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ママだから、やる~海外遠征Another story~

年をまたいでしまいましたが、昨年12月に2週間車いすテニス協会からの依頼を受けコーチとしてトルコ遠征へ行ってきました
派遣にあたりご協力いただいた関係者の皆様、そして最後までプロフェッショナルに戦い抜いてくれた小田凱人選手、本当にありがとうございました
また、快く送り出して下さったスクール生の皆様にも感謝申し上げます

この記事ではツアーコーチとしての目線を敢えてずらし、
「母としての挑戦」という視点で、隔離も含め約1ヶ月間、1歳の娘と会えずに過ごした女性指導者の裏側、またママとしての葛藤と挑戦して見えた景色を更新します
結論から言うと、本当に行ってよかったです
出発前の自分とは母親としても指導者としても、視座が大きく変化しました
これまで自分にとって何よりも大切にしてきた'娘の存在'を残して海外遠征に行くというBig challengeをやり切ったからこそ、見えている景色だと思っています
「女性が働くことに壁を感じているママの力になれたら」「スポーツ界における女性リーダーが増えてほしい」そんな思いです

初めに

今、私の一番はいつだって育児
大切な我が子を、私がいなくても素晴らしい人生が送れるよう自立した人間に育てることが、大事な大事な役割だと思っています
(まだ1歳の娘にはtoo muchなほどの愛情を注いでいる時期です笑)

そんな、ママとして生きる自分と
自分自身が8歳から高い意識で歩んできたからこそ頂けた、キャリアのチャンス

そのキャリアの中にあるコンペティティブステージの指導者は、出産後、育児中の人生を考えた時、私にはできないと足を踏み入れてきませんでした
幼少期から育成コーチたちがどれほど自分たち選手のために身を削ってくれていたか、一番近くで見てきたから
また、選手達がどんな思いでテニスに向き合っているのかを人一倍理解していて、その気持ちに中途半端な気持ちで関わるくらいならやらない方がいい、ということもわかっていたからです

なぜ2週間の海外遠征を引き受けたか

そんな私が今回のお話をお引き受けした理由は2つ
「大切な人たちへの恩返し」と「自分への挑戦」 です

まずはオファーをくださった三浦コーチの存在(現車いすテニスナショナルヘッドコーチ)、私の恩師です

突然コーチからお電話をいただいた時、車いすテニスの指導経験もない私になんで!?!?と戸惑いはありましたが、この方なくして私の現役生活はなかったというくらいお世話になり、どうしても恩返しがしたい、今応える時だ!と感じたこと、

コーチから私の家族やスクールへのご配慮を充分いただきつつも「それでも人として信頼できる希に任せたい、女性の指導者だからこそという理由もある」と仰っていただけたことがすごく響きました
「ダメ元なんだけど」の前置きも、私のやる気を掻き立てましたね
さすが恩師、私をよくわかってらっしゃる笑笑

とは言えやっぱり、常に「育児最優先」と言っている自分には、娘を残して海外に行くことは簡単には決断できず、、。(難しい状況こそ燃える自分の性格上、この時点で、あ…私これ引き受けるだろうな、とはどこかで感じていましたが、怖気付いていました)

そんな時、最後の一押しを私のアスリート人生を支え続けてくれた家族が背中を押してくれたんです
「ママが世界に挑戦する姿を見せること、家族みんなで協力して生活し、家族みんなで日本からママの応援することが、よっぽど(娘)の成長に繋がるから。こっちは任せて行ってきなさい!」と偶然その時家に来ていた母が、力強い言葉をくれました
そして「希がやると決めたことなら、全力で協力する」と夫が心強い言葉をくれました

考えてみたら、みんな私の歩んできた人生を応援し続けてくれた人たちで
その人達に恩返しをする方法は、私が挑戦し誰かの何かの力になることだと、覚悟が決まりました

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(現地トルコでの練習日)


それでも不安は消えなくて

ここは本当に曝け出しです、めちゃかっこ悪いですがお許しください笑

オファーをいただいた翌日、「お引き受けさせてください!」と、その未知の仕事内容に不安は抱えつつもお返事をさせていただき、そこから出発まで約1ヶ月あったわけですが、今思い返せばその期間の私の精神状態はすごく不安定でした

時間ができれば娘と離れることへの寂しさ?不安?母親としてこれが最適な決断なのか?
そもそもコンペティティブステージに踏み込むコミットは、この時点ではできていませんでしたし...
もうなんとも整理のし難い、エモーショナルな日々でした

去年自分の入院で3日間娘と離れたのが初めての経験で、それ以外はお腹にいた時からずっと一緒に過ごしてきましたし、無理もなかったと思います

「挑戦する以外選択肢はない、でも行きたくない、でも行きたい、でも寂しい」とよく分からない感情を子供のように泣きながら夫にぶつけた日もありました笑

根はビビりでどうしようもない私
現役の時から同じでした
ちょっと無理した挑戦の先にしか見えない景色があって、その景色を見ようとするのかしないのかという、、、弱虫な私には究極の選択
それをいつも「迷ったら難しい方を選べ」と言い聞かせてやってきましたが
まさか引退してからもこの状況が現れるとは..まじか、、という感じでした笑

スイッチが入った瞬間

結局遠征に行って目の前に集中すべき仕事があれば、不安が消えることもわかっていました(これも現役の時と同じ。試合に入っちゃえば目の前のポイントに集中するだけ。試合の前の緊張状態が一番きつい...)

ですが、ここからが今までに見たことのない世界の始まりで、コンペティティブステージへの指導者スイッチが入る理由に変わったところです

面識のない選手の帯同でしたが、コーチとして行くからには選手の目指す目標に導くことが一番の仕事だと、出発前にZOOMで顔合わせの機会を作り、選手にお時間をいただきました
色んなお話をする中で目標の確認をした際に、「目標は全部優勝」という力強い言葉を、選手本人の口から聞くことができた時から、私の不安定な精神状態は不思議な程綺麗に消え、
娘への声かけも「ママ頑張ってくるからね!」と強気なものに変わっていきました

本当の覚悟が決まったのはこの瞬間だったかもしれません
出発が本当に楽しみになっていったこともよく覚えています

これまで自分のスイッチは自分で入れ、自分の心でしか動かないものと思ってきました
良くも悪くも自分次第という、個人競技ならではの考え方が強かったと思います
だからこそこの心の変化には驚いている自分もいました

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(決勝戦朝のウォーミングアップ)

今見えている世界

結果的に選手は期間中の二大会、全勝優勝を果たしてくれ、これ以上ない成績で遠征を終えたわけですが、
その戦績はもちろんのこと、私にとって選手のその強い気持ちや覚悟に心が動かされ、気持ちが入る経験ができた事や、
遠征後半は眠れないほど緊張し、選手と共に戦えた事、
自分がツアーで悔しい思いをした地で嬉し涙を流せたこと…
全ての経験から、今は新たな領域に足を踏み入れた感覚で、指導者として母親として、本当に大きな成長のきっかけになったと思っています
選手には感謝しかありません

娘との時間を犠牲にしてでも、全力でコーチとしてサポートさせて頂いたこの海外遠征の機会
終わってみれば、それは「犠牲」ではなく、娘を自立した人間に育てるためにも(もちろんそれだけではないです)、宝物と言い切れるほど、素晴らしい経験だったと今は胸を張って言えます

もし、これまで歩んだキャリア全ての経験からサポートできた何かが少しでもあったとすれば、やっぱり女性指導者や女性リーダーが今世界で注目されている理由はよくわかるし
その何かを根拠として言語化できるよう、今後はもっとこのような大きな挑戦と経験を積んでいきたいと思っています

そして、まだまだ男性社会な指導者の世界に、私たち女性が何かより良くなるためのきっかけがあれば最高だなと思います

家庭がある女性がコンペティティブステージの指導者をするには、課題だらけであることは間違いない
それでもなんとかして課題に向き合い、道が切り開けるよう進んでいくと決めました

道がないところに進んで行こうとするのは大好きです笑
でも一人では何もできないので、9月に修了生となったWCA(女性リーダーコーチアカデミー)や現在学び直しをしているAーMAP、そしてママアスリート仲間のネットワークを活かし、お力をお借りしながら少しずつActionに変えてきます

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(表彰式にて)

娘へ

ママが視野を広げることは、あなたの世界も広げることだと信じママはこれからも挑戦します
ときには寂しい思いをさせるかもしれないけれど、長い目で見たとき、私たちの人生に必ずプラスになります

遠征中、ママママとくずることは一度もなく気丈に振る舞っていたこと、
風邪ひとつ引かず元気に過ごしてくれたこと、
テレビ電話中「ママトルコ!テニシュ!」と世界地図を指差し言ってくれたこと、
本当に頼もしくて、いじらしい程愛おしかった

予定していた遠征の2週間に思わぬ隔離期間がプラスして、再会がさらに2週間先延ばしになった頃、夜泣きをするようになったと聞いた時、
テレビ電話を切る前に「やだ」と言った時、
ママの涙腺は崩壊しました笑
これも全部いい思い出だね

1ヶ月ぶりの再会の時、変わらず気丈にいたけれど、抱きしめた瞬間の安心した表情はママの一生の宝物です

これからもずっと一緒に成長して行こう!

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(1ヶ月ぶりの再会)

最後に

大変長くなってしまいましたが、最後にお礼を言わせてください

まずは全てにおいて貴重な体験をさせてくれた小田選手、山口トレーナー、貝吹コーチ、
オファーをくださった三浦コーチ、
私たちがスムーズに動けるよう、日本でサポートしてくださった協会スタッフの皆様、
レッスンをさせていただいておりますスクール生の皆様、
代理を引き受けてくれた後輩、
そして1歳の子のママである私を「行って来い!」と全力サポートしてくれた家族、

一人では何もできない中、たくさんの方のお力をお借りし本当に貴重な体験ができたこと、感謝の一言では足りません
本当に本当にありがとうございました

またこの投稿をするにあたり、本来主役は選手であるべきところを
視点を変えさせていただきましたことお許しください


挑戦するママの力になり、女性活躍のために尽力できるようまだまだ挑戦していきます!

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!

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元プロテニスプレイヤー
藤岡希

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