181116_スクランブル交差点

はじめての冬。

 最近、上下それぞれ3~4つくらいの服を、組み合わせを着回している。
 と、いっても着回し上手ではないから、上下コーディネートパターン数として数えてみても二桁にはならない。
 ウォークインクローゼットに入っているプラスチックケースには着ていない服が沢山入っているけど、出し入れするのはケースの手前側だけ。
 それでいい、満足している。

 それだけど、ファッション雑誌の立ち読みはするし、時々買って帰る。
 付録つきのやつは、結局付録が邪魔になるから敬遠して、文字情報が少なめのビジュアルブックのようなものが好きだ。見ていて楽しい。
 社会人になって上京するまではそんな雑誌が放ってあったもんなら、母か姉がパラパラと読んで「これはあんたには似合わない」とか「それより去年あげたセーターはどうした」とかあーだこーだと言ってきた。

 そんな声も聞こえなくなって半年と少し、そしてはじめての冬。

 ファッション誌の棚の前にいくと、そちらもあちらも「クリスマス」「デート服」の文字。
 何とも思わないことはないけれど、気になる人もいないし、正直ハロウィンが終わってから途端にクリスマス!イルミネーション!(商戦!)モードに入った東京のまちに疲弊している部分がある。

 少し左へ移動して、タウン誌に目をやる。『手みやげを買いに』。
 そう言えば、東京名物ってなんだろう。東京ばな奈かごまたまごしか知らないぞ。
 パラパラと捲ると、芋ようかんやお海苔、あんぱん、、、言われみれば「ああ」と思い出せるものや、初めてみるものまで。
 お姉ちゃんは、彼氏や友だちとディズニーに行くときかライブのときくらいしか東京に来ないし、お父さんは出張といっても仙台しか行かないし、お母さんは東京には目もくれず韓国ばかり行っている。
 雑誌を棚に戻して本屋を出る。

「さむっ」
 自動ドアがあき、わたしの顔に突進してきた風が冷たくて思わず声が出てしまった。
 鼻が隠れるくらいまでマフラーを上げながら、右手はポケットの携帯を探し、JRのアプリを立ち上げる。

 帰省の切符を予約しよう。
 東京駅前のデパ地下で芋ようかんも買いたいし、12時位に。ついでに駅弁も買っちゃえばいい。
 プラスチックケースの奥に入っているブルーのハイネックを着て帰ったら「ほら、やっぱり似合うじゃん」と言ってくれるだろうか。お父さんには、いつになったら仙台の旨い牛タン屋に連れてくれるのか問いただそう。

 切符が取れた。
 これ以上冷たい風に指を晒しているのは辛い、携帯と一緒にポケットに突っ込む。

この度は読んでくださって、ありがとうございます。 わたしの言葉がどこかにいるあなたへと届いていること、嬉しく思います。