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『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』林 伸次

「いつか自分でお店をやってみたい」ジャンルや業態を問わず、誰もが一度は妄想をふくらませる事があるんではないでしょうか。自分のお店を始めること、続けていくことの難しさ、やりがい、魅力がリアルに生き生きと伝わってくる本です。

語りかけるメニュー

「メニューやPOPは詳しく書けば書くほど売上につながる」という著者の学びが新鮮で興味深い。すこし思い浮かべると確かにそうで、ちょっとおしゃれなカフェに入って、「今日のスペシャルコーヒーは、どこどこの産地で、香りがこうで、フルーティーで、、、」など書かれていると、ぐっと魅力が増して注文したくなってしまうものだ。

例えばラムです。ふつうは「RUM」と書いて、「バカルディ¥700」、「マイヤーズ¥700」という感じで羅列するだけなのですが、お客さまはまず知っている銘柄しか注文しません。
しかし「RUM」の後に、
「ラムはサトウキビからできた蒸留酒ですので、サトウキビが出来るところにはどこでも存在します。例えばインドやフィリピン、奄美大島、昔社会で習った三角貿易のプランテーション農業の中南米でもたくさん生産されています。中南米のラムはおもしろいことに旧宗主国の好みが味に反映されます。イギリスが宗主国の場合、イギリスは海軍がラムを使用したためパンチが効いたラム、フランスが宗主国の場合、フランスのブランデーを思わせる華やかな香りのラムといった具合です。ぜひあなたのお好みのラムを探してみてください」
といった解説をつけるのです。
こういう文章って意外とお客さまって読むものなんですよね。

林伸次『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』(P41-42)


居酒屋でもたまに毎日手書きで食材の産地やおすすめポイントを書いているお店があるけれども、たかがメニューといって侮れない。メニュー作りには、お店の人の思いが詰まっているのだと感じる。

煙草の銘柄でお客様の性格が把握できる

バーらしいお客さんの観察だなぁと思える一節。確かにお店をやっている人は、お客さんのことをかなり細かくしっかり観察している。会話だけではなく、目に見えないところでどれほど深く、集中してお客さんを観察しているかは、お店づくり、接客の細部に表れてくるんだろうとおもう。

バーテンダーをしていると、お客様の服装や持ちもの、あるいは来店する時間や飲み方、いろんあ言動でその人の性格がわかるようにもなります。例えば、「煙草の銘柄でお客さまの性格がある程度は把握できる」というものをバーテンダー修行の時に教わりました。まずショート・ホープ、セブン・スター、ハイ・ライトとこの三種の人は頑固で曲者です。でも一度お店のことを気にいっていただけると、ちょっとしたこちらの粗相やトラブルくらいでは、お店のことを嫌いになって来なくなるなんてことはありません。そして彼の趣味を信頼している人は彼の周りにはたくさんいるので、
「あの人が薦めるならいいお店に違いない」
といろんな他のお客さまを連れてきてくれます。
マルボロ系全般にはバーのような夜のお店使いが上手で、気のいい方が多いです。クールの方ははっきり言ってクールです。こんなお洒落な方には、僕は太刀打ちできません。パイプの方は嗜好品へのこだわりがとても強く、自分の好みがはっきりしています。

林伸次『バーのマスターはなぜネクタイをしているのか?』(P144)

まとめ

作者の林さんの「Bar Bossa」は、渋谷で今日も営業を続けている。一度お店にお邪魔してみたい。一度すごいクレーマー的な女性客で苦労して以来「お一人様はお断り」とのことなので、できれば女性を誘って、2軒目にふらっと立ち寄るのが理想的。







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