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四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(アヤカシの世界へ②)

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以下本文


 なぎさみおの実家に行くという置き手紙を読んだ時、どこから知られたのかと本気で焦った。澪の実家に渚の居場所が漏れたのかと思ったが、手紙の内容だけでは判断がつかない。
 澪と一緒になる時、全ての話を聞いた上で、俺は澪とお腹の子を守ると決めた。そして澪と話し合って、子供には澪の実家のことや血のことは話さないことにした。この子は、普通の女の子として大人になって、普通の幸せを歩んでもらいたいと、本気で思ったからだ。
 しかし今、その本人が自らの意思で旅立ってしまった。澪が居なくなってから混乱の中に生きてきた渚は、きっと俺のことを信頼してはいないのだろう。最近の態度からなんとなくそれがわかる。澪が帰ってきてくれればと思うが、2人で話し合って決めたことだ。俺は澪の意思を蔑ろにできるほど、ご立派な人間じゃない。だから同じように自分の意思で選んだ渚の行く末を見守るしかなかった。
 仕事中も心配で何度も携帯を確認するが、渚からの連絡は無かった。思春期に入った娘に何度も連絡をするのも気が引けてしまうし、待つと決めた以上、自分の娘を信じるしかない。それにしてもなぜ……?
 夜になっても連絡は無かった。澪の実家で何かあったのか、それとも単に忘れられているだけなのか。男親としては辛いことだが、同じように娘を持つ上司からは、「覚悟しておけ」と散々言われてきた。
 風呂に入り、一息吐いた時にリビングに飾られている3人で写った写真に目が留まった。まだ渚が4歳の時の写真だ。
 写真が置いてある棚の引き出しから、澪から預かったペンダントを取り出し、写真立ての横に置く。薄いピンク色の勾玉が付いたそれは、お守りだと澪が昔言っていた。
 『渚が大きくなっても私が帰らなかったら、渚に渡して。きっと渚を助けてくれる』と、澪は確信を持って言っていた。きっとこれも宮路家に伝わる何かしらの道具の1つなのだろう。澪から教えてもらった不思議な道具は、どれも一般人の俺にはおとぎ話のような物ばかりだった。

「もっと早くに渡してやれば良かったよ。俺はいつも判断が遅くて、君に引っ張ってもらってばかりだな。もっとしっかりしなくちゃ」

 自嘲気味に力無く笑うと、どこからか、「貴方には感謝してるわ。今はあの子を信じて」と、澪の声が聞こえる。

「そうだな、渚は澪の子だ。とてもしっかり者で、強い子だから、きっと大丈夫だよな。最近は見た目も君そっくりになってきたんだ。なんとか会話しないとと思って、昨日久しぶりに祭りに行かないかと誘ったんだが、やっぱり振られてしまったよ。子育てって難しいね」

 写真に向かって報告を済ませ、自分の顔を両の手でひと叩きした。今は2人が無事に帰ってきてくれることを願うばかりだ。

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