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伝える側の責任(仕事と子育て)

1.『猫をしかる前にそこに魚を置くな』



叱る前にその状況に原因がなかったかを振り返る時間のこと。結果だけを追いかけて、そこにいる近い人が原因であると決めつけてしまう。それ自体が間違いではないのかもしれないが、どうしてそうなったかを一緒に考える気持ちの余裕こそが必要だという考え方。過ぎた時間を戻すことはできない、だったら次にそうならない方法を、その立場で考えてあげることが「叱る」ことなのだと言うこと。

2.仕事では合言葉だった

上司だった頃の話、「伝える側の責任」という言葉を中間管理職にあたる部下にずっと口癖のように説いていた。説明したつもりでいる自分に酔ってしまい、「言ったはず!」「聞いただろ?」と自分の立ち位置での主張を前提として、叱ることの理由にすることを否定してきた。
言ったことが理解されていなければ、「伝える側の責任」であることを一番の原因とする習慣があれば、「何度言えばわかる?」という説教じみた言葉を発する必要がない。一度言って伝わらなければ、伝え方を変えるのが伝える側の責任であって、10人中9人が理解していることを残り1人に問い質しても何も起こらないのである。

ブエノスアイレスの夜明け

3.何度も言ってるのは勘違い

伝える側は何度も言っていると思い込んでいるだけで、実際には数えるほどしか発信していない。本当に数えられるほどであることに驚く。人から伝え聞いて、発信している工程で「何度も」という錯覚に陥っているだけで、そこまで発信できていないことがほとんどなのだ。理解力のある人に囲まれていると、その苦労がないのでさらにそんな錯覚が作用する。
一度だけの発信で全員が理解することはないと思っていい。それは誰でも聞き漏らすことはあるし、発信している側の説明の甘さだってどこかにある。立ったまま話すのが良いのか、座って静かな場所で話すのか、紙に書いて説明するのが適切なのか、人によって理解力も千差万別なのである。

4.子育ても同じこと

子供に置き換えればわかりやすい。子供は理解しようと思って話を聞くことがない。ということは、まず興味を持たせることが伝える側の仕事であって、大きな声で威嚇して聞かせたところで伝わらないのである。
前のめりで聞いてもらいたいのであれば、前のめりにさせることは親の役割であって、「聞きなさい!」で聞く子供なんていないのが当たり前。
組織で人を束ねることも同様で、全員に聞いてほしいなら「ここが重要」というワードをしっかり伝えて、後で質問できる状況を作ることが重要なのである。質問しようにも、何がわからないのかわからないという状況を作ってしまうと、伝える側の発信方法のレベルが低いと思っていい。キーワードを落とし込んでさえあれば、「さっきの○○の話が・・」という質問ワードにしやすくなるということ。

5.時間をかけて伝えることが結局は近道

面倒でも伝えるための準備時間を十分にかけること。ここを端折るから結局もう一回手間をかけて伝えることになる。興味を持てる環境を作ってあげれば、ひょっとしたら何度も言わなくても全員に伝わるかもしれない。でも、そこには相当な時間をかけて事前に準備をする必要がある。どちらを選択するかになるが、お互いの時間を最大限に短縮するためには、「伝える側」がどれだけ準備に時間をかけるのかにかかってくることを自覚した組織が、良いチームになっていくということのお話。

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