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パウンドケーキを焼く、休日の午後
「得意なお菓子は?」ともし誰かに聞かれることがあったら、私は迷わずこのケーキの名を出すだろう。
特に派手な訳でもなく、とてつもなく作るのが難しい訳でもない。
けれどもパウンドケーキは、私にとって、最も思い入れのあるお菓子なのである。
昔から、お菓子を焼くことが割と好きな方ではあった。
お菓子作りが楽しいと思わせてくれたのは、多分一緒にパンやピザを作ってくれたピアノの先生のお陰だ。
その影響で中学では料理部に入ったが、中学を卒業して、お菓子とは縁遠い生活をしていた私にとって、お菓子作りを趣味とすることなど考えもしなかった。
きっかけは何だったかもはや良く覚えていないが、たまたま製菓材料売り場の前を通った際に、「パウンドケーキを食べたい」と家族が言い出したことだったような気がする。
そこでパウンド型を買って、初めて作ったのは何故かタルトタタン。
たしかリンゴが家に沢山あって、消費のためにレシピを調べて作ったのだと思う。
それからふとフルーツケーキを作ろうと思って、レシピを調べて、ラム漬けのフルーツと材料を買って。
気がついたら、美味しいフルーツケーキ作りを目指して、がむしゃらに同じケーキばかり焼くようになっていた。
お菓子作りの経験があるとは言え、パウンドケーキを完璧に焼くことは、それなりにハードルが高いものだった。
たとえばレシピに「卵とバターを室温に戻す」と書いてあっても、どれくらいの時間放置すれば室温になるのか良く分からなかったし、「卵とバターが分離しないようにする」とあっても、そもそも分離の状態が分からなかった。
そこから色々な動画やレシピサイトを覗いてみたり、自分なりにレシピを改良してみたりして。
気がつけばパウンドケーキは、私の最も得意なお菓子になっていた。
特にラム酒をこれでもかと効かせたフルーツケーキは、周囲の人にリクエストされるまでになった。
でも、まだ完璧に満足のいくようには作れず、なんだかモヤモヤが残っている。
それとお菓子作りはそれなりに体力と気力を消耗するので、心と身体にある程度の余裕がある時しか作れなくて。
気付けば、ケーキを焼いたのは、半年ぶりくらいだ。
でもどんなに作るのが大変でも、バターと卵がフワフワになったときは達成感があるし、粉を混ぜた生地に艶が出て、輝きはじめれば、思わずにこりと微笑んでしまう。
焼き上がったらこれでもかとラム酒塗って、ぴっちりとラップを巻いて。
1週間後、お酒がまろやかになった頃が、食べ頃の合図だ。
今日焼いたのも、2本分のフルーツケーキ。
食べ頃を待って、1本は綺麗にカットして、1つずつラッピングしてお世話になった方の元へ。
ひとくち食べただけで、生地のやさしさを感じ、フルーツの甘みとラムの風味がふわりと鼻に抜ける。そんな頃が、今から待ち遠しい。
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