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時は来たのに、サビが歌えない。

2月になると、必ず口ずさんでしまう歌がある。

* * *

小学生のころ、クレヨン王国シリーズ(講談社・青い鳥文庫より出版)が大好きだった私は、新刊が出るたびに父にお願いして買ってもらっていた。
こちらのシリーズは色とりどりの世界が目に浮かぶ、美しい作品が多い。
”超特急24色ゆめ列車”も例外ではなく、同級生の林くんと24色のクレヨンを使って絵を描くシーンが印象深く残っている。

主人公は大人になってから幻のその列車に乗ることになるのだが、席に座るには条件がある。その車両にいる者が歌った歌の世界の絵を描き、合格しなければならないのだ。同時に乗り込んだ愉快な仲間たちの失敗により全然座ることができず、一行はどんどんうしろの車両にいざなわれる。
12月にまつわる歌から始まり、2月の車両。
そこで車両にいるウグイスが選んだのが、"早春賦(そうしゅんふ)"だ。

「むずかしい歌詞だけど、2月の歌だから」

たしか、そんなようなことを言ってから歌いだす。
それ以来2月になるとこのエピソードを思い出し、早春賦を歌ってしまうのだった。

春は名のみの 風の寒さや
谷のうぐいす 歌は思えど
時にあらずと 声もたてず
時にあらずと 声もたてず

歌の中で、ウグイスは立春により
「春来たんじゃね?歌っちゃおかな!」
と浮かれるのだが、外の気温にふれて
「さっむ!まだだ、まだその時じゃない」と思いなおす。
そんなわけで、私の中ではウグイスが鳴くと
「公式に春認定してよい!」ということになっている。

* * *

今年も2月をこえ3月になり、ウグイスが鳴きはじめた。
「ホー」と聞こえるのでうれしくなり、耳を澄ます。

「ホキョ、ホ…」


…下手すぎない?
いまだかつて、こんなに歌が下手なウグイスに出会ったことがない。

* * *


よく表記される「ホーホケキョ!」が正しい音程だとしたら
Aメロ「ホー」の音を取ると、
サビ「ホケキョ!」の音が取れない。


Aメロ→サビと通したあと、小声で
「…ホケキョ。」とサビの練習をしているっぽいのが涙ぐましい。
もう一度チャレンジ!


「ホー…!ホキョホキョ!」


!!
力が入りすぎて噛んだ!
再度「…ホケキョ。」
どうしてもサビが難しいようだ。


そういうこと、あるよね。
アレクサンドロスのワタリドリとかまさにそうで、
「最初はなんとなく乗り切れるかと思ったら、サビで爆上げされて瀕死」的なね。
サビ前半を息たえだえながらしのいだとしても、サビ後半の

「ワターリ ド ーリのように」

こので致命傷を負い、屍となった者を複数知っている。

誰も聴いてない、気にも留めないというワタリドリとは違い、ウグイスは女性に向かってアプローチしないといけない。
調べたところ、シーズンを過ぎても鳴いているウグイスは、女性に相手にされず子孫を残せていないヤツと考えられるらしい。
心が痛い。
がんばれウグイス!
下手な歌を聞かれることに臆せず、練習している君はえらいぞ!


このへたっぴウグイスの歌が上達するころにはきっと、美しい春の盛りを皆で楽しめると信じて。

お読みいただきありがとうございました!
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