見出し画像

『春の雪─豊饒の海第一巻─』三島由紀夫

❄あらすじ❄
ともに華族に生まれた松枝清顕と綾倉聡子。互いに惹かれ合うが、自尊心の強さから清顕が聡子を遠ざけると、聡子は皇族との婚約を受け入れてしまう。若い二人の前に、燃えるような禁忌の道が拓かれ、度重なる密会の果て、ついに恐れていた事態を招来する―。三島が己れのすべてを賭し、典雅なる宿命世界を描き尽くしたライフワークたる『豊饒の海』第一巻。自らの死を意識しつつ書かれた三島最後の作品、全四巻。─「BOOK」データベースより


❄感想❄
三島由紀夫、豊饒の海第一巻、『春の雪』。
本作には強い思い入れがあり、豊饒の海を全て読んだ暁には、読書を辞めてもいいとさえ腹を括っていたが、やはり読書は辞められなさそうだ。
ただ、新たな目標が現れ、次のステップに進むために読書量がかなり減ることは覚悟しなければならない。

文句なしの素晴らしい作品でした✨
三島由紀夫の豊かな表現、力強い文章に魅せられ、物語の中に一気に引き込まれると同時に、作者である三島由紀夫とも対峙した気がします。
清顕は18歳、聡子は20歳。
大正元年では大人扱いされていた年齢です。
ですが、二人の思想は稚拙で自己本位であり、周りを顧みず、自分たちの世界に酔いしれているものの、それはまるで未成熟なひなげしの花の様に美しく、二人の悲壮をより一層深めるのです。
いくら大人と言えども、18歳は流石に自分の気持ちを止められない年頃だろう。
そして、それは不可能であればある程燃え滾り、己の身を滅ぼす。
しかし、そんな刹那的な、まるで満開の桜の花が散っていくかの様な一瞬の恋が私には愛おしく、この世で一番美しく思えるのです。
儚くも美しい悲恋…この作品の上に立つものは私の浅はかな読書歴の中ではまだありません。
そして、今後も無いでしょう。
また、本作の見所は本多との友情にもあります。
友のため(時としてそれは悪友にもなる)に自分がどこまでやれるか、身を粉にできるか─
そして、その友が破滅に向かう時、引き止めず自分の中に僅かなエゴと悦びを見いだせるか─
本田は二巻以降も登場する重要な人物。
一巻に精巧かつ巧妙に張り巡らされた伏線を残り三巻でどこまで回収できるか─
二巻『弄馬』をいつ読むかは未定です。
最後に、清顕、聡子、この世に転生というものがあるなら、転生後今度こそ一緒になれますように✨
今生の別れ…それは死よりも悲しい。

『春の雪ー豊饒の海第一巻ー』三島由紀夫


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?