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[小説]メア・イノセント~夢と瀬踏み その1

真っ白い部屋

あるのは、ベッドと扉と
小さな椅子が2つ

目を開けると、いつもこの風景からはじまる

そして僕の起きたタイミングを見計らったように
扉が開く

青色の肌の、双子の女の子が
嬉しそうな表情でこちらに駆け寄ってくる

『あ、おにーさん目ぇ、覚めてる!』

【お兄さん、今日は・・・夢、どうだった?】

元気な方『』がフェティで
少し大人しい方【】がミーディット

僕は、水辺で倒れていたらしく
彼女達が介抱してくれたようだ

ただ、なぜ倒れていたのかとか
どうやってここまで来たのか
記憶が思い出せないまま
そこそこの期間、お世話になっている

彼女達はいつも、僕の夢の報告を待っている
ずっと、ここに置いてくれているのは
もしかしたら、ただの親切心だけではないのかもしれない

「うん、今日は、結構はっきりとした夢を見たよ」

『やった!ねぇ、聞かせて聞かせてぇ?』

2人とも少し興奮気味な表情で僕の方をみている
他人の夢が、そんなに楽しいものなんだろうか・・・とも思っていたけど

どんな事であろうと、話を真剣に聞いてもらえるのは素直に嬉しい

ーーーーーーーーーーーーーー
「今日、僕が見た夢はアヒルがいて・・・」

【アヒル・・・?】

あれ・・・アヒル、ここら辺にはいないのかな?

『おにーさん、はいっ!紙とペンだよ』

・・・いつものように渡されるけど

僕はあまり絵が得意ではないから
彼女達に間違った知識を与えていないか不安になる

でも、一応書きはする

「うーんこんな感じの鳥」

あひる 作 おにーさん

これで伝わるかどうか・・・

『・・・とり、だね?』
【この下のは・・・みず・・・?】

「うん、水に浮いてる事が多いかな」

伝わっているといいんだけど

『へぇー、それでそれで?!』

話の概要としたら
そのアヒルが、お供の2匹のアヒルを引き連れて

何故か火山に向かう

そして火口に剣を投げ入れると

火口から白鳥が出てきて

貴方達が落としたのは鉛の斧か鋼の斧かを聞く・・・という
まぁ夢だなぁ・・・と思う内容だった

こんな突拍子もない夢で
フェティは楽しそうにけらけらと
ミーディットは少し恥ずかしそうにくすくすと笑ってくれる

この辺りに娯楽がないって事はないと思うんだけど

それに彼女達だって夢を見るはずだし・・・

「ねぇ、2人はどんな夢を見るの?
 いつも僕は夢の話をするけど
 君達の話って聞かないし」

2人は顔を見合わせながら
少し不思議そうな表情をする

『やだなぁ、おにーさん
 私達が夢を見るわけないじゃない?』

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