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自分を肯定してあげる方法とは?〜「本当に本を作るプロジェクト」参加者インタビュー③

取材・文=まどやん(N高5期・通学コース)

皆さんは、私たちN/S高新聞が2月に投稿した記事を読んでくれただろうか。

N/S高にはたくさんの人が夢を思い描いて入学してくる。その夢を叶える手伝いをするために開催されるのが、ワークショップ(以下WS)だ。「等身大の自分」をテーマに生徒が一つの作品を執筆する「本当に本を作るプロジェクト(以下本プロ)」も、WSの一つである。私は以前、N/S高新聞の企画で本プロ参加者の方にインタビューをさせていただいた。

前回の記事はこちら!  

私は今回、そのインタビュー記事を読んで「自分もインタビューしてほしい」と立候補してくださった蟹山世聞さんにも、作品に込めた思いをうかがった。


話してくれた人=蟹山 世聞(かにやま せぶん)さん
N高3年ネットコース所属。高校中退後就職したが、大学を受験するためN高に編入。これまで感じてきたことや自分の半生を多くの人に知ってもらうため、エッセイ「僕/私/俺/自分」を執筆。


参加したきっかけは「ビビッときた」

ーー「蟹山世聞」というお名前がすごく印象に残っているのですが、ペンネームなんでしょうか?

ペンネームです。自分の誕生月など、身の回りのことに「7」がつくことが多いので、名前を「セブン」という読み方にし、世間の声を聞くという思いも込めました。執筆よりも名前の方が悩みましたが、結果的に良い感じになったので気に入りました。

ーーWSに参加されたきっかけはなんだったんでしょうか?

告知のメールが届いたときに一目惚れ。ビビッときました。もともと読書が好きで、いつか小説も書きたいなと思っていました。自分がどこまでやれるか試してみたいという気持ちもあり、参加させていただきました。

ーーすごく直感的だったんですね! では、WSで身についた力、気づいたこと、発見したことはありましたか?

作品を1つ仕上げるとなると、物語の途中でつまづいたり次はどんなふうに書けば良いんだろうとなったりしてしまい、進まないことってあると思います。今回は執筆の期間とかも決まっていたので、スケジュールに合わせてがんばることの重要性を知りました。

ーー今回のWSは大きく分けて4つの期間(構想期間、執筆/フィードバック期間、製本期間、まとめ期間)がありましたが、一番成長したと感じた期間はなんですか?

執筆/フィードバック期間です。それまでは自分の頭の中にしかなかったものを初めて講師であるプロの方に読んでもらいました。そこで、すごく温かいメッセージをたくさんいただき、初めて「これを書いていいんだな」って安心しました。

ーー講師の方のメッセージはすごく安心感がありますね。次に、今回のWSは他のWSと比べてもすごく参加者同士の仲が良かったとうかがっています。蟹山さんは他の参加者さんとどのような関わりがありましたか?

同じくN/S高新聞実行委員のインタビューを受けているたっちさんが、WS終了後いつもzoomを開いておつかれさま会みたいなものを開催してくれました。そこにときどき参加させていただいてました。

いろんな自分をすべて含めて「自分」

ーー本に掲載される文章を書かれたのは初めてとのことですが、どうして今回執筆しようと思われたんですか?

自分のなかで整理したいって気持ちが大きかったです。また、N/S高生のなかにも、不登校だった方、自由に活動がしたい方、いろんな悩みを持っている方がいます。もちろん、自分みたいに成人してから学び直すために入学してこられる方もいると思います。そういった方にも読んでいただきたくて書きました。

ーー本の書き方だけではなく、作り方なども学べたんでしょうか?

はい。別の参加者さんが工場見学された様子を動画で見せてくれたりしました。本の裁断した部分を本と一緒に送っていただきました。本の作り方をすごくリアルに感じることができたので、本当に感謝しています。

本を裁断した部分(写真下部)

ーー作り方を知ることで、さらに愛着が湧きますね! 章ごとに一人称が変わっていく作品の書き方がすごくおもしろくて、作品を楽しんで読むことができました。こういった書き方はあまり見ないですが、どのようにして思いついたんでしょうか?

インパクトのある冒頭を書きたいなって思っていました。昔の文豪って、書き出しのインパクトが強い本が多いじゃないですか。それに憧れて、書き始めたのがきっかけなんですよね。

ーー読者の私はすごくインパクトが強いと感じたので、大成功ですね。また、私はこの作品を読んで、蟹山さんがご自身の半生を振り返り枠に囚われない生き方を書かれていると感じました。蟹山さんはこの作品を通じて、読者の方に感じてもらいたいことはありますか?

私と同じ悩みをもたない人にも、「こういう人もいるんだな」「こういう考え方もあるんだな」と受け止めてもらえたらうれしいです。自分のアイデンティティに迷っている方、性別のことに疑問とか悩みを抱えている方、いろんな方が「ここにも同じ人がいる、自分だけじゃないんだ」と思ってくれたらうれしいです。

ーー蟹山さんと同じように、僕であり、俺であり、私であり、自分である人は少なくないと思います。こういった方に向けて込められた思いなどもあるんでしょうか?

男・女のどちらかじゃないとダメという生き方はない。反対に、男・女のどちらでもないと決めたからといって常にどちらでもない状態を選ばなくてはいけない、ということでもない。とどちらかを選ばなきゃダメという風潮をなくし、そのときの自分の気持ちに従ったらいい。いろんな自分をすべて含めて「自分」でいいんじゃない?と思っています。なので、読者の皆さんにも自分を肯定してあげてほしいという思いを込めました。

蟹山さんのお話を聞いて、私は今まで「どちらでもない」という選択をしたことがなかったと気づいた。いつも「どちらか片方にしないと」と思い、無理やり選んできたことが多かった。もちろん無理やり選ぶのも「自分」で、私が「自分」を肯定してあげられる一つの材料でもあるのだろう。こういった無理やり選ぶという考え方は私だけではなく、読者の皆さんもするのではないだろうか。

しかし、そんな人にこそ蟹山さんの作品を通し、「どちらでもない」という方法を知ってほしい。それは、自分を知る新たな方法で、自分を肯定してあげられる一つの材料になるのではないだろうか。

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