連載小説 口は幸せのもと
文=にら (N高7期・ネットコース)
人混みの中、のんびり歩くのは申し訳なく感じたため、私はそそくさと階段を上がり外に出た。
「寒っ……。」
知らぬ間に天気は雨へと変わり、雨粒は寒さによってみぞれのようになっていた。
午後試験まで、あと30分程度。
時間に余裕があれば外を散歩したかったが、この天気だと難しい。
「……そうだ。チカホがあった。」
札幌駅周辺には、「チカホ」と呼ばれる札幌・大通駅間をつなぐ地下歩行空間がある。
私は寒さをしのぐためにも、そこへ向かうことにした。
調べたところチカホにつながる階段は、定食屋のあったビルの中にあるらしい。
私は来た道をもう一度引き返し、チカホに向かった。
階段を降りたところ目に飛び込んできたのは、大きな液晶パネル。
先ほどのビルにあった飲食店を案内するためのものだった。
「はぁ……。」
あの定食屋は知る人ぞ知る店ではなかったのか。
数十分前まで優越感に浸っていた自分が恥ずかしく、自分の情けなさから、ため息が漏れてしまう。
空回りばかりしている自分が嫌になるが、そう悲観的になっている時間はない。
ランチタイムで混んできたチカホを歩く。
今日はなんだか本調子ではない感じ……。
だけどあの美味しすぎるメンチを食べた私なら無敵なはず。
そんな根拠のないポジティブさを取り戻せた今日のランチだった。
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