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ボイスドラマ『残響スパークル』第2話「爪に火をともして」シナリオ公開!

こんにちは! ノベルボch公式noteです。
ボイスドラマ『残響スパークル』はお楽しみいただけましたか? Voicyにてアンコール放送もしていますので、まだの方はぜひノベルボchをフォローいただき、ご視聴くださいね。

全7回にわたって、『残響スパークル』のシナリオ完全版を無料で公開します。この記事では第2話「爪に火をともして」を全文公開しています。

実際のボイスドラマを聴きながら読み込んでいただくと、声優の演技力に圧倒され、効果音や楽曲の効果に感動していただけるはずです。また、ボイスドラマ制作をしたいと考えている皆様の一助となれば幸いです。

シナリオ公開にあたって

・このシナリオは、収録時に声優が入れたアドリブや、編集時にディレクターが演出として加えた効果音を反映した『シナリオ完全版』です。実際の収録時や編集時に使用したシナリオとは一部仕様が異なります。

・行頭にある番号は、収録時や編集時に制作メンバー間で意思疎通をしやすくするための管理番号です。なお、シナリオ番号が一部飛んでいるのは、秒数を調整するために収録直前にカットしたことによるものです。

【著作権について】
この記事にて公開しているテキスト全文について、著作権は水島なぎ( @nagi_kotobano )に属します。一部または全部の無断転載、および許可のない二次利用(音声コンテンツ化、映像化を含む)はご遠慮ください。


『残響スパークル』第2話「爪に火をともして」ボイスドラマはこちらから


『残響スパークル』第2話「爪に火をともして」シナリオ全文

シナリオ公開用第2話ヘッダー

0(タイトルコール)
ノベルボchボイスドラマ 残響スパークル 
第2話 爪に火をともして

※SE 水を飲む音

2
遼「あのおっさん、なんで俺を雇ったんだ? 死んだ魚の目~とか言ってたくせに」

3
なんだかんだ心の中で文句はつけてみたものの……実は少しだけわくわくしている。

4
音の塊が静寂をぶち破り、鼓膜の中で火花が弾ける。強制的に鼓動が早まるあの感覚を、もう一度味わえるなら……

5
遼「……あ。ライブハウスのバイトって、何着ていきゃあいいんだ?」

※場面転換
※SE ライブハウスの準備中みたいな雰囲気

6
ライブハウスAAA(ノーネーム)は、にわかに活気づいていた。この前はバンドメンバーとゲンさんだけだったが、今日は数人のスタッフがいる。スピーカーの向きを調整する人、ステージ上にテープのようなものを貼る人、脚立にのぼって照明をいじる人。

8
ゲン「遅ぇぞ、遼」

9
遼「え……五時集合って言ったじゃないスか」

10
ゲン「ついてこい」

12
ゲン「お前、居酒屋でバイトしたことは?」

13
遼「あー……ります、けど。半年だけ」

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ゲン「じゃあいけるだろ。カウンター入れ。ドリンクの種類覚えろ」

16
ゲン「あとでもう1人、スタッフが来る。わかんねーことはそいつに聞け」

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ゲン「ああそうそう、これ着とけ」

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手渡されたのは、黒無地に大きく「AAA STAFF(ノーネーム スタッフ)」と書かれたTシャツだった。着替えると、ようやく俺の居場所ができたような気がした。

※間
※SE ライブ前のざわめき、拍手、歓声など

20
客の入りは上々だ。メンバーが一人、また一人と自分のポジションに立つ。楽器の微調整をしていると、観客がジリジリとステージに近づいて圧をかけはじめた。
これは……あれだ。線香花火に点火して、じっと待っているような気分だ。

※BGM 挿入曲『クロニクルクロニクル』 カットイン

21
火花だ。
いや、爆発だ!

22
遼の心の声(マジかよ! 前と全っ然ちげぇじゃん!!)

※BGM ボリュームダウン

23
音の質量が、前とは段違いだ。観客の絶叫のせい?
分厚い空気に、ぶん殴られてる。腹の中からビリビリ震えて、鳥肌がたつ。

25
ゲン「……おい、遼。水くれ。遼! 水!!」

26
遼「あっ、はい」

※SE 水を飲む音

28
ゲン「あっちーな、おい。冷房死んだか?」

29
遼「いや、ちゃんときいてますよ」

30
ゲン「……どうだ、おい。これがライブってやつだ」

31
遼「そっすね。もう、なんかほんと、やべーっす!」

32
ゲン「ははっ! 語彙力死んでんなぁ、お前」

33
ゲンさんが笑うのを初めて見た。やたら上機嫌なのは、きっとこの人の鼓膜にも火花が弾けているからだろう。

※BGM フェードアウト

※場面転換
※SE 居酒屋のざわめき

34(kasumi特別出演)
「かんぱーい!!」

※本編ではkasumiメンバーのアドリブをお楽しみいただけます

※SE 乾杯の音

35
メシが出る、という話だったけど、まさか打ち上げに同席する羽目になるとは思いもしなかった。しかもチェーンの居酒屋だなんて。

36
ゲン「遼、お前、酒は?」

37
遼「酒よりメシのがありがたいっす。でも……なんか、打ち上げしょぼいっすね。すげー盛り上がってたし、人も入ってたのに。もっと豪華にいきましょうよ」

38
ゲン「馬鹿か。バンドやってくのは厳しいんだよ」

※SE 煙草を吸う

39
ゲン「ホールレンタルで1日10万。2000円のチケットで、50枚売れればペイするな」

40
遼「でも、今日はもっと入ってましたよね。7~80人はいたかな」

41
ゲン「ああ。50枚でペイするとして、70人客が入ったら、その差20枚分がバンドの報酬となる」

42
遼「え!? じゃあ、今日のライブは報酬4万?」

43
ゲン「な。豪華な打ち上げしてる場合じゃねーだろ」

44
遼「厳しいっすね……」

45
ゲン「まあ、バンドの収入源はチケ代だけじゃねぇ。物販……バンドのグッズやCDが売れればありがてぇ話だ。音楽だけでめちゃくちゃ稼げてんのは、ほんの一握りだ。どいつもこいつも、爪に火ぃともしながらやってんだよ」

46
遼「へー……じゃあ、売れないのになんでいつまでも音楽やってんすか?」

※一瞬、間

47(kasumi特別出演)
※笑い声。若者の発言を悪気なく受け取って笑っている感じ
「わはははは!」「言うねー」など

※本編ではkasumiメンバーのアドリブをお楽しみいただけます

※SE グラスを置く音

49
ゲン「歌ってないと死ぬからだよ」

50
遼「死ぬって、そんな大げさな」

51
ゲン「音楽……いや、表現活動に携わる者すべての宿命だわな。ふらふらしてる大学生にはわかんねーか」

52
遼「……」※ムカッとするリアクションのブレス音

54
ゲン「売れるに越したこたぁねぇよ。でもな、もっと根本には……んん、そうだな。『やらねば死ぬ』くらいの思いがあんだよ」

55
ゲン「腹の底からあふれ出すんだ。内側から暴れ出すんだよ。情熱……いや、駆り立てられるような焦燥感だな。歌わないと死ぬんだよ」

56
ゲン「でも、好きなだけ音楽やってるだけじゃあ腹は膨れん。お前が言うようにな。死なないためには、売れなきゃならん。表現したものに対して対価が払われなきゃ、表現活動なんか続けられねぇんだよ……本当はな」

※SE グラスの氷の音

57
悔しかった。
お前にはわからないだろう、と言われているような気がした。
夢中になれるものがないお前には、一生理解できないだろう……と。

58
ゲン「そろそろお開きにすっか。……あぁ、そうだ。今月いっぱいで、ハコ閉めるから」

59(kasumi特別出演)
「えー!?」「マジすか」など ※4人の声を編集でかぶせてガヤに

※本編ではkasumiメンバーのアドリブをお楽しみいただけます

60
ゲン「悪いな、経営が苦しくてよ。俺もいい年だしなぁ」

61
遼「え……!? 閉めるって……」

※SE タバコを吸う音

64
ゲン「AAA(ノーネーム)、30年の歴史に幕引きだ」

※BGM ED『ナミダと、涙。』 カットイン

65
線香花火のもえかすが、ジュッと音を立てて落ちた気がした。

※BGM フェードアウト


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