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やがては社会に戻ってくる「一人の人間」として、受刑者と向き合って。中央大学犯罪学講義 ゲスト講演

2022年7月6日に中央大学の授業「犯罪学」において、NPO法人マザーハウス代表の五十嵐弘志がゲストとして講演しました。

刑務所がどのような場所であるのか、なぜ、出所後の社会復帰が困難なのか、マザーハウスはどのようなことに取り組んでいるのか。このnoteでは、ゲスト講演で五十嵐がお話した内容を要約してお届けします。上にアップしております、YouTubeのダイジェスト動画とあわせてご覧いただければ幸いです。

刑務所はどのような場所か

罪を犯した人が刑務所に行き、その刑罰を受ける、刑期を全うすることは当然のことです。しかし、受刑者であっても人としての権利・尊厳が守られるべきなのは私たちと変わりません。ところが刑務所という場所は、とても、受刑者が人として尊重されるような環境ではないというのが現実です。そのことをまず知ってほしいと思います。
刑務所での生活は、例えるとガラスのケースに24時間身を置くような状況です。自身の心の中まではみられませんが、24時間常に職員あるいは他の受刑者の目があるということです。
そして、刑務作業中などにトイレに行くことや落とし物を拾うことも含め、あらゆることは職員の許可を得なければ動くことができません。すれ違う他の受刑者に挨拶を交わすことも許されません。
「社会復帰」を目指す場所であるはずなのに、戻っていく「社会」とはかけ離れた環境で生活をすることになっています。

五十嵐弘志(NPO法人マザーハウス代表)


出所後の社会からの偏見

出所後に、マザーハウスを立ち上げました。刑務所の中にいた経験から、孤独が最も大きな課題と考え、受刑者との文通ボランティアをはじめました。
しかし、文通という受刑者の外部交通を認めない刑務所がありました。法律上認められているにも関わらずです。
そこで、このことは裁判にも発展しました。なぜ、文通が認められないのか。その理由として、被告(刑務所)側は「五十嵐弘志は犯罪を有する人間だから」と、五十嵐自身の過去の罪を並べたてました。家族やこれまでの支援者も傍聴している中であったため、大変につらい思いをしました。
異議申し立てをしたところ、裁判官は被告側に対して「証人(五十嵐)を侮辱するような質問は謹んでください」と言ってくださいました。
その後、文通の正当性は認められ、現在のマザーハウス文通プロジェクトにつながっています。

この刑務所との裁判の経験から、しばらくは徹底して刑務所や法務省側と争う、おかしいと思うことはハッキリ「おかしい!」と、あらゆる力を尽くして闘う、喧嘩することをしてしまいました。
今では、それは間違っていたと思います。法務省の職員、刑務官もその仕事に一生懸命だと思います。誰もが、再犯につながらない、新たな被害を生まない社会を目指しています。その目標に向かって、何が必要か、重要かを法務省関係者とも対話をしながら活動していく必要があると、今は考えています。

やがては社会に戻ってくる一人の人間として向き合って欲しい

社会に出て、最初は就職活動もしました。自身が服役していたことも隠さずに何十社とまわりましたが、結果はどこもダメでした。その後、役所をまわっても、どこへ行ってもいろいろな場所で「何をやったんですか?」と、過去の犯罪歴を聞かれます。
私は包み隠さず話すことはできますが、この言葉は相手を過去に閉じ込める言葉でもあります。支えてくださる方、社会の方にぜひ見つめて欲しいのは、過去だけでなく、これからどうしたいと考えているのかということを、ぜひ問いかけてあげてほしいです。そのことは当事者も、自身と向き合ってしっかり考えなければなりません。

これまで多くの出所者の支援をしてきましたが、マザーハウスの社会復帰支援は、相手を信頼するからこそ、放っておくことが多いです。なぜなら社会は刑務所と違って自由だからです。マザーハウスは管理する場所ではないからです。管理されることの嫌さは、刑務所にいた自分が、当事者が一番よくわかっています。だからこそ、自由な環境のなかで、自分で考えて、自分で行動することができます。
ですが、これが厳しいと言われます。正直、刑務所に戻ってしまう人もいます。刑務所では、自由はないかもしれませんが、言われるがまま行動していればよかったからです。しかし、社会で生きていくからには、人を頼りながらも自分自身でも考えることが求められます。

前科があることで、差別をするのではなく、一生懸命更生の道を歩む人がいることをぜひ知ってください。今日、話を聞いたことをぜひ家族や友達、いろんな人と共有してください。そうやって社会の人が一緒になって考えてほしいと思います。

ゲスト講演のフルバージョンはこちらからご視聴いただけます。


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マザーハウスでは活動の一環として、「マリアコーヒー」を販売しております。マザーハウス事務所にて、元受刑者が販売に携わっており、収益金は受刑者の更生・社会復帰支援等に使用いたします。
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