マガジンのカバー画像

連続ブログ小説「南無さん」

15
あなたが深淵を覗くとき、深淵もまたあなたを覗いている。
運営しているクリエイター

2016年4月の記事一覧

連続ブログ小説「南無さん」第九話

 師走、雪。静まり返った山中の境内に、ただひとつ響く音がある。

 パアン、パアン、と数秒ごと、空を割るがごとき破裂音。草木を震わせ禽獣を目覚ますその音は日の出とともに始まり、鳴り続くことすでに一刻あまりが経とうとしていた。

 先頃、麓の本寺での行を終えた僧が、末寺であるところの山中へ務めに参り上がろうとしたところ、やはりこの音に気がついた。

 はて、一度は杣人の何ぞ生業と思ったけれども、木こ

もっとみる