【物語詩】コトバの花
その広い「大地」には今日も種が撒かれる
耕す人なんていないのに
雨のように「天空」から種が降る
種が1粒宿るたびに
「ありがとう」「ごめんなさい」
「あれをしなきゃ」「これをしたい」
「振り向いて」「近づかないで」
大地は手紙を受け取ったかのように
種の主の想いを読み上げる
種はいつも芽吹くわけではない
開花するまで育つかもわからない
咲き誇り 実を結ぶかは
種の主が雨乞いをするかで決まるから
──シュルリと私は畑に降り立つ
いろんな花を咲かせて見たくて
裸足で柔らかく温かい土を踏みしめながら
湧き上がる生命力をジョウロで流したり
主に代わって土砂降りを祈祷したり
たまにやり過ぎて 見つかって
ジュルリと畑から追い出されちゃうけれど
肥沃な土に芽吹いた「愛している」は
見渡す限りの菜の花畑になるし
妖しい水辺に「許さない」が辿り着けば
とびきり大きな野バラが咲くこともあるし
まだ見ぬ花を夢見ては心をときめかせる
私は畑から畑へ飛び回り
花の誕生をもたらすコウノトリ
さぁ次は どんな畑があるのかしら
人の数だけ心の大地は広がっている
さぁ主様 あなたの想いを聞かせてね
その言葉が種を生み出すのだから
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