見出し画像

営業が嫌いだったのに、営業の仕事にはまったわけ

私は営業の仕事が嫌いでした。
いわゆる外歩きのような仕事だったからでしょうか、学生時代、もっともやりたくなかったことでした。
それなら、学生時代に勉強したのか、問われれば。。。
するわけないのが、私です。

このようないい加減な人間の行きつく先は決まっています。
自分がやりたくない、と思うようなことをやらなければいけなくなるということは、人生の定石です。
見事にそうなりました。。。
わかってはいるのですが(ほんとうはわかっていない…)、できないのが私の私たるゆえんでしょうか。

就職活動では、一番やりたくなかった営業職に、しかも補充採用で入社するというていたらく。
もっとも、採用が100名中の2名だったようですから運だけはよかったようです。
そんなわけで、私の仕事人生ははじまりました。

この会社のよかったところは、座学の研修が2週間ほどで、あとは先輩社員と同行営業を一か月間みっちりと行ったことと、先輩との同行営業が終われば、いきなり単独で営業活動に放り出されたことでしょう。
同行営業では、いろいろな先輩と同行するわけですから、多くの情報を得られます。
仕事に関する情報、会社のよいところや悪いところ、先輩社員の営業能力、あるいは企業体質などを知ることができました。

新入社員として、これはこれで貴重な情報です。
とりあえず、私も営業活動をしていかなければなりませんから、営業活動に必要な情報武装ができました。
それから自分の営業スタイル(真面目型、やんちゃ型などなど….)について、誰のどのような営業スタイルを活用させてもらうか、という営業の仕事における基本スタンスを決めることができたことは、おおきかったと思います。
私は真面目型が好きなのですが、小売店の店主によっては、やんちゃ型も使わせていただきました。
その後、いろいろなバリエーションでコミュニケーションができるようになったのは、営業時代に多くの先輩たちと同行販売で教えていただいた経験のたまものです。
今でも感謝しています。

入社後半年間の仕事は、毎日一人で小売店、いわゆる薬局(スーパーなどの量販店を除く)などの個人のお店を20件以上訪問することでした。
結論から言えば、人生の中で一番苦痛な仕事でした。
しかし、その後の営業活動や人生で意味をもつことになります。

雨の日も、真夏の暑い日も、毎日歩き続けました。
靴底って、こんなに減るもんなんだ、と知りました。
靴底が減ろうとも、小売店の情報をひとつひとつ自分で確認するのです。
競合商品の販売価格は、いくらか、さらにどの代理店を経由して納品されているのか、月間どれくらい販売(売れて)されているのか、自社商品があれば、販売価格と納入先(代理店や特約店)企業名を確認するなどして、可能であれば、自社商品を受注して、帰社後、代理店などへ連絡します。

半年間、この単純な仕事の繰り返しでした。
ところがこの単純な仕事が思わぬ幸運を呼び込みます。
情報は、情報量が少ないうちはさほど意味を持ちませんが、毎日20件以上の小売店などを訪問すれば、一か月間で約400件ほど市場の情報が直接入手できることになります。
しかも、自分の足と目で稼いだ新鮮な情報です。

2か月ほどたったころだったでしょうか。
営業活動するためにもっていた地図をみていたときでした。
ひらめきました。
地図に足で稼いだ情報を記入してみようと。。。
その後営業活動(小売店訪問)を続けていくことで訪問エリアが増えていき、集まる情報量も益々増えていきます。

地図に記入した情報は、まるで陣取り合戦でした。
どのエリアでわが社が強く、反対に競合他社はどのエリアで善戦しているのかが、手に取るようにわかりました。
同時に、エリア別の代理店などの力関係が把握できてきます。
簡単に書けば、自社の有力代理店が強いエリアは、競合他社を凌駕していますが、競合他社をメインとして販売している有力代理店が強いエリアは、わが社の販売が弱いという事実が明白になったのです。

それで簡単に販売戦術を変えられるわけではありませんが、最初の半年間で、こように自分で集めた情報をデータ化して可視化することを覚えてから、がぜん営業活動はおもしろくなってきました。
私が入社した会社、マーケットシェアなどのデータを情報会社から購入して、営業部門に配っていたのですが、そのデータをみていて、私にはどうもピントきませんでした。
私は、自分で入手した情報をもとに、入社した年の9月から担当した代理店の販売戦略に結びつけることにしました。

最初からうまくいきません。
そりゃそうでしょう。
代理店の責任者や販売担当者と中身が濃い情報交換など、代理店を担当してすぐにできるわけがないからです。
やはり、私のもくもく、かつ、こつこつとやっている営業活動が1年もすると担当代理店の責任者や販売担当者に効いてきます。

代理店の責任者に自然と声をかけてもらえるようになるからです。
そこから営業活動のだいご味ははじまります。
私が入社半年で収集した情報や、その後も時間があれば集めていた情報をベースに、新規開拓やこれまで代理店との取引はあったが、納品実績がなかった小売店を攻めるための作戦会議をはじめました。

まず驚かれるのが、情報量の多さと正確性です。
当たり前です。
自分の足と目を使って集めた新鮮な情報ばかりです。
後は、代理店の販売担当と同行したりして販売拡大をするだけです。
また、私の情報をもとに新規に販売店を獲得してくれた場合、インセンティブを出しました。
小売店の販売強化は、量販店との販売と違い、ねばり強い積み重ねが必要になります。

私の性格は、なんでも遊びに変えておもしろくしていけることでしょうか。
何事も、嫌なことから、楽しいことへ転換することができる性格のようで、一旦、遊びにかわると、仕事でもなんでも無我夢中でやっていることが多いようです。
人生では、このように仕事に「はまる」経験をすることが重要だ、と感じています。
このことを教えられるのか、と言えば、むずかしいのかもわかりません。
とくに今の時代のように、情報が多い時代のほうがよりむずかしいように感じています。

私は、自分の体の中に、まるで「苦」から「楽」へ自動的に転換する機能を備えているようなものでしょう。
これは、どうも幼いころの遊びから続いているよう気がします。
だからでしょうか。
どんなにダメそうな経営者や企業に入社しても、自分で仕事をおもしろくしていき、最後は、首になることもありましたが、それすら、おもしろいのです。
かなり問題がある性格かもわかりません。。。

私が「はまる」という経験を伝えるとすれば、幼い時代の遊びの感覚に似ているとしか言い表せません。
仕事をどのようにとらえるかは、人それぞれの感性の違いでもあります。いろいろな知識を詰め込めば詰め込むほど、体の感覚は鈍くなるように、私には思えます。

私は運動神経がよくありませんからゴルフでは、長くプロについて学びました。
そこでわかったことですが、やはり知識ではなく、プロの指導のもとで自分の感覚をつくることが大切だということでした。
ゴルフの本もほとんど読んだことはありませんが、当然ですが、ゴルフ練習場へいけばよいショットがでます。
ただし、実践はかなり違ってきます。
いろいろな制約条件があるからです。
それでも球を打つ感覚は自分で体得していくしかありません。
このような制約条件を克服するために、プロに教わりながら同じ状況から何度も球を打つことで体得してきました。
理論書を読んで理解できる人は、そもそもそのような条件から球を打てる人なのです。
仕事にも同じようなことが言えると、私は考え続けてきました。

このような感覚をもっていたことが、私の人生を豊かにしてくれているようです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?