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EQ「心の教育」

「EQとIQ」

詰め込み教育が問題にあげられた1970年代、その反動として、子ども達の「心の発達」に関心が集まり始めました。まるで対立するかのように「詰め込み教育」に対して「ゆとり教育」が叫ばれたのです。同時に、偏差値や「IQ」知能指数等にも、数字だけで人(子ども)を判断できるのかと批判的な意見も数多く出ました。

1980年代に入り、大脳科学が教育の流れを変え始めます。すると、知識偏重教育は「左脳教育」という言い方もされるようになり、「右脳教育」のブームがきました。脳科学によると、左脳は考える脳と言われ、主に言語・文字・数学・論理的思考・分析的思考・意識を司るとされています。対して左脳はイメージ脳と言われ、図形・音楽・芸術・直感的思考・総合的思考・無意識を司るとされています。

これでお解りの通り、右脳教育というと「イメージ」や「直感」という言葉が多く出てくる筈です。「ゆとり教育」とイメージや直感が大切という「右脳教育」は、これからの教育を大きく変えるものとして脚光を浴びました。更に、「EQ」は、「IQ」を越えるものとして時同じくして登場したのです。右脳教育と共に、「心を育てる教育」としてその考え方が、時代の求める方向性とあっていたのでしょう。ただ、極端に変化する教育の方向を危惧する声もありました。主にそれは民間教育から上がったのです。

ゆとり教育と右脳教育は、残念な結果となってしまいました。それは、思考力の低下を招き、考えることなく閃いた事を好き勝手に答える子ども達を数多く世に送り出してしまいました。OECDの学力に関する調査で、我が国の学力低下が表面化すると、その反作用からか、民意は、「ゆとり教育」の後に学力中心の教育に大きく舵を切り直したのです。「EQ」の心の教育も、抽象的で心を育むとは、何をどの様に導けば良いのか、具体的な方向を見いだす事はなかなか出来ませんでした。

この一見両極端な教育は、人の成長発達を改めて考え直せば、最も優れた教育指導になる筈です。EQの指導には、五感を鍛える指導が必要だと述べられています。どこかでお聞き覚えのある言葉のフレーズです。感覚教育です。まず心の教育に必要な指導とは何か、心の所在が脳にあることは解っています。心は、様々な総合的な感情を司っています。心を形成する中で、最も重要なのが「ことば」ではないでしょうか。他の動物と違う人間の「ことば」の所有は、動物であるはずの人間を、高い知能を持ったホモサピエンス(知性人・叡智人)と変えました。「ことば」の教育が「心の教育」の基礎となることは間違いのないことです。

この「ことば」に支えられた人間の能力は、ことばや文字を介して左脳の論理的思考や分析が高い次元で可能となり、それらを基本に、直感的な閃きやイメージを引き出していきます。右脳だ左脳だ、EQだIQだと対立させる必要などありません。

以上を考え合わせると、幼児期の学習から、心を育み知性を高める学習の流れが見えてきました。

脳力を高め脳を鍛える教育には、思考力の基礎である言語教育、論理的思考の数教育、指先手先の指導、概念形成、イメージ力を育成する知覚教育は必然の指導でしょう。更に「感覚教育」は現代に生きる子ども達に欠かせない指導となります。感覚の劣化は、身体能力の劣化、人間性の劣化を招くと考えられます。空間認知能力、視覚認知能力にも影響を与える感覚統合は、新たに加わった新時代教育の力強い味方になるはずです。

2012/10/9


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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