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『呪術廻戦』第1話の凄味は「見開き」が無いことだ!!

 さくっと該当ページを引用してパパッと説明しますね。

呪術廻戦 構図による対比表現 (1)
呪術廻戦 構図による対比表現 (2)
参照:芥見下々『呪術廻戦 1』

 実はこの2枚の画像(計4ページ)のそれぞれの1番でかいコマが、第1話の中で2つだけのページまたぎのコマなんです。

 つまりどういう事かと言うと

第1話に見開き1枚絵が無い!!

 ということです。

 第1巻を確認してみてください!
 これとんでもないことですよほんとに!!

 皆さんも家にあるマンガの第1巻、どれでもいいんで開いてください。
 ほぼほぼ絶対に1枚絵のでっかい、豪華な、ド迫力な絵が描いてありますよ(ジャンプだったら99%あります)。

 第1話ってとても大事じゃないですか!!??

 連載が続けられるか第1話の反響で決まると言っても過言ではないわけですし、アンケートに作品名を書いてくれる固定読者を手に入れなきゃいけないし、様子見をしてくれる読者も手に入れなければいけない。

 そんな第1話で、絵師として100%の力が発揮できる場所。
「これからこのマンガは面白くなりますよ」とスーパーハッタリをかませる唯一の場所である見開きを捨てるってどういうことですか!?
 正気ですか!?

 正気ですよ、作者は。
 これ、ちゃんと理由があるんです。
 それを解説していきます。

 そのためもう一度画像を貼ります。

呪術廻戦 構図による対比表現 (1)
参照:芥見下々『呪術廻戦 1』

 まずこちら。
 ここで注目していただきたいのは、全体のコマ割りと、主人公である虎杖悠仁(窓を蹴破っている青年)の位置です。

 なんとなく覚えましたね?
 ではもう一枚。

呪術廻戦 構図による対比表現 (2)
参照:芥見下々『呪術廻戦 1』

 よーく見てください。
 さっきのページとこのページ。
 鏡写しになっているんですよ。

呪術廻戦 構図による対比表現 (3)
参照:芥見下々『呪術廻戦 1』
参照:芥見下々『呪術廻戦 1』(1枚を反転させたうえで、2枚の画像を重ねた図)

 透かした画像を用いて説明する。
 画像の左、縦長のコマの中に虎杖と虎杖(両面宿儺バージョン)。
 下には4つの小さいコマが並んでいる。
 その上の大きなコマでは虎杖と虎杖(宿儺バージョン)と化物の立ち位置が同じで、化物に立ち向かっていくという状況も全く同じ。

 これどういうことかと言いますと、
 虎杖悠二と両面宿儺との対比・対立構造を表現するために見開きを捨てるというとんでもないことをやっているんです。

 例えば、第1話に宿儺がでかでかと描かれた見開きページがあったら、読者は宿儺の方が印象に残っちゃいますよね?
 これは虎杖の場合でも同じです。

 もしそうなったら、読者の頭の中で虎杖と宿儺のパワーバランスの印象が崩れちゃうんですよ。

 『呪術廻戦』の最も大きなストーリーラインとして、虎杖と宿儺のお互いに“抑え込むか飲み込まれるか”という部分があるわけですけど、もしどちらか一方の印象だけ強くしてしまったら、この二人のキャラクター設定が生きてこなくなっちゃうわけなんですよ。
 読者もハラハラ感が薄れちゃうわけですよ。

 見開きで読者を釣って楽に売れそうな道か、前例が無くても虎杖と宿儺の関係性を丁寧に描くか。

 この2択を天秤にかけた結果、作者は前例がない「ジャンプマンガの第1話で見開き一枚絵を描かない」という英断をしたんです!!

 1話だけで名作っす。

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