歴史と数字で会社を読む/【冬学期】大山敬義ゼミ第2回レポート
2019年1月から開講しているNewsPicksアカデミア冬学期ゼミ。「歴史と数字で会社を読む」ゼミを率いるのは、これまで100件以上のM&Aを主導してきた日本M&Aセンター常務取締役の大山敬義氏。様々な業種で活躍しているメンバーが集まり、多角的な視点から企業を分析する手法を3ヶ月間学んでいきます。そんなゼミの第2回目の講義内容について、ゼミ運営ボランティアスタッフの田辺さんがレポートします。
※ゼミ第1回のレポートはこちら
イノベーションの歴史と未来
企業を分析するうえで、ビジネスモデルを知ることは欠かせません。
では、現在、最も優れたビジネスモデルを有する企業はどこでしょう。
「GAFA」(Google、Apple、Facebook、Amazon)を挙げた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
大山ゼミの第2回目は、「GAFA」の分析を通して、「イノベーションの歴史と未来」をテーマに講義が行われました。
「GAFA」の異端児
早速ですが、GAFAのなかで、異端児はどこの会社でしょう?
色々な考え方があると思いますが、大山ゼミは歴史もテーマにしているため、GAFAの創業年を確認してみましょう。
Google・・・1998年 Facebook・・・2004年
Apple・・・1976年 Amazon・・・1994年
上記の通り、Appleは比較的古い会社であることがわかります。
よって、「GAFA」の異端児はApple。
そこで、ここからはAppleの歴史からイノベーションの構造を見ていきたいと思います。
Appleの歴史
Appleの創業期を牽引したスティーブ・ジョブズ。彼は垂直統合型モデルのビジネスで、品質・デザイン等を拘り抜いたPCを作りました。
垂直統合型モデルとは、ある企業が自社製品やサービスの生産のためのサプライチェーンを作る際に、必要な工程すべてを自社グループで組織することで競争力を高めようとするビジネスモデルを指します。商品の品質を改良するフェーズで有効です。
ジョブズのPC作りに関するセンスには卓越したものがありましたが、1984年、AppleはMacintoshの需要予測を大幅に誤り、創業初の赤字を計上します。そして、その責任を取らされたジョブズはAppleを一度去ることになります。
また、1990-1995年頃にかけては、Dell、Windowsなどの競合が台頭します。競合企業は、水平分業型モデルで比較的安価なPCを生産することに成功しました。これがPC価格競争のはじまりです。
水平分業型モデルとは、複数の企業グループが一体となってサプライチェーンを形成するビジネスモデルを指します。商品の生産コストを抑えるフェーズで有効です。
水平分業型モデルの時代が到来したなか、垂直統合型ビジネスのAppleは競合他社に遅れをとります。
その結果、1997年に、Appleは8,000億円の赤字を計上します。成長の伸びが鈍化したAppleは自社を売却することも検討しました。
ゲームチェンジャー「iPod」
そんなAppleを大きく変えたのが2001年に登場したiPodです。iPodにより、Appleは「GAFA」の仲間入りを果たす第一歩を歩み始めたとも言えるのではないでしょうか。
では、iPodの優れている点は、なんでしょう。
大山さんは、iPodが、楽曲、ソフトウェア、優れたUI/CXの3つを垂直統合し、顧客体験・顧客満足度を最大化したことが画期的であったと指摘します。
ここまでを振り返ると、Appleは、「垂直統合(創業〜)→水平分業(競合企業台頭)→垂直統合(iPod発売)」という時代の流れに直面しています。
「垂直統合→水平分業→垂直統合」
つまり、「歴史は繰り返す」のです。
歴史は繰り返す
ここからは、歴史は繰り返すことを音楽ビジネスを例に挙げて紹介したいと思います。
過去に音楽関連で流行した商品・サービスは以下の通りです。
17世紀:貴族の宮殿での音楽鑑賞(生演奏)
1910年:蓄音機・レコード(有料)
1930年:ラジオ(無料)
1940年:ジュークボックス(少額払い)
1960年:バイナル盤(有料)
1998年:ナップスター(無料)
2001年:iPod・iTunes(少額払い)
2019年:ライブ(有料:生演奏)
お気づきでしょうか。
消費者がお金を支払う金額について、「有料→無料→少額払い」という流れを繰り返しています。
また、音楽の楽しみ方という観点でも、最近流行しているライブは17世紀の歴史を繰り返しています。
このように、新しい商品・サービスは、過去の延長線上から生まれているのです。
今後イノベーションを起こしたいと思う方、興味のある商品・サービスの歴史について、一度思考を巡らせてはいかがでしょうか。
ちなみに、ゼミのなかでは、「洗濯」の分野で歴史が繰り返されているのでは、との問題提起がありました。
具体的には、洗濯板→全自動洗濯機→クリーニング(リアル店舗)→コインランドリー→クリーニング(宅配)という流れです。最近では、コインランドリーも「主婦の時短」で再び人気を集めているようですね。
まさに、多種多様な分野において歴史が繰り返されていると感じました。
最後になりますが、あるゼミ生の方からの声を紹介したいと思います。
第2回目のゼミを受け、「広い視野で周囲を洞察・観察しながら新たなビジネスのタネを探したいと思います!」という熱いメッセージを頂きました。
ゼミが盛り上がってきたことを私自身が実感したところで、第2回目のレポートは以上とさせていただきます。
次回以降のゼミの様子も投稿する予定ですので、ぜひご覧ください。
文:田辺 靖貴
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