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ここではあまり書いてこなかったが、シティポップも大好きだ。
幼少から親の影響で歌謡曲はよく聴いていたが、特に80年代の井上陽水のような、都会の夜を妖しく歌うAORっぽい響きの楽曲を気に入っていた。

例えばこんな感じ(拾い物にて失礼)。

こんなスタイルに酔いながら、小学生の分際で夜の高速をドライブする大人の自分の姿を思い描いたりもした。
結局大人になった今は、車を持つどころか運転免許すら持っていない(エシカルにエコに貢献)。

地方で育ち、都会っぽいものに対する憧れは昔から人一倍強い方だったので、
シティポップを聴きまくっているのもその反動、延長線上なんだろうなとも思う。
(「シティポップ」という呼称には、松本隆はじめよく思っていないと公言する方も多いが、ここでは便宜上そう呼ぶことにする)

今日はそんなシティポップからおすすめの1曲を紹介。

和田加奈子「誕生日はマイナス1」

知る人ぞ知る80年代を代表する名シンガー、和田加奈子の楽曲。
1987年発表の3rdアルバム『KANA』収録曲で、翌年にシングルカットもされた。

吉田美和を思わせる伸びやかさがあり、一方で押し付けがましくなく曲とよく調和するボーカルスタイルで、現在でもシティポップファンから高く評価されているシンガーだ。

彼女は最初の結婚を機に90年代に入ると同時に引退しており、
現在出回っているレコードは非常に少なく、特にアルバム『KANA』は中古市場ではプレミアがついている。
その中でも特に愛されているのがこの曲だ。

面白いのは、Aメロのコード進行が、そのまんま Earth, Wind & Fireの「September」を拝借していることだ。
聴き比べてみれば一目瞭然。
歌謡曲としての味も残しながら、クラブやディスコで流れていても全く違和感のないかっこよさ。
これこそ80年代シティポップの醍醐味という感じで、若い世代に新鮮に聴こえることも頷ける。

歌詞は和田加奈子自身によるもので、クールなサウンドとは裏腹に、「わたしの彼は左きき」のような素朴を極めた題材となっている。

主人公には同じ誕生日の彼氏がいるが、一つ年下で、周りから弟と勘違いされるほど幼い。
そのことで「自分の彼氏だ」と自信を持って言えないことに悩んでいる。
そんな二人の誕生日、彼は「二人の間だけでは、誕生日をマイナス1にすればいい」と励ます。
そんな内容だ。

たった1歳の違いできょうだいと見間違えるほど離れて見えるということは、おそらくこのカップルは10代、それも中学生ほどの年齢なのだろう。
周りの目が気になってしまう年頃、大人から見ればしょうもないことに本気で悩む時期だ。

そんな中で見た目は幼なくとも、「誕生日だけ年齢をマイナス1にしちゃえばいいよ」とサラッと言えちゃう彼。
いや〜、さぞモテるんだろうね!笑

シティポップは他のジャンルに比べ、あまり歌詞に注目して聴かれることはない方だと思う。
ただ、よくよく掘ってみると、さりげないこだわりと工夫に溢れた歌詞がリスナーをグッと惹きつける作品もあったりする。
サウンドとのギャップもまたイタズラっぽくて乙だ。


まあ、10代のうちならマイナス1でなんとかなるが、
30代にもなるとマイナス5でも足りなくなると感じる今日この頃…。

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