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#32 『会社を変える分析の力』を読んでみて

こんにちは。なびです。

今回紹介する本は自分の仕事に関わる「データ分析」に関する本です。久しぶりに仕事に直結する本を読んだので、すんなり読むことができましたw

【読んだ本】『会社を変える分析の力』
【著者】河本薫
【発行所】講談社
【初版】2013年7月20日


ーーなぜ読もうと思ったか

勤務先の上司からの紹介でこの本の存在を知りました。データ分析を生業としている会社に勤めている人はみなこの本を読むべきと上司からの強いアピールを受けて読んでみることにしました。

この本の著者である河本薫さんという方は、2年くらい前に読んだ別の本の著者ということもあり、どんな方かということは漠然と知っていました。
(↓当時読んだ本)

河本薫さんは日経情報ストラテジーが選ぶ「データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー」の初代受賞者であり、大阪ガスという一見データにあまり関係がなさそうな会社でデータ分析を専門とする「ビジネスアナリシスセンター」を立ち上げた人物です。上に記載した「最強のデータ分析組織」という本は「ビジネスアナリシスセンター」を立ち上げ、大阪ガスの重要な組織に育て上げるまでの紆余曲折を綴った本で、データ分析をベースとした組織論に近い内容です。こちらも非常に面白い内容なので、興味があればぜひ手に取ってみてください。

ーー何が書いてある?

やや脱線仕掛けましたが、本読書ログで紹介する「会社を変える分析の力」の話に戻ります。この本は一言でいうと、「データ分析をビジネスに発展するための指南書」であると感じました。具体的に言うと、「ビジネスに貢献するためのデータ分析とは一体何なのか。どうやったらデータ分析でビジネスを加速させていくべきか」ということにフォーカスを置いています。本書の初めにこのように述べています。

データ分析の専門家として認知されるまでの苦労、三〇〇以上のデータ分析を通して得られた経験、国内でも珍しい「分析専門組織」を設立するまでの道のり。これらを通して、私の中で無意識のうちにデータ分析に関する哲学のようなものが芽生えました。本書は、これを体系化してまとめたものです。

著者が表現するデータ分析に関する哲学というところが本書のメインテーマであり、最も表現したいことと言えます。研究という目線ではなく「ビジネス」に主眼を置いてきた著者だから表現できる「ビジネスのための」データ分析について語られています。

なので、「データ分析の手法」や「最先端技術によるイノベーション」は本書ではほとんど触れることはありません。そういう話題を望む人は最新の技術書やデータ分析成功事例がまとまった本を読むといいでしょう。本書はあくまで、データ分析者の「心構え」について一貫して語られています。

ーー印象に残ったこと

前段でも紹介した通り本書は「ビジネスに活用するための」データ分析の本です。著者が考えるデータ分析の成果についてこう述べています。

知的欲求を満たすことと、ビジネスや研究に役立つことは違うということです。いくら難問を解明しようが、いくら高精度に解明しようが、意思決定を通して効用を生み出さなければ価値はありません。この点をしっかりと意識しなければ、知的好奇心に翻弄されて、役立たないデータ分析に時間と労力を費やしてしまいます。(中略)データ分析の成果は、報告書の厚みでも、高度な分析手法でも、データの規模でもありません。何がわかったか、それは意思決定にどう役立つのか、それだけなのです。

内容は非常にシンプルで、意思決定に役に立たない分析は結局無意味であるということです。よくよく考えてみれば至極当然のことを述べていますが、このあたりのことをきちんとできているデータ分析は本当に難しいと感じます。というのも、「何を解くのか」「得られた結果をどういう表現すべきなのか」といった問題提起を的確に設定し(ここが本当に難しい)、その上でそれを解決できる十分なエビデンスを掲示できていないといけません。

データ分析をやっていると最新技術や分析手法、データ内容について目を向けがちですが、問題提起力が大事なんだと改めて感じました。そして、それを説明するためのロジック、ストーリーの構築も合わせて重要であると感じました。


もう一つ、印象に残ったこととして、実際のプロジェクト目線に置かれたデータ分析についてフォーカスを当てて議論していることです。ここはビジネスのデータ分析業務に従事してきた著者の経験がいかんなく発揮しています。本書では架空のアイスクリーム販売会社の需要予測プロジェクトを題材にして下記のような結論を提起しています。

意思決定者(この場合は仕入れ担当者) は、どんなデータを使ったかや、どんな分析手法を使ったかには興味ありません。それよりも、予測手法が仕入れ業務に使えるかどうかを知りたいのです。具体的には、 ① この予測手法を使うことでどれだけの効果を期待できるか、 ② この予測手法を導入するのにどれだけの手間と費用がかかるか、 ③ この予測手法を使うことで問題は生じないのか、を知りたいのです。

データ分析者が抱く興味(データや分析手法)と意思決定者が抱く興味(実際の業務に使えるのか?)に溝が生じやすく、せっかくのデータ分析がビジネスに活かしきれない、というまさに残念な結果になる典型例でしょう。プロジェクトによっては分析手法やデータについてあらかじめ指定されていたりするかもしれませんが、本質はやはり「実際の業務に使えるかどうか」。データ分析の「その後」をイメージできるような内容になっていないと意思決定者に刺さらないでしょう。

ここは自分のウィークポイントなので強く感銘を受けました。分析結果だけを伝えて満足してはいけない。その結果をビジネスにどう活かしていくのか、そのビジョンまで伝えていく義務がデータ分析者にあるのでしょう。そこまで責任を追う必要がある。


他にもデータ分析が成功するための4つの壁
「データの壁」・「分析の壁」・「KKD(勘と経験と度胸)の壁」・「費用対効果の壁」
といった話題や、データ分析でビジネスを変革する3つのプロセス
「見つけるステップ」・「解くステップ」・「使わせるステップ」
など、データ分析に従事している人は一見の価値がある内容が数多く盛り込まれています。

ーー本書を読んで

手法や活用事例などが目立つデータ分析本とは異なり、データ分析者の「心構え」を語っています。本書を読むことでビジネスにおけるデータ分析の意義を改めて考えさせられる、そんな本です。

データ分析業務に従事している自分にとって、この視点が抜けていた!とかこういうこと気をつけないとな、とか改めて学び直すべきことがたくさんありました。仕事を行うに当たりこの本は定期的に読み直そうと感じました。

同業の皆さま、特にデータ分析を武器にビジネスに切り込もうとしている方々には刺さる内容が非常に多い読み応えがある本になっていると思います!


いつも読んでくださりありがとうございます!
それでは!

TOP画像:Photo by Franki Chamaki on Unsplash

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