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【書評】「仮説思考」(内田和成)

この本は、終始一貫して「仮説」の大切さを説いている。ここで言う仮説とは、早い段階で出した仮の答えのことである。この答えを出すことは、早ければ早いほど、意思決定が上手くいく。

これに対して、たくさんの情報や知識を集めたがるコレクターは、何らアクションに繋がらない。これを網羅思考と呼び、この本の中では否定されている。網羅するのではなく、情報は絞り込まなければならない。なぜなら、何も実行に移さないことが、大きなリスクだからである。しかも、正解をあらかじめ出すという網羅思考では、時間がいくらあっても足りないからでもある。

あれもこれもと網羅的に現状を直そうとするのは、かえって遠回りである。むしろ、「ここだけは直さなければならない一点に集中」するのが良い。しかも、その集中するべき点も、客観的な正解ではなく、仮説的に決定されるのである。それは、わずかな情報から効率よく全体像を捉える論理である。

このような仮説は、間違っていてもOKである。なぜなら、仮説をその都度、実験的に修正しながら行動するほうが、あらかじめ選択肢を網羅し、客観的に正解を決めようとするよりも早いからである。この点で、分析力よりも仮説力のほうが、ビジネスシーンにおいては役立つ。仮説→実験→仮説のサイクルを高速で回すことで、仮説は進化するのである。

しかも、仮説思考は学術研究においても役に立つ。ランドシュタイナー(ノーベル賞受賞者)は、実験をする前に論文を書いていた。そして、必要となった実験を補充的に行っていた。これに対し、実験→論文という普通の順序では、なかなか論文にするべき全体像が見えず、木を見て森を見ずとなってしまうからである。

話を戻せば、良い仮説は具体的で、アクションに結び付く。だからこそ、そのような仮説を早い段階で持つようになると、仕事が早くなり、意思決定の質も高まるのである。これは、細部を積み上げて全体を把握するのでなく、全体像を決め打ちしてから、必要な部分にのみ細部にこだわるやり方である。

繰り返し述べるが、情報が多ければ多いほど良いと考えるようでは、仮説思考は身に付かない。むしろ、より少ない情報で、同じ質の課題解決ができた人の方が勝つのである。

まとめ

・仮説とは、仮の答えのこと。
・選択肢を網羅して正解を出すのではなく、出来るだけ早く仮説を出すべきである。
・仮説は間違っていてもOK。修正しながら行動する方が早い。

この本の仮説思考を実践することで、ビジネスシーンのみならず、人生全般の意思決定がハイレベルになることが期待できる。そのため、人生には仮説を全面的に取り込み、アクションにつなげるべきである。

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