スエヒロ

どうも~、会社員として働いています。歴史パロディなんかを作っています〜。

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最近の記事

雨の桶狭間駅にて

 6月の淡い雨が、駅舎の屋根を静かに打っている。  打ち合わせ先ために桶狭間の駅に降り立った私は、駅舎の軒先で雨が止むのを待っていた。小さな雨粒の薄い雨。走ればそれほど濡れないような気もするが、打ち合わせまでの時間にはまだ余裕もある。入社時から使っている黒い革のビジネスバッグを抱えながら、私は雨空を見上げたり、向かい側あるタバコ屋のシャッターに描かれた落書き(狩野派風の落書きだ)を見たりしながら、雨が止むのを待っていた。  就職してから数年。尾張の小さな店舗に配属されて、

    • 【戦国ショートSF】サラリーマンとして働く武田信玄の一日

      キッチンの棚に塩はなかった。 塩のないゆでたまごは、どこかぼんやりとした味で、めざましテレビを眺めながら信玄はため息をついた。塩の瓶はずいぶん前から空のままで、会議や合戦続きの毎日に塩のことはいつも後回しになっていた。今日の運勢は10位だった。 サラリーマンになって6年目。 出世や上洛には興味がなかっといえば嘘になるけれど、ようやく課長(甲斐支店)になってからも上昇志向と卑屈の隙間で自分をやりくりしてきた。デスクワーク(主に馬と塩関連の業務)は忙しい日々だけれど、でも単

      • 【戦国ショートSF】コンビニでアルバイトする小早川秀秋の熟思

        徳川さんには行けたら行くと伝えた。 深夜のコンビニエンスストアでアルバイトを始めてからもう2年になる。もっと自分にあった仕事が見つかるまでの、繋ぎとして始めたアルバイトだったけれど、夜の真ん中で白く光るコンビニエンスストアで働く日々は、思いのほか居心地がよくて、辞める契機を見失ってしまった。客が入店して法螺貝の電子音が響く。 夜のコンビニエンスストアにはいろいろな人がやってくる。仕事を終えた疲れ顔のOL、負け戦帰りのサラリーマン、しなびた目尻のタクシー運転手、足軽っぽい男

        • 【戦国ショートSF】在宅勤務が長すぎてそういう感じの気分になる織田信長

          雨で煙る街並みは、火縄銃が放たれた合戦場のような、鈍い白色だった。 リモート勤務がはじまって3ヶ月が経つ。信長は会社から持ち帰ったノートPCに顔を青白く照らされながら、昨日までに仕上げるはずだった集計データを打ち込んでいる。白い格子模様が、いくつかの文字と数字で満たされていく。 エクセルに昔いたイルカが、いなくなってしまったことが寂しい。同僚の山田が「イルカは漢字で海豚と書くのだ」と嘲笑まじりにメッセージを送ってきた時、信長は無性に腹を立てたものだ。自分はこのイルカという

        雨の桶狭間駅にて

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        • 【戦国ショートSF】在宅勤務が長すぎてそういう感じの気分になる織田信長

          タイムスリップして新卒社員になった織田信長が合コンに参加したら

          大きなガラスの向こうで、グロテスクな模様の熱帯魚が泳いでいる。信長はバーニャカウダのタレを暖める固形燃料の火をぼんやりと眺めていた。 同期の鈴木くんに誘われ、男と女とが共に酒を酌み交わす宴、合コンに信長はやってきたのである。 鈴木くんが週末に参加しているフットサルサークルのメンバーの女性と、その会社の同僚と、その幼なじみの三人が相手メンバーである。こちらは鈴木くんに、一年先輩である営業の田中さん、そして信長である。 ネオンとヘッドライトが街を艶やかに照らす金曜午後七時二

          タイムスリップして新卒社員になった織田信長が合コンに参加したら