見出し画像

人生の転機を支えてくれた、Mr.Childrenの名曲たちと僕の話。

音楽を心の支えにしている人は多いと思うが、人生のターニングポイントに、いつも自分を支えてくれるアーティストがいる。

自分と世代も置かれた状況も何もかもが違うはずなのに、どうしてこうも自分の気持ちを完璧に代弁してくれるんだろうと不思議に思う歌詞がある。

その歌声はまるで自分のためだけに放たれたようで、言葉にできない感情を無条件に抱かされる。

人生を振り返ってみると、いつもいつも大事な場面では、Mr.Childrenの曲が心の支えになってくれた。

今回は人生を支えてくれた5曲と、それぞれの曲が教えてくれたことを自由気ままに綴っていきたい。

1.浪人時代を支えてくれた『HANABI』

ドラマ『コードブルー ドクターヘリ緊急救命』の主題歌としてもお馴染みの大ヒット曲。

この曲がリリースされた当時、僕は浪人生活の折り返し地点を迎えていて「どれくらいの値打ちがあるだろう?」と気だるそうに歌う桜井さんの歌声に、勝手に自分を重ねながら予備校への登下校を毎日繰り返していた。

1年中、楽しいことも好きなことも全てを我慢して、華やかなキャンパスライフを送る友人たちを横目に「人生の遅れ」を取り戻すために、古びた無味無臭の予備校へと通う毎日を送りながらも、その努力が報われる保証などどこにもない。

そんな生活が続くと、当然のようにストレスが溜まり、心が荒んでいくものだが、それを振り払うために遊びに出かける勇気は、当然ながら、ない。

せいぜい、模試の帰りに大須の古着屋に行って、帰りに友人とダベるくらいだ。その生活の中にはサークルも合コンもデートもバイトもレポートも存在しない。

そんな中でも「決して捕まえることのできない花火のような光」のごとき、夢や希望に溢れた未来を信じれるかどうかで、1年後の人生が決まると思ったし、ここで頑張れたら人生が丸ごと変わるんじゃないかと信じ続けた。

自分で自分を信じられなくなったら、誰が自分のことを信じればいいのだろうか。仮に「値打ち」など感じられない自分だとしても「暗いと茶化される」ような自分だとしても、結局は自分で自分を信じ抜くしかない。

それが「世界を愛する」ことに繋がっていくのだと教えてくれた曲だ。

2.やり遂げた達成感の中で聴いた『終わりなき旅』

Mr.Childrenが約1年間に及ぶ活動休止を経てリリースした、復活後第一弾となる98年リリースの名曲。

1年間に及ぶ浪人生活は2月末の高田馬場で終わりを迎えた。

その帰り道に一人で聴いたのが『終わりなき旅』で、確か東京マラソンの影響なんかもあって、道がすごく混んでいた記憶が残っている。(そのせいで、あまり感情移入できず、何度も何度も最初からリピートした)

当時の僕は大学でやりたいこともなく、ましてや行きたい大学なんていうものも特になく、ただ頑張らなきゃいけないものから逃げたくないという一心で、受験勉強に打ち込んでいた。

「難しく考えだすと全てが嫌になって逃げ出したくなる。ただ高ければ高い壁の方が登った時に気持ちがいい」とはよく言ったもので、自分の限界を更新する生き方を選び、ガムシャラに頑張っていけば、自然と自分の基準値は上がっていくものだ。

ただ、そんな「高い壁」を超えた先には、更に「高い壁」が待っている。常に「次の扉」は存在し、一息ついていたら、周りにどんどん追い抜いていかれる気になり焦燥感だけが募っていく。

僕は1年間の受験生活(ロクに勉強もしなかった現役時代も入れれば2年)を終えて、明らかに次の扉を見失っていて、現にそれからの4年間はそこそこ楽しかったとはいえ、完全燃焼できたとは全く思っていない。

ただ、「胸に抱えた混んだ迷い」は「プラスの力」にすればいいだけだし、そもそも生きていく上での正解なんてどこにも存在しない。先が見えなくなった自分を肯定しつつも、確実に奮い立たせてくれればいいのだと思う。

3.先の知れた未来に足掻きながら聴いた『未来』

それから約3年後、就職活動の最終面接会場に早く着きすぎた僕が、都庁近くの新宿中央公園で聴いていたのが、2005年にリリースされた『未来』だ。

ポカリスエットのCMでもお馴染みのこの曲は、爽やかでキャッチーなサビで有名だが、実際にCDを買って聴くと、AメロからBメロにかけて、メロディーラインも歌詞もパブリックイメージと一転して暗く鬱っぽかったのが、当時はとても衝撃的だった。

この曲の主人公である「僕」は、自業自得で世界との壁を作り、生きたくも死にたくもない日々を送り、自らの未来を「先の知れたもの」と定義している。

しかし「女」(何かのメタファーだろう)との出会いによって人生に光が差し込んだ僕は、ラストには「先の知れた未来」を変えてみせると決意し、「誰か」に未来を任せるのではなく、自分で未来を待つ自分を迎えにいこうと心を新たにするのだ。

最終面接の直前に、僕は曲中の「僕」に自分を照らし合わせていたが、変えていこうとした未来はどんなものだったのだろうか。

就職活動で本命にしていた企業からお祈りを受け取ることになり、すっかり自信を失ってしまった自分を変えていこうとしていたのか。あるいは社会のレールの上で生きていく予定調和な未来を変えたかったのか。

長く厳しかった就職活動の中で、自分の理想像すらも次第に霞んでいき、いつの間にか「内定を取ること」だけがゴールになってしまうと、何が自分にとって理想的な未来なのかさえもわからなくなってしまう。

人生は本来自由そのもので、生まれたての僕らの前には果てしない未来が広がっているはずなのに、1年また1年と年を重ねるたびに、次第に視界は狭くなっていく。

「こんなはずじゃなかったのに」という気持ちを抱えながら、それでも未来を信じて生きていくしかない。仮に先の知れた未来だとしても、変えていくのは自分しかいない。そんなことを再認識させてくれた曲だ。

4.最後の出社日。自分らしく歩くための勇気をくれた『足音〜Be Strong』

そんなこんなで僕が選んだのは「先の知れた未来」だった。

世間体の良い地元の大企業への入社を選び、全てに納得できたつもりでいたが、心のどこかで「自分を納得させようとしてるだけじゃないか」という自分への疑心は募る一方だった。

結局、新卒で苦労して入った会社はすぐに辞めることになったが、「人生のセーフティネット」として取り組んでいた副業が軌道に乗っていたこともあり、辞めるという決断自体は特段難しいものではなかった。

その後の僕は、当時副業で取り組んでいたWEBマーケティング業や、そこから派生したコンサルティング業で独立して、そして今に至るわけだが、不安が皆無だったかというとそういうわけでもない。

自信はあったが、人並みな不安もキチンとそこに同居していた。

そんな中で心の支えになったのが、最終出社を終えた夜に、最寄の一駅前で降りてゆっくりと散歩しながら聴いた『足音〜Be Strong』だった。

舗装された道じゃなく、予定調和な未来じゃなく、自分の足で一歩靴紐を結び直しながら歩いていけばいい。失敗だってしたっていい。

大事なことは自分の意思で生きていくことだ。

またこの曲では「自分以外の誰かがいることで歩いていける」と歌われている。疲れて歩けなくても、立ち止まってしがみついていれば、勝手に地球が回って僕らをいい方向に連れていってくれるのだと。

だから、難しく考えずに自分らしく頑張ればいいよね。

「高い壁を登ろう」、「次の扉をノックしよう」と力強く心を奮い立たせてくれたMr.Childrenは、6年の時を経て、また違った角度から大人になった僕の背中を今度はそっと優しく押してくれた。

5.使命感を改めて気づかせてくれた『ヒカリノアトリエ』

それから数年が経ち、多くのクライアントさんにも恵まれるようになった。

僕はコンサルティング業を主なナリワイにし、多くの方の悩みや不安、あるいは迷いと向き合うようになったが、大人になればなるほど、この世は多くの「不安」に包まれていくものだと自覚できるようになった。

そんな時に聴いたのがこの『ヒカリノアトリエ』で、正直に告白すると当時の僕はMr.Childrenから遠ざかっていて、この曲もシングルとしてリリースされた時はほとんど触れていなかったのだ。

ただ、その後にチャランポランタンのライブに誘われることがあり、そのパフォーマンスに強く感銘を受けたこともあり、アコーディオンの小春さんが参加している『ヒカリノアトリエ』を改めて聴いてみたのだが、楽曲の素晴らしさはもちろんのこと、2番の歌詞に大きな衝撃を受けた。

あの桜井さんでさえも、過去は消えずに未来は読めず、不安がつきまとうと歌っている。その事実だけであらゆる悩みや迷いが吹き飛ぶのに十分だったし、そもそもの話として「僕たちは不安を前提にして生きていかなければいけないのではないか」という仮説に確信が持てた。

どれだけ今が楽しくて充実していたとしても、誰もに消えない過去があり、読めない未来がある。だからふとした瞬間に不安に覆われてしまう。

だけど、そんなことを言っていても仕方ないし、結局のところ僕らにできることは今を大切にしていくこと、そしてメタファーとしての虹(それぞれにとってのキラキラした未来)を信じるしかないのだろう。

そして、誰かの不安や悩みに寄り添いながらも、他でもない「今」に貢献していくことが自分のするべきことではないかという使命感を再確認させてもらえたのが、他でもないこの曲だ。

そして「やっぱりMr.Childrenは人生のあらゆる課題を解決してくれる存在だ」と再認識させてくれたのもこの曲だった。

長く生きていくと色々なことがある。

外から見ると順風満帆でも実際はそうでもないかもしれないし、好きなことをやっているつもりが辛くなってしまうことだってあるかもしれない。人生はそんなに単純ではないのだから。

ただ、その複雑さを愛しながらも、自分の手で自分の未来を掴み取るために、今を大切にしていく以外に、僕らができることはそう多くはない。

人生は終わりなき旅だ。

先の知れた未来を信じたくないなら、心の中の虹を信じて歩き続ければいい。

時には灯りの見えない夜に覆われるかもしれないけど、素敵な明日を願ってその手を伸ばすしかない。

その姿を通じて、同じ悩みを抱える誰かにとっての支えになれば、心から本望だ。

この記事が参加している募集

私のイチオシ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?