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分身ロボットOriHime。できないを“できる“に変える希望の星。

OriHimeというロボットのことを知っていますか?
最近、様々なメディアでその活躍ぶりが報じられている分身ロボットのことです。
都内にオープン(期間限定)したカフェで、OriHimeのビックサイズ版ともいえる「OriHime-D」が定員となって接客をこなす姿が多くのマスコミに取り上げられて話題となったり、OriHimeを操作する“パイロット”たちが接客や受付業務で働く様子をSNSにアップするなど、多方面から注目が集まっています。
外に一歩も出なくても、遠く離れた地で自分の分身が立派にお勤めをはたしてくれる。そんな時代が来ることを予測はしていたものの、自分には遠い話だと思っている人は多いはず。
でも、OriHimeは、思っているよりもずっと身近な存在になりつつあるようです。

わたしには、OriHimeパイロット(操縦者)の友人がいます。
彼女はALSの症状が進行し、今は自力で動くことはできません。それでもOriHimeで働いたり、OriHimeのPR活動に参加したり、行きたかった場所、参加したかった催しに出席して、なかなかアクティブな生活を送っています。
テクノロジーの進化は、友人のように一人で外出するのが困難な人たちにも、新しいスタイルでハツラツと生きるための提案をしてくれています。
体が不自由になっても自分らしく生きたいと思うのは、病気と闘うわたしたちの切実な心の声です。
そのためには、選択肢が多いほうがいい。OriHimeのことをもっと多くの人に知ってもらい、そして、それをきっかけにして、生きる喜びをもつ人が増えてほしい。そんな思いでこの記事を書いています

唯一無二の親友の存在と孤独の解消

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オリィ研究所の代表であり、OriHime開発者である吉藤健太朗さんことオリィさん。お会いしてお話を伺えることになりました。
当日、オリィさんはメディアで拝見していたとおり、特注の黒の白衣を身に纏い、全身ブラックのい出立ちです。
意志の強さ、防御、反骨…黒い服が人に与える印象がプラスされ、オリィさんの個性がより際立って感じられます。
さすがというほどスマートにメディア対応をされているようですが…。

オリィ 「いえ、まったく得意な分野ではなく、向いているとも思っていません。メディアに出して広めていく広報計画は立てていましたが、わたしがメディアに出ていくということではなく、3年前に亡くなってしまった親友の番田雄太が表に出ていく予定だったんです。彼は純粋で思いをズバッと臆せずに言える人でした。メディア受けもするし、広報を任せていく予定だったんです」

亡くなった番田さんは、オリィさんの大切な親友です。
オリィさんご自身が番田さんのことを詳しく発信しているので、詳細は割愛させていただきますが、そこに書かれた番田さんの強烈な個性と心の声には圧倒されるものがありました。
彼の言葉には、生きることへの強い要求と希望と切実な願いが込められていて、読むたびに熱いものが込み上げてきます。
『生かされるより、生きたい』
心に残り、忘れられない言葉です。

番田さんをはじめ、たくさんの友や仲間との出会いがあり、協力者も増えている今、オリィさんの孤独は解消できたのでしょうか?
ストレートな質問に、迷いのないストレートな答えが返ってきました。
「孤独は解消できました」
孤独に苦しむたくさんの人が、オリィさんの後に続きますように。


これから先のこと、新たな構想。

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OriHimeのことはネット世代から広がりを見せてはいるものの、知らない人、自分には関係ないという人、どうやって使うのかわからないという人がまだたくさんいます。
今後、さらに広めていくための方法は?
オリィ 「現在、ALSの患者さんや協力してくれる人たちが、OriHimeの開発や情報発信などを積極的にサポートしてくれています。皆さん、自分のがんばりや挑戦している姿を次の世代に見せて、伝えていきたいという思いがあるんです。
その思いをどうやって伝えていくか、伝え方が大切だと思っています。
がんばっている人をただ露出しただけで、思いを伝えていくことができるのかというとそうではないと思うのです。
例えば、いろんなことに挑戦して頑張っているタレントの乙武さんや船後議員のことを見て、『自分にもできる』と思う人がどれだけいるか。誰もが同じようにできるかというとそうはいかない。特殊すぎたり、飛び抜けたりすると、遠い存在、自分には縁のない話といったとらえ方をする人が多いはずです。
僕も、わたしもやってみたいな、できるかも。OriHimeはそんな身近な存在なんです。だからこれからも、実際にOriHimeを使って働いたり、楽しんだりしている方たちの挑戦する姿を見てもらい、思いを伝えて、広げていきたいと思っています」

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OriHimeは今後も進化していきますか?
オリィ 
「OriHimeは、さらに使いやすく改良改善を行っていくつもりです。今、脳波の実験にも取り組んでいるし、今後もっと進化していくことになります。
今、日本のALS患者のうち、呼吸器を使って生きる人が約3割と言われています。重度訪問介護制度や在宅支援など、寝たきりになった場合の生活支援制度があっても、呼吸器をつけない選択のほうが多いのが現状です。
できないことが多くなるとネガティブな感情が湧いてきますよね。動けなくなり他人のサポートが必要となることへの辛さや怖さ、死にたいという思いに心が支配されてしまう。
でも、体を動かせなくなっても、OriHimeを使って稼ぐことができる、家族を喜ばせることができる、社会の中で役に立てる、そうなれば、ネガティブな気持ちに変化が出てくると思います。
自分が不登校だった経験から言えることは、生きることがマイノリティーな社会においては死なない理由が必要だということです」

“死なない理由を考える“ これには思わず苦笑い。
わたしも辛くなると“死なない理由“を探して、自分を安心させています。
だから、理由を探すだけでなく、自分で作れるようにしたいと思うのです。
強力な助っ人になってくれそうな進化するOriHimeと出会えるのが、今から待ち遠しいです。

これから先の開発について、計画はありますか?
オリィ 「今から7、8年前には、分身ロボットを使って自分の介護を自分でできる時代がくるという構想を発信したので、すでに一般活用されている分身ロボットOriHime、OriHimeアイも、その頃には開発計画がありました。
そんなふうに、いつもかなり先を見て、考え、行動しているので、開発予定は常にたくさんある状態です。
脳波に関するものなど、新しい構想も多く、一つのアイデアから枝葉が伸びて、また違った開発へと発展することもあると思うので、とにかくたくさんありますね。
どのくらいかというと……10数くらいかな。構想としてはそれぐらいあります。どれもが同時進行ではなく、どれから走らせるか検討しながら進めていく予定です」


友と仲間との支えあい。

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会社経営者、開発者、2つの役割りをこなす秘訣は?
オリィ 「私の構想の基本にあるのは孤独の解消です。会社経営がしたいわけではなく、大学で研究したいと思っているわけでもない。孤独の解消が自分の唯一のテーマなので、それに沿ったこと、必要なことは何でもやっていくという考えです。
ただ、だからといってうまくソツなくこなせているかというと、それはないですね。大雑把な人間なので、仲間がだいぶ助けてくれています。
間違いなく、自分は一日中研究していたいタイプなので、経営者としては十分じゃない点が多いと思います。自分がまかなえていないところは、他の人に任せたり、サポートしてもらうことでうまくいくようになる。ブレーンの存在は大きいです」

OriHimeの開発のベースにあるのは、出会った人への感謝の気持ち?
オリィ 「感謝という感じではないんです。友達になれるかどうかということが自分にとっては大切なので、友人のことを思う気持ちですね。
例えば、わたしにはALS患者の友人が何人もいます。皆さんとは年齢も違えば、仕事も違う。それでもOriHimeの開発が縁で出会い、友人として付き合っています。
彼らからいろいろな意見をもらってOriHimeを作ったのですが、お金儲けがしたいとか、難病をなくすとか、そういうことが目的だったわけではなく、友人のためになることがしたい、という単純な理由です。友達が困っていたら、何とかしたいという気になりますよね。少しでも困ったことが解消できるように考え、行動を起こして、助けようとする。OriHimeの開発のベースにあるのは、そんなふうにいたってシンプルな気持ちなんです」

寝たきりでも働ける!アバターギルドとは?

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OriHimeを使った就労支援、寝たきりになっても働ける!!

オリィ 「4年ぐらい前だったかな、ALS患者の高野さん(※1)から『この先、病気が進行して仕事を失ったらOriHimeを借りる費用を家族に払ってもらうことになるのは心苦しい。仕事ができるのであれば、使用料を払っていきたいと思っている』と言われました。
何もしないまま生きるというこのは、すごく辛いことで、何かの役に立ったり、社会の中で存在するということが必要だということに気付きました。
高野さんの言葉がきっかけで、どうやったら働くことができるのか?について親友の番田と一緒にいろいろ考えていて、2018年にOriHime caféを開いたんです。それが就労支援のスタートになります」

アバターギルドがそうやって始まったのですね。OriHimeを使って社会参加を望む人と企業とのマッチングのようなイメージでしょうか?
オリィ 
「ただのマッチングではありません。企業の採用を担当する方が分身ロボットカフェに来て、そこで実際に働いている様子をみてその人の人となりを知ることができるという考えがベースにあります。
難病の人は、どうしても人と接することが少なくなってしまうので、Caféでいろいろ話をして、友達のように理解をしあえる関係ができてほしいとも思います。
アバターギルドという就労支援のサポートチームを作り、相談にのったり、就業にあたってのサポートを行っていますので、興味のある方はエントリーしてみてください」

OriHimeは分身ロボットです。姿は違うけれど本人そのもの、分身という発想にオリィさんのこだわりの深さを感じます。OriHimeと話をしていると、段々とパイロットの存在がリアルになり、感情も伝わってきます。無機質なロボットなのに、人の温もりが充分感じられる。
分身という発想、本当に素晴らしいです。


※1 高野さん記事↓


新たな発想源は遊びから。「オリイ自由研究部」

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最近楽しんだことは?趣味など楽しみは?エネルギーチャージの方法を教えてください。
オリィ 「
音楽?興味ないですね。食事も同じです。
遊ぶのは好きですよ。最近外出を控えているから、ネット上で遊んでいます。
この前、オリパラとEスポーツを合体させたゲームをオンラインとリアルの両方でやりました。もともと、これらが別々であるのがおかしいというか、一緒になったほうがいいのにと思っていたので、オンラインボッチャ(※2)大会をやって一緒に遊べるようにしたんです。車椅子の人、健常者、オンラインの人、プロのパラリンピックの選手も参加して、けっこう盛り上がりました。
この日の参加者は『オリイの自由研究所部』のメンバーです。こうした遊びに参加したり、いろんなアイデア出しをしたり、主にネット上で様々なことをテーマにして意見交換したりする場を設けたら、年齢や職業など、様々な個性のメンバーが集まりました。
ここで新しい取り組みや発想、アイデアを得たり、気づくことが多いんです。
この研究部では『できないことには価値がある』がテーマです。
できないことについて考えていこう、という集まり。
月1000円の会費制にしていて、集まった会費をエンジニアに渡して、新しい開発を行う資金に回しています。
誰でも入れるし、様々な人との出会いがあると思うので、興味がある人はぜひ参加してみてください

今後、常設の分身ロボットカフェをオープンさせる計画があるということなので、とても楽しみです。
寝たきりのまま生かされているだけの人がいる。そんな時代は早々に終わり、様々なスタイルで自分らしく生きることができる世の中になるように、これからもOriHimeの活躍をはじめ、オリィさんの開発を応援させていただきます。

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※2 ボッチャについて




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