【読了002】鮎川哲也『沈黙の函』
犯人云々ってことからいえば正直そんなに大したことないのに不思議と面白かった本。なんでだろう、雰囲気? 設定? キャラクター?
まず「レコード屋」っていう舞台設定が好きだったのかな。音楽とかレコードとか全然詳しくないんですが、未知の世界をちょっと覗き見られるのが楽しかった。
特殊な業界や事柄についてやたらめったら書きすぎてるやつあるじゃないですか。ああいうのちょっと苦手なんです。「必死に調べたことをもれなく書こうとしてるの……?」みたいに感じてしまうようなのはちょっと鼻についちゃうっていうか……。この本くらいの雰囲気がちょうどいいんです。
あと、王道ですよね。うん。すっごい王道。それも良かった。いかにも何かありそうなブツを受け取った人が、いかにもな感じで音信不通になって。あの「きたきたきた~~」っていうワクワク、やっぱりいいんですよ。好きなんです。いかにも「物語」って感じしません? それがいい。
ガチガチのリアル路線もたまにはいいし、猟奇方面に思いっきり振り切った小説も大好物なんですけど、やっぱり「私の港はここだなあ」っていう安心感がありました。
「いやそれはどうだろうか?」って思う部分も正直あったんですけど。「それはさすがにもっと早い段階で分からない?」とか「その理屈でなぜいけると思った……?」とか色々。
でもこういう空気のものを久々に読んだせいか、そういうのも込みで楽しめてしまいました。この「久々」ってのも多分ポイントだな~。
鮎川さんの未読本はまだまだ手元にあるので、また時間を空けてから読みます。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?