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【イベント記録】「脱トップダウン経営 リーダーに求められる5つの役割」を開催

2022年11月7日塩尻市の「えんぱーく」にて、経営者・幹部層向けの無料セミナー 

脱トップダウン経営 リーダーに求められる5つの役割
~メンバーがイキイキと躍動するためのリーダー像を考える~

が開催されました。

セミナー講師は、横浜 F・マリノスのコーチを経て、年代別日本代表の指導でも豊富な実績を持つ福富 信也さん。さまざまなサッカーチームを見る中で培われたのは〈組織論〉/〈チームビルディング〉です。

「外的環境が変わるとゲームが一気に変わるサッカーは、唯一絶対の正解はなく、劇的な変化の連続。強いチームがいかに柔軟に適応してきたのか。その理論は、変化の激しい時代に推進するビジネスにも通用します。」と福富さん。

スポーツチームの〈組織論〉/〈チームビルディング〉を一般企業の内情に落とし込み、ビジネスに生かしていく。組織のあり方、リーダーのあり方について、お話しいただきました。

■セミナー講師紹介:福富 信也
信州大学大学院教育学研究科修了(教育学修士)
横浜 F・マリノスのコーチを経て、 2011 年東京電機大学理工学部に教員として着任。
日本サッカー協会公認指導者 S 級ライセンスで講師を務め、J リーグトップチーム、年代別日本代表の指導でも実績豊富。その他、大企業から中小企業まで幅広い研修実績をもつ。雑誌連載、新聞取材、テレビ出演、ラジオ出演など多数。組織論/チームビルディングを主とした各種事業を展開すべく、2015 年に株式会社ヒューマナジー設立。
著書は「脱・トップダウン思考」(2019)、「チームワークの強化書」(2022)など。

チームでは 1+1<2 になることもある

まず前提として頭に入れておきたいのは​​チームにおいて、1 + 1=2 にはならないということ。「できる人とできる人」が合わさっても、「結果:できない」となることもありえます。反対に、陸上のリレー競技など「タイムが遅い人とタイムが遅い人」が合わさって「結果:優勝」ということも起こりえます。
人と人をどう繋げていくか、その考え方が〈チームビルディング〉です。

優秀なリーダーがいる組織には、リーダーが掲げた正解があることから、意思決定から実行への全体の底上げが期待できます。さらには非常事態においても強烈な効果があるものです。

しかし現代は、戦後とは異なり、正解がない課題を見つけられる者がビジネスをリードしていく時代。将来の予測が困難な「VUCA(ブーカ)時代」では、優秀なリーダーであっても正解を導くことは難しいものです。トップダウンでは、リーダーの限界が組織の限界となってしまいます。

意見の違いから対立 はもったいない

ここで3人1組となってワークを行いました。それぞれ3人共、異なるスライドを見ましたが、実は同じ立体像。同じ立体像に対して、見る角度が異なる立体像のスライドを見た3人が話し合って、全体の立体像を導き出すというものです。(A方面から見ると円、B方面から見ると円、C方面から見ると正方形。さあ、これはそんな立体像? →答え:円柱)

このワークによって、立場が異なれば、異なる情報を持っている可能性があることを、改めて身を持って知ることができます。例えば、監督がA方面からしか見えていない場合。見えている景色に限界があって、偏りがあることを自覚することが大切です。そこでスタッフにも情報を出してもらえば、新しい戦術が生まれるかもしれません。

今回は視点にフォーカスしましたが、それぞれの立場によって視座・視点においても異なります。ビジネスの現場において、意見の違いから対立することもあるかもしれませんが、異なる情報を持つ人材同士が戦い合うことは、もったいないことに気づきます。

心理的安全性のなかで、意見を尊重

次に、スライドに迷路が現れました。すべてのルートの選択に命令が必要となれば、ゴールまでの時間はかかるうえに、1つのルートしか生まれません。しかし「最短を重視」「なるべく迷路上の星を通っていく」などの価値観が共有されれば、いろんなルートが生まれます。それはまるで経由地と目的地が設定されたカーナビのよう。

明確な目標があり、正しい方針や価値観のもとでメンバーが意識して行動を起こせば、メンバーの判断に任せながら仕事を進められます。時にはリーダーの想定を遥かに上回る発想が生まれる可能性も。「給与の半分は、無限資源への期待であるべき。無限の可能性を秘めているのに、給料は一定。リーダーはスタッフに感謝するべきですね。」と福富さん。

しかし、枠が大きすぎると動きにくいこともあるので、ある程度の方針を作る事が必要です。その枠内において、多様性を歓迎します。一方、確固たる指示や命令される環境である方が、生き生きとして働ける人材が多いのも事実。リーダーの見極めが必要です。

また、意見を集める際にワガママとの線引きが難しいものに思えますが「今の議題とは異なったとしても、面白い意見だと受け止めてホワイトボードの隅に書いておく」だけで、スタッフの心の安全性が保たれます。多くのメンバーの意見が出されて重要事項が決まっていくと、意思決定に関わったことによってスタッフの納得感や責任感も生まれます。

チームで勝ち取った、ワールドカップベスト16

マネジメントを説いた、デール・カーネギーによれば「組織成果のうち、リーダーの影響力の及ぶ範囲は1〜2割程度。残りの8〜9割はフォロワーの力に左右される」とのこと。仮にリーダータイプでなくても、優秀なメンバーはチームに欠かせないピース。上下/優劣/主従でなく、リーダーとメンバーは、お互い必要としあう関係であるべきです。

「スタッフにお願いするときにも”〜をさせる”は絶対に言いません。”お願いします”に変えています。”従う”が入る”従業員”も言いませんね。言葉の端々からスタッフに伝わります。」と福富さん。

ここで、サッカーのエピソードも。南アフリカの高地で行われた​​2010年FIFAワールドカップの際、日本代表高地トレーナーとして帯同した杉田正明氏が、岡田武史監督に対して、練習メニューについて勇気と覚悟を持って意見を述べたことにより、結果につながったエピソードです。

その大会の、日本代表の成績はベスト16。監督や選手だけでなくチーム全体で勝ち取ったベスト16です。詳細は福富 信也さんが著した「脱 トップダウン思考 -スポーツから読み解くチームワークの本質」(2019)に記載されていますので、気になった方はお手に取っていただければと思います。

なんだか難しいイメージを持たれがちなチームビルディング。しかし、サッカーチームの例が出されることによって、参加者の皆さんはイメージしやすくなったようで、福富さんのお話に引き込まれて聞いていました。

トップやチームの意識を変えることによって、スタッフの働きやすさや、時代に適応した成長に繋がる可能性があることが分かりました。大きな投資をする前に、ますは脱トップダウンの取り組みを、検討してみるのもいいのかもしれません。


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