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どうなる日本の教育

「子どもを守る」

文部科学省の「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」の結果から、全国で確認されたいじめの件数は7万231件という数字が報告された。最も多い県は愛知県の8523件、最も少ない県が佐賀県の68件であった。愛知と佐賀の125倍となる違いは何を示しているのか。全国平均が1633件からすると、今回問題となった隠蔽体質がまたも疑われる事になる。調査する側も、される側も「いじめ」という先入観は拭いきれないだろう。全ての数値を鵜呑みには出来ない。しかし、教育現場に立つ者として、現実はそれほど甘くはないと肝に銘じておく必要がある。

「いじめ」問題は、このブログで何度も取り上げている。「いじめはいけない事だ!」と声高に叫ぶだけで解消されるような問題ではない。もっと多面的な分析が必要に思う。この問題は、学校側だけに責任を負わせる事では無いだろう。勿論、学校側には、教育機関としての生徒指導、生徒管理に関する責任はある。しかし、学校以外の場で、子ども達の置かれている状況は、必ずしも安定はしていない。

広島で起きた小5女児暴行死は親としていたたまれない事件だ。この女の子、11歳になるまでの大半を児童施設で生活していたという。この事は自体何を意味しているのか。ここ数年、ネグレクト・育児放棄が大きな社会問題となっている。被害を受けた子ども達の精神的打撃がもたらす負の連鎖を見過ごすことはできない。これ自体が「いじめ」にも繋がる要素を含んでいるのではないだろうか。

児童心理、発達心理から、子どもが受ける精神的ダメージは、脳の発達にも大きく影響するという報告がある。後天的発達障害、または「第4の発達障害」とも言われている。子どもの心の発達は、0歳から3歳を基本とし、言語理解と共にその後思春期と呼ばれる時期までに形成されていく。幼児期に受ける心のダメージは、学習障害も引き起こす、更には、社会不安障害や適応障害、躁鬱病などの病的疾患を誘発するとも考えられている。「いじめ」問題を表層的な部分だけで論じた場合、取り返しの付かない事にならないだろうか。これらの認識と対策が重要であって、未来に生きる子ども達の命を救える可能性があるのだ。彼らの声を聞き、自殺にまで追い込まれる彼らの命を守る事ができるはずだ。この点、専門家の方々の協力が必要になる。

一方、若年層の結婚出産を問題視する傾向も見られる。それは離婚率の高さからのものだ。19歳未満の女性の場合の離婚率は60%に達すると言う報告がある。一般的には、20歳前後の夫婦の離婚率が高いという結果となっている。この事は、その後の子育てに大きく影響する。子どもを育てる環境には、衣食住に関する最低限のものが必要になる。しかし、生活不安からくる若い親の精神的ストレスは、子育てを容易に受け入れるだけの精神的余裕を持つことを不可能している。子育て支援は、その後の子どもの精神的発達を考えた場合、いじめ対策の一つの解答ではないだろうか。

物が豊富にあり、手にすることが出来る時代、私達はそれを幸せの一つの形であるという認識を持っていた。それはどうも違っていたようだ。幸せの対義語は不幸しかし、それは、精神的充実がなければただ空しいだけの絵空事だ。最近では、幸せの対義語は怠惰であると言われている。子ども達は、精神的に満たされているのか、十分な愛情を注がれているのか、話し相手はいるのか、相談できる先生や大人はいるのか、社会の歪みはいつの世も弱者に向かって行く。私達、幼児教育、基礎教育を司る者は、こうした社会的背景を分析し、指導にあたることも重要な役割なのだろう。

改めて、この「いじめ」問題を、幼児教育の立場から考え、分析し行動に移していきたいと思う。子ども達を守らなければならない。経済的にも子ども達につけを回している大人達である。真剣に「いじめ」問題に向かって行くことで、実は、私達大人社会の浄化にも繋がるのではないかと思ってしまう。幼児教育は、子ども達に思考力の基本となることばを指導する。ことばは心を形成する為の土台となる。幼児教育は「心の教育」でなければならない。

2012/10/3


著:石川教育研究所 代表 石川 幸夫

石川教育研究所 代表 石川 幸夫

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