って言われても、自分の中では面白いけどね…ってちょっと思っちゃって、それってすごいテレビと似てるなーなんて思っちゃうんです。

豊津 それはやっぱりグルメ番組と一緒じゃない。グルメ番組ずっと観てるけどさ、実際に食いにいくとさ、リピートしないもんね。やっぱり僕の血肉になるものはさ、情報としては面白い刺激を与えられるけど、血肉にはならないよね。

ヨウ それ確かに芸能人おすすめの店とかよくテレビでやってすけど、本当におすすめの店は紹介したくないですもんね。

豊津 絶対ですよ。

ヨウ 紹介したらみんな来て混んじゃいますもんね(笑)

豊津 テレビで紹介したくないってお店、いくつも知ってるもん。

ヨウ そうですよね(笑)。なんかそういうところの方が本質の、さっきの深さみたいなものがあるってことですよね。そうすると皆んなが知ってれば良いってことじゃないじゃないってことが一方であるじゃないですか。

豊津 でもそういうお店だったらさ、YouTubeで僕が角田君にこういうお店がいいよって言うのは言いやすいじゃない。そうすると角田君もじゃあ山本さん行ってみるよって行ってくるじゃない。で、このことを聞いてて興味ある人が行く分には僕はいいと思うんですよ。こういう話をしている中で興味あってこういうのが美味しいって言ったところに行くのはそのお店にとってはそんな嫌じゃない。

ヨウ そっか…!今の食事の例で例えれば、テレビでやってるから、皆んなが美味しいって言ってたから行こうじゃなくて、こういう感じで…それがやっぱり深さ何でしょうね、こういう感じでちゃんと話してて、ちょっと行ってみようかなと思うのは、同じ行ってみようでも違うってことなんですね。

豊津 それはやっぱり、さっきの話に戻るけど、身体との関係ね。小脳との関係。身体が反応しているところと、大脳皮質が反応してるところでだぶんお店も違うし、読む本も違うし、テレビも違うんだと思う。

ヨウ アートも違う、と。あぁなるほどなあ。

08.

ヨウ あの、先日僕バンクシー展に観に行って来たんですよ、横浜でやってる。で、まあ面白かったんですけど、なんかちょっと疲れちゃったんですよね。

豊津 バンクシーの最大の問題はバンクシーっていう人間が法人かも知れないじゃない。

ヨウ そうですよね。一人じゃないんでしょうね。

豊津 そうすると電通がやってるかも知れないじゃない、マーケティングしてさ。で、お前どこどこに描いてこいとかさ。それに乗っかって金額が動いてるとすればアートではないやね。

ヨウ うん、なんかそう言う意味でアートじゃないなって思っちゃったんですよ。だからすごい展示されてて、そういう意味ではバンクシーの作品がアーカイブされてるんですけど、バンクシーの作品ってライブなことに価値があるんだなと思った時にそのアーカイブされてるものを観てるのって、なんかちょっと存在意義がなんだったっけなと思っちゃったりして。

豊津 バンクシーって人間がどう言う人間がっていうパーソナリティがね、はっきりした時に初めて僕はそれをアートだと判断するかどうかを決めるわけだから。分かんないじゃない。今もしかしたら株式会社バンクシーだったらさ、それを僕がアートだアートだって言ったらあなた、致命傷じゃない(笑)

ヨウ そうすると豊津さんの中で、個人的・山本豊津の中でいいんですけど、深さを感じるものって何なんですか?あえて言語化すれば。

豊津 あえて言語化するなら珍しいものです。僕が見たことがないもの。

ヨウ やっぱり見たことないものを見たら「ほぉ〜!」って思うわけですね?

豊津 そう。やっぱり「これは今まで見たことがないな」って言う。それを毎日探してると言っても過言ではない。

ヨウ うわぁ…ってことはあれですもんね、だってさっきの大脳皮質じゃないけどたくさん、いつも探してるわけだから、豊津さんの大脳皮質のアートのシワはめちゃくちゃあって、めちゃくちゃぎゅーってなってるわけじゃないですか。広げるとめちゃくちゃ広いと言うか。その中でそれでも見たことないものは結果普通の人の見たことないよりも全然見たことないレベルが違うってことですよね?

豊津 まぁ、それはだからあなたのテレビ一緒だよ。あなたがたくさんテレビ番組を見てきたでしょ?俺は見たことがないなってのがあるじゃん。そうすると興味湧くでしょ?で、珍しいってことが発生しないと懐かしいってのが発生しないんですよ。懐かしいっていうので初めて美しいって概念が生まれるの。

ヨウ 珍しい→懐かしい→美しい。

豊津 そう。どんな珍しいものも初回で見て、しばらく経つと懐かしくなるからね。

ヨウ なるほどなぁ〜、確かにそうですね。うん。なんか、分かります。だから珍しいものって懐かしくないものだとちょっとだけ思ってますけど、そうじゃないってことなんですね。

豊津 そういうこと、そういうこと。まず珍しいことが大事。嫌悪感とかね。

09.

ヨウ これって異化と同化ってことかなと。だぶんアートって異化だと思うんですよね。異なるものを体験すると言うか、この世にないものを異化する行為というのはたぶんアートを体験する行為だなーと思うんですけど、それって今度はモノが売れるって同化だと思うんですよね。つまりこの商品をたくさん伝えて、この商品は良いものだよ、このテレビは面白いよって言うからその商品をみんなが手に入れるわけじゃないですか。だからアートの異化と、そのアートで商売することの同化ってなんか僕、相容れないものがあるんじゃないかなって思って。

豊津 ううん、複製がそのためにあるじゃない。

ヨウ そうそうそう!その複製っていうのって、何なんですかね?っていうか、そのアーカイブ…。僕、複製芸術っていうのは何なのか?ってことが今日一番聞きたかったことなんです。

豊津 コンサートのノリ。

ヨウ ん??

豊津 コ ン サ ー ト の ノ リ 。

ヨウ ノ リ ?! (左右の腕をリズミカルに振りながら)ノリって、こういうノリ?

豊津 コンサート行くでしょ?矢沢永吉、観に行くじゃない?そこでタオル投げてるでしょ?あれがノリだよ。版画だよ。

ヨウ 版画??

豊津 だから(笑)、あの、ノリでタオル投げて、それでコンサート料払うじゃない。

ヨウ はい。

豊津 あれが複製じゃない。

ヨウ はぁぁぁぁぁ〜…  そういうことか。

豊津 だから僕が今、例えば草間弥生さんの版画でお茶が欲しいっていうのは、誰も草間彌生の芸術なんかに興味ないわけよね。草間弥生の版画にノリたいわけよ、マーケットができてるから。だからみんながマーケットが出来たときに、それにノリたいっていう為にお金払うでしょ?だからコンサートってそういうもんじゃない。だからあの、(わはは本舗の)喰始(たべはじめ)さん、わはは本舗まではまだ行かないじゃない。ノレねぇじゃん、あれ。

ヨウ ノレるも何もすごいお下劣ですもんね。

豊津 ノルまで時間かかるよな。僕も一度行ったことあるんだけど、中学生・高校生はもうノッてるわけよね。でも50近いおっさんはノレないよね、あれに。でも15分一緒にいるとノレるようになるの。すると僕が15分かかってノレたものは、やっぱり出てくる。それがあれよ、ゲッツよ。

ヨウ ああ、ゲッツ(笑)👉 ※ ダンディ坂野

豊津 僕が最初に見たとき、ほとんど、女の子にはウケてるけど僕は何が面白いか分かんなかった。でも女の子たちが笑ってるのを学習すると笑えるようになるの。だからお笑いってかなり学習しないと分からない。

ヨウ 分からないですね。それって絵画で言うとギャラリーの意味ですもんね。

豊津 そうそうそう。だから僕、喰始(たべはじめ)さんはすごいなと思ってる。あれをずっとやってるんでしょ?

ヨウ 僕、渋谷のラジオやってたときにゲストで出てくれたんですけど、喰さん。

豊津 あの人あそこから出ないじゃん。ジャニーズ事務所にはならないじゃん。

ヨウ はい。お下劣だからならないんだと思いますけどね(笑)

豊津 彼が追求してるのは珍しさだから。

ヨウ はぁ〜面白いなー。そっか、だからそのノリというものって僕がさっき言った異化と同化で言うと同化なんだけど、でもそのノリの同化ってアートですね、なんかね。別に決してそれって嫌な感じしないなぁ。

豊津 うん。でもノリっていうのは何でノリたいかというと、僕たちにとって最初の問題は他人なんだよね。だから僕たちがなぜ社会生活をしているか?っていうときに、最初に人間にとって文字が必要だったり言語が必要だったりするのは他者がいるからだよね。でも他者と同化したいわけよね、安全のために。だからノルわけですよ。だから二人で話しててさ、スタンレーキューブリックいいじゃないって言うとさ、僕もいいじゃないって言うじゃない。もうノッたわけよ二人の間で。この広がりをどこまで持っていくか?だから。

ヨウ そっか、僕はアートって異化だなと思ったけど、異化をどうノッけるか?みたいなことなんだ。はぁ〜!で、それが前回話した宮沢男爵さんの閉じてるか開いてるかみたいになると、異化だけずーっとやってると閉じてるんですね。他者を関係してないから。

豊津 だからそれだと絶対にアートにならないんです。

ヨウ そっか!異化させたものをどう相手にノッけさせるか。異化とノリなんだ!

豊津 そう!

ヨウ 異化とノリって面白いですね、烏賊と海苔みたいで(笑)

豊津 手巻き寿司みてぇだな(笑)

ヨウ 烏賊に海苔巻きじゃないけど異化にノリをしないとアートにならないんですね。で、そのノリが連鎖していくというのはもしかしたらアーカイブとも言えるという意味でいうと、もしかしたらそのアートを作る瞬間はライブなんだけど、それがノリで連鎖していくという中ではきっとアーカイブされてるってことなんですね。

豊津 というか、たぶんね、異化がノリになって、ある程度広まるとアーカイブになるんだと思う。ノラないとアーカイブにならないと思う。

ヨウ ならない、欲しくないですもんね。

豊津 それはそのときに初めて客観性っていうね、ノッたから故にこのモノを残しておこうという意思が生まれるじゃない。浮世絵もオランダ人がノッたわけよね(笑)。我々は消費しちゃったけど、ノッたオランダ人は大切に持ってたじゃない。だから今、浮世絵はすごい値段になったでしょ。

ヨウ 価値が生まれたわけですね。

豊津 だから異化とノリっていうのがすごく大事なんだと思う。

ヨウ 異化→ノリ→価値、ですね。異化したものがノルと価値が生まれるんですね。

10.

豊津 で、ノリって何かと言ったらモノが憑いたってことだからね。だからもののけが憑いたことをノルわけよね。そのときに自分の魂は離れてるわけよ。憑依されてるから。憑依されたことは悪いことじゃなくて、ノレるベースが出来たってことよ。

ヨウ そうですね、御輿じゃないけど乗れるものがあるってことなんですね。

豊津 それの最大が宗教でしょう?あれはだからイエスに乗っかったわけよね(笑)

ヨウ はい、そういうことですよね。はぁぁ〜面白いな今日もまた!そっかぁ、僕、ライブとアーカイブってところをずーっと考えてたんですけど、それこそテレビやライブがアーカイブか?みたいな話を今度の修士論文で書こうと思ってたんですけど、そんなに二項対立じゃないんだなってこともちょっと分かりました。

豊津 やっぱりノルってのは自分から離れなきゃなんないから。だからアートは非日常的なものである必要があるわけよ。僕の日常があるでしょ?で、日常を僕が続けていくとノレないわけよ。豊津 非日常が現れるから非日常に僕がノッって、角田君もノッて、そこにノリっていう物ができて、「あ、これは時代だ」と。そうしてアーカイブされるっていう、そういうことじゃないかな。

ヨウ そのノッてる瞬間ってライブなわけですよね。まさに祭りですね。

豊津 そう。ところが祭りには宗教がくっ付いてたでしょ?僕たちは宗教から離脱しちゃったから、神のいない祭りは何なのか?ってことでしょ。

ヨウ 神のいない祭りはなんなんでしょうね?

豊津 アートです。

ヨウ おぉーっ!そういうことだ。神の代わりに僕らが祀ってるもの、ノッてるものがアートなんだ!

豊津 だってユーミンのコンサートってさ、宗教性ないでしょ?でも元々はみんなの前で歌を歌うっていうのはユーミンに何かが降りてきて、憑依して、するとその後ろに神がいるじゃない。もののけが。で、それが無くなってユーミンになったわけじゃない。で、僕たちはユーミンにノッっかってると安心してるわけよね。でも裏にさ、創価学会とかさ、幸福の科学とかがいるとちょっと違うじゃん。

ヨウ そうか。なるほどなぁ。僕は最近ですね。宗教作った方がいいなと思ってて(笑)。それで宗教作った方がいいっていうのは、宗教っていうといかがわしいんだけど、さっき言ってたもしかしたらアートというものが多様化しちゃってる、個人の自立みたいなものが弱くなってるのって、もしかしたら宗教っていうのは昔はあって、それが個人が自立したからアートってものが生まれたけど、その個人とアートがなんか21世紀も20年経って、ちょっと弱くなってるってときに、そろそろまたもう一個、自立できるシステムみたいなものを作った方がいい時って、なんか宗教的なものなんじゃないかななんて思ったりしてるんですよね。

豊津 それを作っちゃったのが習近平とプーチンじゃん。あれは宗教だよね。

ヨウ うん、きっと彼らは作っちゃったんですね。

豊津 安倍さんとか菅さんとかが総理大臣になっても日本人はそういうすげぇ人だと思わないじゃん。みんなでいじりまくってさ(笑)。これがいいのよ。これに何か大きな個人としての力を求めちゃうとダメなのよ。そうすると習近平さんやプーチンさんみたいになっちゃうの。

ヨウ 祭り上げられちゃうってことですね。

豊津 だから本当はあの二人は人工知能がやればいいんですよね。

ヨウ うん(笑)、それがマトリックスとかですもんね、つまりね。ターミネーターとか。

豊津 それは合理的だ。

11.

ヨウ なるほどなぁー、うん!僕の中ではすごいライブとアーカイブということと、人生と芸術というのが、なんかちょっと見えた気がしますね。面白いですね。なんか僕、なんとなくさっきのバンクシーの絵みたいな話もしたと思うんですけど、結局、僕が、僕がですよ、アートに求めてるものって何かな?っと思った時に、そんなに異化してるものだとちょっと嫌だったんですよね。つまり不安になるじゃないですか。でもなんか自分の部屋の壁に飾ってある絵って、それがあってちょっと安心したいなと思った時に、それってアートとどんどん離れていくよなーともちょっと思っちゃったりするなと思ったんですけど、今の話で言うと、ノレればいいってことですね。その絵にね。

豊津 そう。そうするとね、僕たちはノル準備をしなきゃならない。昔はノル準備を僕たち自らはしなかったから。ノラされてたから。するとノル準備をするために、だから僕も劇場の舞台に立ってみようって思わなきゃいけない。

ヨウ ノッてみなきゃダメなんだ。

豊津 そう。板の上を下から見てるんじゃなくて、自分も板の上に乗ってみようってことを体験するのがすごくいいと思う。それで、この間銀座でね、70歳まで5回、新橋演舞場で舞台に上がるのに付き合ってたんですよ。

ヨウ 出てましたよね。歌でしたっけ?

豊津 そう。最後は引退興行って勝手に言ったんだけど、僕だけ役をもらって冨樫の役をやったんですよ。やーねーすっごい緊張するけど、舞台でセリフ吐いてね動くってね、いいよ!だから絶対に何かしら舞台に上がることをした方がいい。

ヨウ それは大きいか小さいか、有名か無名かは関係ないってことですね?

豊津 関係ない。そう言う空間、例えばお花だったらみんなの前で自分で活けてみるとかね。お茶だったらみんなの前でお手前してみるとかね。そういう空間を持つってこと。

ヨウ そうか!お茶とかお花だってそれはもう舞台ですもんね。それやっておくと全然違うってことなんですね?舞台の下から見てるのと、舞台の上に立ってるのとは。

豊津 だから自分の中にノル準備っていうのを訓練するから。

ヨウ うーん!身体的になるんだ。

豊津 自分でノルのとノラされるのとは違うから。それが遊びなんですよ。

ヨウ なるほどなー、俳優なってみようかな(笑)

豊津 いいと思うよ。だって俳優ってさ、不思議な行為でしょ。

ヨウ 不思議な行為ですよね。台本があって、まさに何かに乗っかるわけですもんね、役にね。

豊津 俳優の俳ってあるじゃない。俳人の俳だよね。あれは彷徨い歩くって意味らしいよ。優ってあるでしょ?それは神事(かみごと)って意味なんだって。

ヨウ そっか!俳優の俳って徘徊の俳ですもんね。

豊津 優は神、神事(しんじ)。だから彷徨いながら神ごとをしてるっていうのが俳優のことらしいんだよね。

ヨウ そう、なんか、さっきの憑依するじゃないんですけど、なんか確かに神様的にウロウロしてる感じってなんかちょっと分かりますね。

豊津 僕が舞台の上に立つと明らかに芸者衆にああしなさい、こうしなさいって訓練を受けるわけよね。で、当然アマチュアだから舞台に上がる時に僕がお金を払ってるんですよ。お客じゃないんで。ね、そうしたら芸者衆がさ、「山本さん、舞台に上がったらあんたがお金払ってるんだから好きな事やっていい」って言われたの。プロはお客さんがお金払ってるからやっちゃいけない。あなたは好きな事やっていいと。なぜか?というと、あなたがお金払ってるんだからって。お客さんタダで見てるんだから。で、お客さんはあなたに技術を観ようとは思ってないと。ね、上手いもの観るだったプロ観りゃいいじゃない。素人に何を期待してるかってことよね?

ヨウ うん。

豊津 失敗でしょ(笑)

ヨウ はっはっはっ!ハプニングだ!

豊津 だからそれを聞いた時に「いやぁうまい仕組みだなー!」と思って、それで僕は舞台の上でスキップしたの。

ヨウ したんですか?!(笑)

豊津 そう。いいって言うから。一緒に出演してる人みんなびっくりしてたよ。それは誰にも言わなかったからね。

ヨウ スキップするとは思わないですよね(笑)

豊津 新橋演舞場でスキップした唯一の(笑)。で、そのときは僕はもうノっちゃってるわけですよ、自分で。これが素晴らしく気持ちいいんだよ!

ヨウ うん、なんかそれやらなきゃいけない気がしますね。やらなきゃいけないって言うのは別に命令とかそう言う事じゃなくて、生きてるんだったら、生きてる=ライブしてるんだから、そのライブを経験しなきゃダメってことですね。

豊津 で、どこか自分で覚めて見てるじゃない。それは実人生じゃないから、舞台だから。バーチャル空間だからさ、それが良いんだよ。

ヨウ なるほど!実人生だったらそうですよね。それが生死なのかお金なのか全てにかかっちゃうけど、ステージ上だから所詮見せ物ですもんね。

豊津 幽体離脱よ。

ヨウ うん、そういうことだ!現実の自分とは違うバーチャルの自分だから。はぁぁ面白いなあまた今回も!

12.

ヨウ 話してるうちにどんどん1時間くらい経っちゃったんですけど、この話ちょっとしてもらっていいですか?新刊「お金とアート」。ライブとアーカイブって話をしたときにまさにこの本とも繋がるしみたいなお話されてたじゃないですか。

豊津 要はだからアーカイブっていうのが、いわゆるデータというのがね、データが生き返るためにはさっきの話じゃないけど活用しないと生き返らないでしょ?だからその活用するためにお金ってのはすごく大事なわけですよ。アートはアートのままに置いておいたら価値を失っていくけど、そのアートがお金に転移することによって生き返ってくるわけね。だから投資のために絵を買ってるんだと思うと大間違いで、アートというものはお金とどういう関係になって価値を生んでいくかっていうことを簿記の先生と話したの。

ヨウ アートとお金って、アートの方が聖なるもので、お金が俗なものみたいな感じで分けて考えちゃってるかも知れないんだけど、実はこの両方があるからアートの価値が生まれるってことなんですよね。

豊津 問題はお金にも聖があるし俗がある。アートにも聖があるし俗がある。で、僕はお金とアートがきちんと結びつけば聖なる行為になるとだということを言いたいの。下手すると俗の行為になる、それが投資のために絵を買うって話になるの。最所、編集者がね、美意識ってことで対談してくれって言ったから、俺は嫌だって言ったのね。なんか美意識っていやらしいじゃない。

ヨウ なんか美意識って美がないですよね。

豊津 だから僕は嫌だと。美意識っていうと死んだ人の話みたいになっちゃうから。だから、生きてるんだからさ(笑)、だからそれだったらこういう話にしたいって言ったら、まあ編集者がね、簿記とアートじゃちょっと洒落にならないから、山本さんお金とアートにしたいって言うんで、ああいいよって。

ヨウ だってそもそもアートに価値をやるお金ってのもそうだし、簿記ってのもどちらかというとアーカイブですもんね。蓄積されていくって事ですもんね。

豊津 だいたいさ、簿記ってさ、世界中どこでも使ってるでしょ、複式簿記。それはついこの間まで誰も使ってなかったわけじゃない。

ヨウ うん、まさに現代というか、近代。

豊津 そうそう、近代でしょ。それからそこの簿記で大事なのはアラビア数字とインド0(ゼロ)じゃない。これ、誰が使い始めたか?ってことでしょ。で、これ共産党、中国人から西洋人から全部これ使ってるじゃない。それが文明なわけじゃない。まずその文明ってものが何なのかを学校で教えなきゃいけない。

ヨウ 教わってないですね!

豊津 教わってないでしょ。で、日本人は文明を作ったことはないって覚悟しなきゃ。それが……の話につながるんだけど。

ヨウ ん?何に繋がるんですか?

豊津 だから文明を日本人は作ったことないから、日本には文化しかないんだよ。

ヨウ あー!いつも豊津さんが仰ってることですね。

豊津 そうそう。その文化しかない日本に文化政策がないのはおかしいでしょ?って話なの。

ヨウ ホントですよね。文化しかないのに文化政策もないんですよね。何にもないじゃないですかね(笑)。なるほど、それが出来ていくと面白いんですけどね。

豊津 だから僕は今、盛んに言ってるのは北海道から沖縄まで日本に自治体、税金で買った美術が一度もアーカイブされたことないわけですよね。それぞれの美術館ではアーカイブしてるんだけど、それをトータルで見た統計がないのよ。

ヨウ まさに文化政策が全然ないんですね。

豊津 でもそのアーカイブが出来ないと活用って概念が生まれないんですよ。

ヨウ つまりアーカイブが出来ないと文化資源がライブにならないってことですよね。生きてこないっていうか。

豊津 そう。それなのに美術館がヨーロッパから持ってきたもので展覧会やってライブやってるじゃない。ね、だから全部フローに終わっちゃうの。人から借りたもの返すからね。

ヨウ だからさっきのアラビア数字とか複式簿記とかそういうものが文明を作ったという意味で言うと、結果、日本が文明が出来てない、文明がないっていうのはそこなのかもしれないですね。ずーっとフローの方だけで浮ついてるだけでやってて、全然ストックされたものが、アーカイブされたものが全然ライブ=生かされてないみたいな。

豊津 でも日本にはね、最大の文化があるじゃない。天皇制っていうさ。2000年続いてる。だから天皇制ってものをアートとして考える様な国家をこしらえたら(笑)って言ったらずげぇ怒られちゃったんだけど。これYouTubeじゃないと話せない。公式のテレビでは僕は話せない。

ヨウ うん、これは、あの…、YouTubeでも話せないですね!

豊津・ヨウ はっはっはっはっはっはっ!!

ヨウ はい!という感じで1時間あっという間です豊津さん。今回も面白かったです。ありがとうございます!

豊津 いえいえ。もう1時間経っちゃったの?

ヨウ 経っちゃいましたよ。

豊津 あ、そう(笑)

ヨウ ライブとアーカイブって話はね、僕また話したい線路が色々あるので、また来月やって頂いてもいいですか?

豊津 はい。もうとにかくテーマはもうお任せしますから、ちょっと前もって教えてくれれば。

ヨウ あっはっはっはっ!今週も1週間くらい前に今度なに話すの〜?ってありましたけど。

豊津 ちょっと不安だったからね(笑)

ヨウ また何か考えます!じゃあ一回配信はこれで止めたいと思いますので。みなさん、HozuTalk、豊津徳でございました。

豊津 どうも皆さんありがとうございました。

ヨウ また1ヶ月後くらいにやりたいと思いますので、よろしくお願いします。さようなら〜!

山本豊津さんの本

教養としてのお金とアート 誰でもわかる「新たな価値のつくり方」 田中靖浩・山本豊津 著

コレクションと資本主義 「美術と蒐集」を知れば経済の核心がわかる (角川新書) 水野和夫・山本豊津 著

アートは資本主義の行方を予言する (PHP新書) 山本豊津 著


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