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[インタビュー] Otala -静かに爆発する感情の奔流−


スリリングなサックス、耳を切り裂くギターの音、時に感傷的に時に爆発するように、スポークンワードのヴォーカルに寄り添う演劇的な楽曲。青白い炎がほとばしるノッティンガムの Otala のなんと刺激的なことか。バンドは1年前、23年1月にデビュー曲、「Tennov」を送り出し、その後3曲入りのEP「Tell the Bees」をリリース。そして今年、24年3月に新曲「Commedia」を 〈Lil Chop〉からリリースした。「Commedia」は混迷を極める世界で、唇を噛みしめながらもがく心を現したような楽曲で、穏やかなざらつきと角張ったサウンドが聞く者の心の奥底にある感情に火をつけ、静かに強く揺らしていく。

サウスロンドン、Windmillのシーンを彷彿とさせながら、しかし彼らは決してそうではない。新しいバンドの奔流と違いが見せる妙、ワクワクする心を作り出す要因、彼らの街ノッティンガムについて、転がり、動き始めたバンドに聞いたインタビュー。このタイミングだからこそ見えてくるものがきっとある。


上段左から Jack、Oscar、Fin  下段左から Rory、Charlotte


Interview with Otala(Oscar, Rory, Charlotte)


─ 最初にバンドのメンバーの紹介をお願いします


僕らは Oscar(Vo/Gt) 、 Rory (bass)、Charlotte (saxophone)、Jack (synth)、 Fin (drums)の5人組


─ Otala はどのようにして始まったのですか?バンド結成の経緯を教えていただけますか?


Rory : バンドが今の Otala のメンバーになるまでは流動的でちょっと時間がかかったんだ。だからみんなが揃ってどうだったとかいうのは特になくて。でも今の体制になった時に、あぁこのメンバーだったら長続きするだろうなって確信したんだよね。

─ ちなみにこの Otala というバンド名はどうやって決めたのですか?

Oscar: あんまり面白い話でもないんだけど (笑)みんなでバンドの名前をどうするのかって色々出してた時に、なめくじ(slug)って浮かんで、それでカタツムリの種類について調べていたらOtala って出てきてって流れ。この響きいいなって思って。

─ Otala はポストパンクの要素にジャズの要素があるのを感じます。そしてサックスの入った喋るように唄うバンドであるというのが特徴でもあります。バンドはどんな音楽に影響を受けて来たのでしょうか?

Rory : 無意識のうちに今の音楽にも影響を受けているだろうけど、こういう音にしたいって意識しているのはこれまでに聞いてきたものからなんだ。僕の場合は小さい頃両親がフォークをよくかけていたから、それが自分の中にあって曲を作るときに出てきている。Finはジャズをかなり意識してて、Charlotteはダンスをよく聞いてて、そういうのが混ざって今の僕らの音になっていて、それを気に入ってくれる人がいるんだと思う。

Otala - Mill Grain Throat


─ バンドが拠点としているノッティンガムという街はどんな街ですか。地元の音楽シーンや街の雰囲気などを教えてもらえると嬉しいです。

Charlotte : ノッティンガムはすっごく小さな街、30分あれば端から端まで歩けちゃうくらい。でもその中にたくさん色んなものが詰まってるんだ!学生が多いから、毎晩色んな種類のライヴが開催されてて。私的にはNottsのシーンで一番盛り上がっているのはインディーだと思うけど、ここから色んなものが生まれているっていうのを感じる。めちゃくちゃカッコいいDJナイトもいっぱいあるし。ニューヨーク・ダンスとかテクノ、ノーザンソウルまでかかるみたいな。あと最近はインディペンデントなレコードショップもたくさんオープンしてる。足りないのはインデペンデントのヴェニューかな、最近は閉店するところも多くて。私たちのお気に入りだった The Chameleon Arts Cafe も今月末で終わっちゃう。

─ 僕は1年前に、Otala と Man/Woman/Chainsaw を聞いたときに新しい流れを感じたんですよね。Black Country, New Road や black midi などサウスロンドン、Windmill にあった、ポストパンクのシーンから枝分かれした新世代感があったような気がして。ロンドンを活動拠点としてない、次世代の、あなたたちから見たサウスロンドンのシーンはどんな風に映っていましたか?

Rory : 実際にそのシーンの一部じゃないからこういうことを言うのは変な感じだけど、シーンのバンドの音楽を聞くのは面白いしリスペクトもしてて、インスピレーションになってるっていうのも確かだと思う。だけど個人的にはみんな少し深くとらえすぎなんじゃないかって。2年間ライヴ活動していてそれで初めて Windmill でプレイしたっていうのにYouTubeで「Windmill 生まれだ」みたいなコメントを見るのはかなり笑える。たぶん新しい世代のバンドはみんなこういう感じのことに対処しているんだろうなって思う。みんなそれまでのキャリアがあるんだから前のバンドとの比較じゃなくてそのバンド自身を見るべきなのに。

─ ちなみに同世代で気になるバンドはいますか?

Rory : たくさんいるけど、でももし3つ選べって言われたら Bloodworm、Martial Arts、Cowboyyの三つかな。

Charlotte : Mary in the Junkyard、今超好き!

cowboyy - Gmaps


mary in the junkyard - Ghost


─ ここからは曲についての話を聞かせてください。演劇的でスリリングな「Tennov」を聞いてすぐさまファンになったのですが、初めからこのようなスタイルの曲を作ろうと思っていたのでしょうか? 曲作りのプロセスはどんな感じなんですか?

Rory : 「Tennov」は Oscar が書いたんだけど、僕らの為だけじゃなく彼が前のバンドの為に書いた要素も残っていて。このスタイルは僕らがずっと守り続けていたものなんじゃないかな。僕らはよく古い曲の一部を持ってきたり、新しい曲とくっつけて残りの部分を捨てちゃうんだけど、それが少し堅苦しい感じの雰囲気を作り出しているんだと思う。通常のプロセスは誰かがリハに持ってきたアイデアを発展させて、それをバンド全体で動かして作るって形。


─ その後、23年の3月に3曲入りのEP「Tell the Bees」をリリース。そうして1年後の今年、3月に新曲「Commedia 」が〈Lil Chop〉からリリースされました。「Commedia 」はヴォーカルがより演劇的になり、サックスをはじめとした楽器がそれに寄り添い曲の感情を作っているかのように感じたのですが、この曲はどのようなアイデアから始まったんですか?

Oscar: この曲の中では僕とRoryが一緒に演奏するようになってからの苦闘についてを描こうとしているんだ、音楽面や私生活、あらゆる面に渡ってのね。ほとんど角張っていて不協和音のスタイルがここまでの美しい闘争の雰囲気を表現するのに役立っているって感じてる。


─ 「Commedia」の墨で描かれた人形のようなアートワークが好きなのですが、このアートワークはどういうところから来たのですか。

Rory : このアートはOscarのお父さんが描いてくれたんだ!こういうのにしたいって大まかなアイデアはあったんだけど、それを伝えたら色んなのを描いてくれて。で、その中からフィットするものを選んで。

Oscar: そう僕が父に頼んだんだ。これに対する父の言葉はこう

「音楽の感情的な質と群衆の動きの融合、バンドのパフォーマンスの本質を絵としてとらえようとした」


─ 音楽以外で興味があるものやインスピレーションを受けるものはありますか?

Charlotte : 私たちバンド以外もかなり忙しく動いているかも! 仕事(主に接客業)の傍ら、Rory は服を作ったりシンセを作ったりしてる(両方とも、作って、しかも売ってる!)。Rory は Jack とエレクトロニックのサイドプロジェクトもやってるし。Oscar は詩、 Fin もシェフィールドで二つ別のプロジェクトをやってて。私はまだ大学に通っているんだけど、音楽ジャーナリズムの活動とか、DJとか、レコード・ライブラリーの運営を手伝ったりもしてる。


─ ライヴについても話を聞かせてください。YouTubeで見た限りですが、ライヴはより静と動のメリハリがついたよりスリリングなものだと感じました。 ライヴをするときに心がけているのはどういういうところですか?

Rory : ありきたりかもしれないけど、プレイ中は出来るだけなにも考えないようにしていると思う。実際にステージに起こっていること以上のものに意識を奪われがちで、そういうところから離れたほうが結果的にいい音になるんだ。僕たちの最高のセットっていうのは最後にあぁもう終わったんだって気がつくようなものなんだって思う。盛り上がるショーのレシピには思えないかもしれないけど、それでどうにか機能してる。


─ この1年間で Otalaは Fat Dog や Cowboyy、 オランダの Personal Trainer、Tramhaus と共演していて、インスタで告知のポスターを見るたびにおぉと思っていたのですが、今までで印象に残っているライヴはありますか?

Rory : 今あげてくれたもの全部が思い出深いよ。最高のライヴが今、出来ているっていいことだよね。バンドを始めてからずっと聞いてきたような人たちと一緒に出来てて。その中でも Left of the Dial に出たときのことは凄く印象に残ってるな。こんなに待遇が良かったことはないし、こんなにたくさん好きなバンドを見られるチャンスがあったこともなかったし(そうじゃなくても、週末に何回も演奏したわけで)


※Left of the Dial はオランダ、ロッテルダムで行われる若手インディーバンドを集めた音楽フェス。Otalaが出演した2023年にはCardinals やTaipir!、Cowboyy、Mary in the Junkyard、Moreish Idolsも参加した。たぶんこのリスト、上から順に聞いていっても間違いない。



─ ありがとうございます。最後に今後の予定や目標について教えてください。

Charlotte : もっとたくさんライヴがやりたいし、リリースしたい。色んな国でも演奏したい、どうなるかわかんないけど!

Rory : うん、リリースしたい。「Commedia」を出す前の1年間はちょっと沈黙してたから、実はリリースしたい曲がかなりたまっているんだ。今は〈Lil Chop〉と契約してて、これからどんどん曲を出せそうだから未来は明るいよ!



Otala: Instagram , HP, Bandcamp
Lil Chop : Instagram


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