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【読了012】遠藤周作『第二怪奇小説集』

 霧ふかい冬のリヨンの実娘殺しを扱う「ジャニーヌ殺害事件」、夫の死を無意識に願う妻の内面を描く「共犯者」、屈折した女の復讐心をさぐる「偽作」、物に憑かれた人間の泥沼を抉る「憑かれた人」など、日常生活のひだの中に素材をもとめ、深層心理の陰影を自在な筆で掘り下げる、哄笑と怪奇の好短編9編。

講談社文庫

「第二」と銘打ってはいるものの前作とは幾分趣が違っているような。正直に言うとイマイチな話が多くて、のめり込めないことが多かったです。

「共犯者」は前作の「霧の中の声」に似てますね。でもこれはこっちの方が好き(「霧の中の声」は私には胸糞が過ぎたところがありました)。
「偽作」「人食い虎」は逆に一番ニガテなタイプの話だったな……この印象が強いから、全体的に「イマイチ」な記憶になってしまってるのかも。
 とにかく「主人公がイヤな目に遭うだけ」の話がストレスなんですよ。得意な人もそんなにいないと思うんですけども。「人食い虎」は特にしんどかったなあ……。これは主人公がイヤな目に遭うというか、人生で一番嫌いなタイプの人間を延々見せられるイヤさ。
 流行りなのかなんなのか、最近の推理小説とかもやたら「現実にいかにもいそうなタイプのクソ」を懇切丁寧に見せてくるじゃないですか。ああいうのも本当にダメで。なんで「現実にあるイヤなイヤなイヤなこと」に二次元でまで直面しなきゃいけないの? っていう。気持ちが疲れちゃうので勘弁してほしいなあ。

「幻の女」には多少の清涼剤感こそありましたが、「大好き! 面白い!」というほどでもなく。ちょっと私には空振りが多くて残念な一冊でした。


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