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【報告レポート】境を越えてフォーラム2023

はじめに

今年度も境を越えてフォーラムを開催することができました。
『介助者だって当事者だ。』3回目でした。

開催にあたり、ご協力くださった皆さま、ご参加くださった皆さま、ご関心を持ってくださった皆さまに感謝申し上げます。

登壇者と会場にいらっしゃった皆さんでの集合写真

概要

  • 日時:2023年6月17日(土)13:00~16:00

  • 会場:秋葉原UDXギャラリー

  • 配信:境を越えてYouTube

  • 会場参加者:50名

  • 配信視聴:当日約50名/アーカイブ再生668回(7/18時点)

  • 主催:NPO法人境を越えて

  • 助成:日本財団

  • 後援:54団体


オープニングトーク

「なぜ介助者を当事者と言うのか」

時に、障がい当事者と介助者との間には軋轢が生じる。それでも辞めない介助者がいる。そういう介助者はまさに当事者と言えるのではないか。また、家族や様々な支援者も、自分ごととして捉えている方は当事者であると思う。

という、岡部の言葉で本フォーラムは開会しました。

小田瞳さんからは「介助者は私の人生の伴走者であり、まさしく私の生活を私と一緒に走っている。ただ、時に体調を心配した介助者と意見が対立することもある」と、印象的なエピソードをお伝えいただきました。

小田「介助者の意見を聞いてるつもりでも自分よがりになってるのかなと思うこともあります。岡部さんどう思いますか?」
岡部「私も介助者からの意見をどう受け止めるかよく迷います。」

小田「このイベントを通して、みんなで悩みを共有することでヒントを見つけ、明日につなげることができる、今日はそういう一日であって欲しい!生きていればいるだけで丸儲け。今日が生きれれば明日も生きれる。そしてずっとずっと生きることができます。」

最初のセッションは若者3人が登場!


Youはどうして介助者に?

重度障がいのある当事者の地域生活を支えるヘルパーの仕事の世界にやってきた3名にご登壇いただき、どのような経緯でこの世界に攻め込んで来たのかを伺いました。

三者三様の入り口と関心の形と出会いがありました!

山下さんは現在、大学で福祉を学びながら、ヘルパーの仕事もしています。福祉の学びを深めるうえでも現場での経験が大事だと感じて即座にヘルパーとして働くことを決めたそうです。介助に入っている増田さんを笑顔にするため、頑張ってます!

琴さんは現在、自立生活センター(CIL)でイベントの企画や介助者としても働かれています。CILは障がいのある人自身が立ち上げた団体です。ご自身が在日朝鮮人として社会で生きるための運動を行ってきた経験があり、障がい者運動にも共感し、関わりたいと思ったそうです。

木佐貫さんは、鹿児島で主にALSの方を対象にした介助をしています。もともとは高齢者施設で働いていたそうですが、事業所を新たに立ち上げるなかでお誘いを受けて重度訪問介護へかかわるようになったそうです。
「重度訪問介護は時間をたくさん使ってとても熱心に介助をしている様子が素晴らしい」と思い、それがヘルパーになったきっかけになったそうです。

琴さん「介助者として当事者と一緒に外出をしているといつも自分が歩いてるはずの街なのに違う視点で見えてくる」

この言葉は介助者と当事者の視点が重なり合うことを象徴的に表しているお話だなと感じました。


今こそ語り合おう、情動制止困難のこと。

情動制止困難とは・・?
ALS(筋萎縮性側索硬化症)は全身の運動神経が徐々に障がいされ、運動まひや呼吸ができなくなる疾患です。ALSにはこのような運動性症状以外に情動制止困難という症状があるといわれています。
当事者の岡部の言葉を借りると、情動制止困難は「自分の感情を留めることができず受け手の気持ちに取り計らいながらの発言ができなくなる。これは相手が絡んできて初めて表出される」ものです。

岡部「この症状は人間関係について多大な影響を与えてしまう場合があるので本当に厄介な症状なのです。ALSの運動障害とは戦っているつもりではないのですが非運動障害の症状とはまさに戦っているという感じです。己の敵は己なのです。」

石井さん「怒りっぽくなったのは病気で性格が変わったからでも相手のことが嫌いなわけでもなく症状なんだと知ってまずは安心したものの、奪われるのは筋肉だけで心までは奪われないと思っていたから愕然とした。」

渡邉さん「石井さんに聞いたら、怒ったり泣いたりしたあとは頑張ってヘルパーさんへ笑うようにしていると伺って、申し訳ないのと、ありがたいなっていう気分でいっぱいになりました。」

石井さんからは、お母さまとのたくさんのエピソードをご紹介いただきました。心を許しているからこそ気持ちをぶつけてしまうことも多いそうです。

「字に起こすと、大人げないことでも、その時にはお互いが本気。母親だから心の内をさらけ出すことができるのだと思う。もちろんそれはすべて安心と感謝が土台にあってこそのことだけど、母には伝わってない気がするし、それを改めて言葉にするのは照れくささがあって改めて言うことはできないかもしれない。喧嘩しない時は涙が出るほど笑いあうこともできるしその流れで”ありがとう”も伝えている。」

情動制止困難のお話を外に発信するにはなかなか勇気がいることだったと思います。お引き受けくださったお二人にお礼を申し上げます。


これって、あるある?介助をめぐる私のモヤモヤ。

増田さんチーム
「今日ははるばる京都から来ました。岡部さんとは命を分かち合うぐらいの仲間だと思っているから今日ここにいられることが生きるエネルギー。」
増田さんは現在、目が見えにくく、今まで使用していたコミュニケーション機器の使用が困難になっているそうです。
「私は今使える表情や合図、脈や血圧全身を駆使しながら伝えています。言語以外のコミュニケーションでまさに全身全霊で伝えています。最初から私のことをコミュニケーションができないと決めつけている人だったりすると私がどんなに頑張って伝えようとしてもそれもないことにされてしまいます。私だって頭の中はパンクしそうなほど言いたいこと伝えたいことでいっぱいです。私を無視しないで欲しいです。でもまあ、モヤモヤするのも生きてるって事かなぁ、とまるっとまとめて皆さんにマイクをお返ししたいと思います。」

朝霧さんチーム
増田さんのお話を受けて、スピーチロックという言葉と印象的なエピソードをお伝えいただきました。
コロナ禍という極めて特殊な状況の中で、介助者から「外に出たらコロナになっちゃうかもしれないよ」「雨の日は風邪ひきやすいですよ」「今日は暑すぎるから夜出かける方がいいんじゃないですか」と、介助者が朝霧さんを思うあまりにこのような言葉をかけることが繰り返しあったそうです。
ただそのせいで、朝霧さんの行動を抑制してしまって(でもそれに気づかずに)いたのです。
無意識に相手を思っているからこそ発してしまう様々な言葉があると思いますが、一歩引いて考えられると良いですね。

朝霧さん「私の意思を聞いてくださいということを大切にしたい。介助者とは節度ある家族っていういいバランスのところにもう1回立ち返っていきたい。」

小田さんチーム
小田さんの大好きな”居酒屋やホラー映画”も同行する介助者が苦手だと当事者である小田さんが遠慮して行けなくなってしまうこともあるそうです。これもまた一つのロック、ですね。
最後には介助者の深田さんから公開暴露モヤモヤ話も飛び出しました!が、モヤモヤする生活も小田さんなりの表現の一つだと思って、淡々と介助を続けていきたい、とお話していました。
当事者と介助者の特別な関係性が見えてくるお話でした。

「当事者としてお話しできる横のつながりが持てたことが嬉しい!」
という声もいただきました。お悩み解決はできなくても単にお話をする機会を継続して持てるように我々も活動していきたいですね。

それでは最後は、毎月「Bar境」を開いているお二人です。


クロージングトーク

登壇者、参加者の皆さんから感想を伺いました。
参加された方からはご夫婦と介助者との関係性にもお悩みがあるという新たな視点でのお話もありました。今後のテーマにもなるかもしれませんね。

御代田「当事者と介助者が並列に並んでいることがスタンダードだと良いなと、、4回目も楽しみに参加していただけたらと思います!ありがとうございました。」


展示「今、三陸から。そして私から。」

「 We haven't lost it all. 」
私たちはすべてを失ったわけじゃない

ALS当事者の佐藤裕美さんがプロデュースの展示企画です。
また、海老原宏美言葉展のデザインをしてくださった林よしえさんに、今回のデザインもしていただきました。

佐藤さんは、ALSを発症される前の東日本大震災でのボランティア活動時にこの言葉に出会ったそうです。

「この春、久しぶりに気仙沼を訪れてこのTシャツに出会い直しました。『We haven't lost it all』(私たちはすべてを失ったわけではない)というTシャツの言葉に再び触れて、(ALSである)私たちの言葉だと思うくらい強く心を動かされました。」

「岡部さんとの、南三陸〜気仙沼の旅の時間と、その中でALS患者の私が感じた思いを皆さんに知っていただきたくて、文章と写真、そして映像という形で展示をすることになりました。」


書籍販売

ぶどう社の書籍(左上)現代書館の書籍(右上)

現代書館の向山さん
フォーラムの第一回に登壇された海老原宏美さんの著書「[増補新装版] まぁ、空気でも吸って――人と社会:人工呼吸器の風がつなぐもの」や新刊本をお持ちいただきました。

ぶどう社の市毛さん
理事長岡部の著書「境を越えてPart1 このまま死ねるか!?」や東大のゼミを基にした本「障害者のリアル×東大生のリアル」などをお持ちいただきました。
「(岡部の本は)3年かけて文字盤を使って、耳で聞いていただいて、構成や編集の作業を何度も何度も時間をかけた著書です。」


おわりに

「介助者と当事者は本当に特別な関係なんだよ」

今回の開催アンケートでこのようなコメントをいただきました。
本フォーラムは境が大切にしている当事者と介助者の関係性を多くの方に知っていただくとともに、実際に現場で暮らし支える当事者と介助者のリアルを取り上げることで、「そうだよね、私だけじゃないんだ」と一緒に笑いながらも、考えてもらえる時間になれば・・・という想いで開催を続けております。
この度ご登壇頂いた皆さま、ご協力いただいた皆さまに心より感謝申し上げます。

また、今回の開催において、クロージングトーク内で一部不適切な発言がありましたことを心よりお詫び申し上げます。
今後も当団体では本フォーラムを継続していけるように、スタッフ登壇者含め発信する側の責任をしっかりと認識し取り組んでいくことを徹底していきます。

当団体は、皆様の声を受け止めながら成長していく団体として活動を続けて参りますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。


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