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ボイスドラマ『残響スパークル』第1話「残り火に真綿を」シナリオ公開!

こんにちは! ノベルボch公式noteです。
ボイスドラマ『残響スパークル』はお楽しみいただけましたか? Voicyにてアンコール放送もしていますので、まだの方はぜひノベルボchをフォローいただき、ご視聴くださいね。

この記事から全7回にわたり、『残響スパークル』のシナリオ完全版を無料で公開します。この記事では第1話「残り火に真綿を」を全文公開しています。

実際のボイスドラマを聴きながら読み込んでいただくと、声優の演技力に圧倒され、効果音や楽曲の効果に感動していただけるはずです。また、ボイスドラマ制作をしたいと考えている皆様の一助となれば幸いです。

シナリオ公開にあたって

・このシナリオは、収録時に声優が入れたアドリブや、編集時にディレクターが演出として加えた効果音を反映した『シナリオ完全版』です。実際の収録時や編集時に使用したシナリオとは一部仕様が異なります。

・行頭にある番号は、収録時や編集時に制作メンバー間で意思疎通をしやすくするための管理番号です。なお、シナリオ番号が一部飛んでいるのは、秒数を調整するために収録直前にカットしたことによるものです。

【著作権について】
この記事にて公開しているテキスト全文について、著作権は水島なぎ( @nagi_kotobano )に属します。一部または全部の無断転載、および許可のない二次利用(音声コンテンツ化、映像化を含む)はご遠慮ください。


『残響スパークル』第1話「残り火に真綿を」ボイスドラマはこちらから


『残響スパークル』第1話「残り火に真綿を」シナリオ全文

シナリオ公開用第1話ヘッダー

0(タイトルコール)
ノベルボchボイスドラマ 残響スパークル 
第1話 残り火に真綿を


1
燃え尽きたと思っても、案外、火種は燃え残っているものだ。
そんなところに真綿をねじ込んだら、どうなる?
……これは、残響の中でくすぶっていた魂が再び燃え上がるまでのストーリー。

※SE 蝉の鳴き声 フェードイン

2
まぶたが重い。今、何時だろう。腹時計によれば、昼は過ぎたと思うけど。

4
遼「うー……いい加減起きて、飯でも食うか……」

※SE スマホ通知音

6
遼「兄貴からだ。……今日の14時だぞ、すっぽかすなよ……か。ふわぁ、めんどくせー……」

7
世の中の兄という存在は、弟を3本目の手くらいにしか思っていないのだろう。昔からそうだ、ドラマを録画しておけだの、コンビニでアイス買ってこいだの……

8
遼「りょ・う・か・い。……と。はぁ~……なんで俺がこんなこと……」

10
今日は、兄の友人がやっているバンドの練習風景を撮影しにいく。SNSに配信するらしくて、その撮影をしてほしいんだとか。

11
場所は、たしか「ノーネーム」とかいうライブハウスだったはずだ。オーナーの「ゲンさん」という人を訪ねろ、といわれている。

12
遼「兄貴が頼まれたんだから、自分でやりゃぁいいのに。『俺はデートだし』とか、ふざけんなっつーの! ……先月彼女にふられた俺へのあてつけかよ」

※場面転換
※SE 町の喧騒 フェードイン

14
ぶっちゃけ、兄貴がうらやましい。でかい企業に就職して、趣味はカメラで、美人の彼女がいて。兄貴が前途洋々だとしたら、俺は前途多難な人生だ。大学も滑り止めだし、去年は単位もいくつか落としたし、彼女にもふられたし。

15
何もかもうまく行かない。
街にはこんなに人がいて、熱気があふれているのに、俺には何もない。やりたいことなんかない。

※SE 足音
※SE フェードアウト

16
遼「AAA(ノーネーム)……ここか。Aが3つで、ノーネームって読むのか」

※SE 階段を下りる

18
薄暗い階段を下りると、いろんなポスターを貼っては剥がし、また上から貼り付けたような汚い扉を見つけた。
……開いてる? おそるおそる通り抜け、薄暗い店内へと入っていくと、もう一枚、頑丈そうな扉を見つけた。

19
遼「んっ……おっも! 開かねえじゃん。場所、間違えたか? ……合ってるよな?」

※SE 扉が開く音(重厚な、防音扉のイメージ)

21
ゲン「おう。鈴野の弟か? 鍵はかかってねぇよ」

22
遼「あ、ども。お邪魔します……」

※SE 扉が閉まる音

27
ドアを開けてくれたおっさんが、オーナーの「ゲンさん」なのだろう。不愛想だし、なんだか機嫌が悪そうだ。
ステージには、すでにバンドメンバーたちがスタンバイしている。

28(kasumi特別出演)
「おー、来た来た」「今日はありがとな」「兄貴はデート?」「はは、あいつらしいな」など

※本編ではkasumiメンバーのアドリブをお楽しみいただけます

29
遼「あっ、ども……鈴野遼です。兄貴の代わりで、その」

32
ゲン「カメラは? ……ねぇのかよ。お前の兄貴が持ってくるはずだったんだけどな。しょうがねーから、このスマホで撮れ。気楽に撮りゃあいい。今日はライブじゃねぇしな」

33
遼「あ、はぁ……」

35
視線と息がぴたりと合った。
次の瞬間、音の塊が静寂をぶち破る。

※BGM 挿入曲『Re:NEW』 カットイン

36
鈴野の心の声(うおっ……なんっだこれ……生音って、こんなに分厚いのかよ!?)

※BGM ボリュームダウン

37
鼓膜の中で火花が弾ける。
強制的に鼓動が早くなる。
急かされる。
いや、置いていかれる。

39
遼の心の声(やべっ! 写真撮らなきゃ! どうすりゃ画面に収まるんだこんなもん……!)

※BGM フェードアウト

40
曲が終わると、スマホを握りしめていた手がビリビリと痺れているのに気がついた。
それだけ空気が震えていたということだろうか。

45
ゲン「お疲れさん。どうだった?」

46
遼「え? いや、なんか……スゲーっすね。音がこう、ぐわーって。俺、ライブとか行ったことないんすけど、なんかすごかったッス」

47
ゲン「ライブに行ったことないのか? 普段なにしてる」

48
遼「えーと……授業出て、ときどきバイトして、休みは映画見たり……」

49
ゲン「お前、大学生だったか?」

50
遼「はい。2年ッス」

51
ゲン「いいねぇ、若いってのは」

52
遼「別に……やりたいこととかないんで」

54
ゲン「死んだ魚みてぇな目ぇしやがって」

55
その言葉にムカッとしたが、反論するだけの根性もない。
ああそうだ、どうせ俺は死んでるよ。2年前のあの日、俺は死んだんだ……

56
ゲン「よしわかった。遼、お前、ここで働け」

57
遼「……は?」

58
ゲン「週末に、さっきのバンドのライブがあんだよ。手が足りてねぇんだ」

60
ゲン「単発でいい。設営から撤収まで。日給で即日払い、飯も出す。どうだ」

61
遼「えぇ!? まあ、金が出るなら……」

62
俺は承諾した。日付や集合時間をメモしていると、ゲンさんが背中を叩いてきた。

※SE 背中を叩く音

63
遼「いっ……」

64
ゲン「頼むぞ」

※BGM ED『ナミダと、涙。』 カットイン

65
この日、この時、俺はまだ気づいていなかった。
このおっさんが、俺の中にくすぶっていた残り火に真綿をねじ込んだってことに。

※BGM ED フェードアウト

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