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米国雇用統計

米国経済シリーズ2


 11月の米国雇用統計が、12月2日に発表された。非農業部門雇用者数は、事前予想の20.0万人に対して、実績値は26.3万人となった。これは、前月の修正前数値26.1万人をも上回っており、かなり強い数字と解釈すべきであろう。平均時間給の伸び率も、事前予想の前年比4.7%を大きく上回る5.1%となった。なお、失業率は、事前予想通り、前月と同水準の3.7%であった。こうなると、12月のFOMCに対する見方が、分かれてくる。利上げ幅の0.50%への圧縮は行われるだろうが、それ以外の部分で、FRBの姿勢が再び硬化する可能性も高まったと理解されよう。FOMC後のパウエル議長の会見のトーンに、再び注目が集まることになる。

非農業部門雇用者数

 非農業部門雇用者数は、前月が26.1万人であったが、事前予想の20.0万人を大きく上回り、前月の修正前数値をも上回る26.3万人に達している。これは、明確なサプライズであり、米国の労働市場における旺盛な採用意欲があることを強く示唆する結果となった。なお、10月の数値は、今回28.4万人に上方修正されている。
 今回の発表を受けて、労働市場の逼迫は、まだ続いているとの見方が急速に広がっている。もちろん、単月の数値で軽々な判断は禁物だが、想定外の強い数字に市場には、ショックが走ったようだ。
 FRBのパウエル議長などは、このところ、12月のFOMCで金利引き上げペースを落として、0.5%の利上げにとどめることを示唆してきた。それ自体は、その通り実行されたとしても、その後の金融引き締めの期間や程度が想定以上に厳しいものとなる可能性が出てきた。

失業率

 失業率については、前月と同水準で、事前予想とも一致する3.7%であった。この水準は、アメリカにおいては、完全雇用に近いものと受け止められる水準であり、やはり労働市場が緩んではないことを裏付けるデータだと考えられる。

賃金上昇率

 新規雇用者数の伸びに加えて、賃金上昇率が、事前予想や前月の水準を上回ったこともサプライズとなった。平均時給は、前年比5.1%となり、事前予想の4.7%を明確に上回っている。前月の数値も4.9%に上方修正されている。比較的高めの賃金上昇が続いているのは、労働市場における逼迫が反映されているものと見られる。賃金上昇は、インフレ率を押し上げる効果があるものと考えられるため、今後の金融政策にも影響することが想定される。
 この面からも、FRBの金融政策をタカ派的に誘導する経済データだと解釈できる。賃金上昇は、個人にとっては望ましいことだが、マクロ経済の過熱を招く要因であり、そろそろピークアウトして落ち着くと見られていただけに、市場のショックは大きめになった。

債券市場の反応

 雇用統計の発表直後から、債券市場は、明確に金利上昇という形で反応した。10年物国債の利回りは、3.5%程度から3.6%台に上昇し、先々の金融引き締め強化を織り込む形となった。
 長期金利上昇は、将来の景気後退のシグナルともなるため、今後の推移が注目される。相変わらずの逆イールドもあって、不況リスクを懸念する市場参加者が増えた模様だ。

株式市場の反応

 ニューヨークダウの先物は、雇用統計発表直後に一気に400ドル程度急落した。金利に敏感な性格が強いナスダック100の先物は、200ポイント以上下落し、下落率で見ると、ダウよりも大きくなっている。テクノロジー業界は、このところファンダメンタルズの悪化を伝える報道が多いため、敏感になっている面もあるようだ。
 年末相場の基調を崩すほどではないが、一通り織り込んでから、落ち着いていくものと予想している。とはいえ、FOMCまでは、慎重に方向性を見極めていきたい。それまでにいくつかの経済指標が発表される予定もあるが、12月4日に開催されるOPECプラスの会合の結果にも注目が集まっている。原油価格の動向次第では、インフレ懸念が再燃しかねないからである。

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