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一生、主人公。

ここんとこ、読書習慣が復活しつつある。

昨日読み終えたのは、こちら。

魔法使いのおばあさんの話かと思いきや、ぜんぜん違ってた。
「マジカル○○」というのは、フィクションの中にあらわれて、主人公を助ける、ステレオタイプでご都合主義的なキャラクターのことだそうだ。「マジカルにグロ」に端を発していて、「風と共に去りぬ」のマミーや「グリーン・マイル」のコーフィ、ゴースト/ニューヨークの幻」の霊媒師オダ・メイ・ブラウンなどが、該当するらしい。そう考えると、ハリウッド映画に出てくる有色人種のほとんどが該当するような気がしてきた。
同じような言葉に「マジカルゲイ」があって、楽しくておしゃれで主人公を助ける女言葉の男性キャラのことらしい。「バーレスク」「プラダを着た悪魔」に出ていた彼らのことね。

75歳を目前に女優再デビューを果たした主人公の正子は、おっとりとしていて上品で、問題を抱えた若者をそっと包み、見守りながらも、時折ズレた反応で笑いを誘いまわりを和ませる、穏やかな老婦人の役回りと得意としていた。なのに、映画監督である夫との仮面夫婦という、生々しい現実が世間に知れ渡ると、社会からバッシングを受け、仕事も来なくなってしまう。そんな中、「マジカルニグロ」という言葉を知り、衝撃を受けた正子は、自身も「マジカルグランマ」だったことに気づく。

そう。フィクションの中には驚くほど「マジカル○○」「理想の○○」が多い。「マジカルワイフ」「マジカルマザー」「マジカル女子アナ」それらの像は、思っているより、自分の中に「正解」として、しっかりとインプリンティングされてしまっているのではないか、と改めて思った。

作中の正子さんは、自身が「マジカルグランマ」を演じることで、おばあちゃんはこういうもの、という押し付けを強化し、そこからこぼれた人々をさらに居づらい立場に追いやってきたのではないか、と気づき新しい自己表現に試行錯誤する。

その正子さんの、欲張りで、強かで、嫉妬深くて、俗物で、野心的な姿に、最初は少し辟易するけど、読み進めるうちに気づく。彼女とわたしは地続きだと。わたしは、自分の意に反して誰かの犠牲になる必要もないし、何かを譲る必要もない。何歳になっても、誰かを優しく見守るなんてしない。美味しそうなものには、いちばん先に手を伸ばす、あつかましいおばさんのまま、年をとってもいい。いつまでも軽やかに鮮やかに、主人公でいていいのだ。

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