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お茶の淹れ方

お茶の淹れ方は極めて単純です。
茶葉をお湯に浸して、注ぐだけ。
手順としてシンプルだからこそ、僅かな淹れ方の差異で全く違う味・香りになってしまいます。

まずは急須を用意します。
急須でなくてもお茶は淹れられますが、急須はお茶を淹れるために作られた道具ですので、効率よく便利に考えられています。
急須も様々ありますので、選び方も大事になってきますが、長くなるのでまたの機会に。
基本的には、常滑焼か萬古焼の横手のものが使いやすいでしょう。

常滑の横手急須

お茶を淹れる際に、まずどんな茶葉を使うのかを確認する必要があります。茶葉の作りによって、味の抽出のされ方は変わってくるからです。基本的な考え方は前項でお話しした通りです。ここから大きく逸脱することはありません。

お茶の栽培・製造過程において、乾物としての茶はさまざまな形状に分化します。大雑把に分けると、摘採が早く蒸しが深いものは形状として細かくなり、摘採が遅く蒸が浅いものは形状が大型になります。
何のことやら、と思うかもしれませんが、ご自身がお持ちの茶葉をじっくり観察してみてください。商品によって形や色が違うのが分かると思います。

この二つの茶葉が果たして、同じ淹れ方で同じ味を狙えるのでしょうか。なんだか難しそうに思えますよね。なので、淹れる茶葉を観察する、というのがまずは大切なんです。とはいえ、茶葉が細かいからどういう淹れ方がいい、とか大きいからこういう淹れ方がいい、というのをすぐには理解できないと思います。
何はともあれ実践が大事なんです。try&errorが必要です。

まずは急須に茶葉を淹れましょう。分量はどうしましょうか。適当でいいんです笑
分量が毎回同じなら同じお茶が入る訳ではありません。誰にも癖のようなものがありますので、まずは淹れることです。薄ければ次回は茶葉を多くしましょう。濃ければ次回は茶葉を多くしましょう。
最初から上手にはできないものです。
どうしても、という方もいらっしゃると思うので、そんな方は4g使いましょう。ティースプーン二杯分くらいです。これも茶葉に依るので、あまり厳密にはいえませんが。

急須に茶葉を入れたなら、そこにお湯を入れましょう。お湯の温度は何℃にしましょうか。適当でいいんです笑(2回目)
湯の温度を測るのは思いのほか難しいです。気温や茶器の素材、その他さまざまな要因によって、湯温の変化の仕方が異なるからです。たとえ同じ温度で入れてもも、温めた急須に注ぐのか、冷え切った急須に注ぐのかでは温度の変化が異なるということです。それならば、お湯の温度というよりも、それによる茶葉の変化を目で見てあげたほうが状況が測りやすいです。
茶葉は湯を含んでいくと下図のように変化します。製茶され捻れて乾燥している葉が開いていきます。

前項でもお話ししたように、お茶の味は旨みから出始め、葉が開いてくるに従って苦渋味が出てきます。香りは順次変わって行くのですが、図のように、開き切ったお茶の葉が途中で破れていることがあります。一枚の完全な葉に戻ることはあまりありません。非常に精密に考えられた製茶であれば叶いますが(もしくは手揉み)、茶の形状は崩れていることがあります。それは握れば崩れるような強度のものであることを考えれば仕方のないことです。
細かいお茶ほどお湯を吸いやすく葉が開きやすいといえるでしょう。

さて、ようやくお茶が注げます。どれくらい待ちましょうか。もうお分かりですね。適当でいいんです笑(3回目)
茶葉がどのくらい開いたのか、確認して注いでみてください。急須の中になるべくお湯が残らないように最後まで注ぎます。この時に注ぎ方がゆっくりなのか急なのかでも実は味わいが変わってしまいます。急に動かしたり回したり、振ったりすると葉がたくさん開いてしまうからです。
注ぎ切ったら、まず急須の蓋を外して中を確認してみてください。茶葉の状態を確認します。どの程度水を吸っているのか、捻れが解けて開いているのか、目で見て覚えます。そしてその状態と、飲んだ味わいをリンクさせていくのです。
飲んだ味わいが濃くて飲みにくければ、お湯を入れて薄めてもいいです。薄ければ一旦急須に戻して注ぎ直すのも手です。茶液の約99.5%は水の成分でしかなく、約0.5%だけがお茶の成分で味に影響がある部分です。多少湯を足しても淹れ直して濃くしても、牛乳に水を入れるような極端な味の変化はありません。やり直していいのです。
2煎目、3煎目と淹れて行くことができますが、茶葉が開き切ったら終わりだと考えてください。それ以上は味が薄くなるだけで、変化はありません。明確な終わりはありませんが、葉が開ききった状態に戻ったら一区切りです。

淹れたお茶に対して葉の状態を確認し、次回へと繋げていきます。今回は旨味が強かった、今回は苦味が強かった、香りがうまく出た、全体薄かった 。それがなぜなのか、茶葉の状態を見て行くことで、試行錯誤を続けます。
私は毎日お茶を淹れて飲んでいますが、一度として全く同じ味を作れたことはありません。ある程度のストライクゾーンに向かって、狙い澄ますイメージです。どこまでイメージに近づけられるか、そこにはたくさんのアプローチがあり、わずかなことで大きくブレますので、きちんとお茶を淹れるのが難しいと言われる部分なのでしょう。
ただ、やっていることは簡単で誰でもできることです。お茶を入れてお湯を注いで少し待ち、急須を傾けお茶を注ぐだけ。こんなシンプルな動作に深淵ともいえる思索があるのが魅力なのだな、と思います。

次回はもっと細分化したお話をしていこうかな、と思います。
お楽しみに。

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