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アルゼンチンの日本人プロサッカー選手


1.それは共通の知人を通じて

今やSNSの時代、海外にいようと人が繋がることは容易なこと。上手く活用すれば、すごい出会いがたくさん待っているというツールでもある。アルゼンチン在住の日本人という共通項だけで、日本にいたら出会う事のなかった人たちと出会えていることが不思議だけど、ちょっと楽しかったりもする。日々の暮らしで困ったこととか、食生活の話とかの日本のママ友が公園でしているような話をする感覚と同じことが起こっている気がする。そして、何よりも日本語に飢えているせいか、話したいことが溢れるほどに出てくるのも海外生活ならではなのかもしれない。


2.こんな方との出会い

https://twitter.com/LiniersOficial/status/1576315353596325888?s=20&t=5rHWYJXmTWfmOz1NhDWwng

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@LiniersOficial Twitterより


前列中央の後藤航(ごとう こう)選手というアルゼンチンのプロサッカー選手という存在。アルゼンチン唯一の日本人プロ選手ということで、日本にいた頃から存じてはいた。ひょんなことからメッセージのやりとりをするようになっていったというのが出会い。住んでいる場所も近いということなので、「今度会おう」というやりとりだけど、絶対に日本人の社交辞令にしたくないと思いながらその時を待っていた。
そしてある日、連絡をいただき会えることになった。忙しい最中にわざわざ時間を作ってもらえるとのことで、どんな話になるのか楽しみで仕方がなかった。

3.会うことになって準備したことは

実際に会って聞いてみたいことは山ほどあった。アルゼンチンでサッカーをするということの共通点で話したいという期待を込めて、失礼を承知の上であえて事前に経歴を調べずに話そうという決めて挑んだ席だった。今日は取材ではなく、あくまでも日本人同士の交流という場でお互いを知るという場所にするという方がいろいろなお話が聞けるような気がしていた。
プロになりたいという息子の思いが伝わるのかという心配と、プロで活動する選手に対して他愛のない質問の失礼がないかどうかという不安があった。厳しい世界に身を置いてリアルタイムで戦う人の声が聞ける機会である一方で、正直な質問をぶつけることがどこまで正しいのかという余計な心配も頭を過ったりしていた。13歳にも質問は事前に決めておくように打ち合わせをしていた。

4.最初に感じた印象は

会った場所はカフェだった。そこの店員とのやりとりも流暢なスペイン語で話す姿が印象的だった。そして第一印象は「気さくな好青年」だった。砕けた空気感になるまでに時間もかからずに普通にお話をすることができた。アルゼンチンでの日常生活面での苦労話などをしているうちに、あっという間に時間が過ぎてしまっていた。
彼は18歳で高校を卒業してアルゼンチンにやってきた。言葉も通じない国だけど「サッカー=マラドーナ」の印象でアルゼンチンを選んだとのことだった。やはり最初の生活を軌道に乗せるまでには苦労があり、その経験が今に生かされているというのを言葉の間に感じる事ができた。今でも生活(家事)のほとんどを自分でしており、食事面でも自炊しながらコンディションを整えつつ、チーム練習と自主トレをスケジュールして消化していると話を聞くことができた。ポジションがFWという共通点も見つかり、お互いのサッカー談義をしながら、「アルゼンチンのアイスクリームは美味しい」などと意気投合することもあり、あっという間に楽しく時間が過ぎていった。


5.13歳男子からのプロ選手への質問


「どうやってスペイン語を覚えたのか」

→とにかく親しい人と会話をすること。いっぱい話したいという相手を見つけて話すために考える。考えるから言葉を覚えて話せるようになるというのがヒントだった。伝えたいという気持ちを正直に表現していくというのが一番の近道という結論。読書やアプリでインプットする方法はあれど、聞き取れなければ会話にならず、アウトプットできる相手を見つけることが一番という教えだった。そして、アルゼンチン人は親切に聞いてくれるし、外国人を外国人として見ることもないので、話しかけることが一番の習得方法だという話をいただくことができた。

「ハマらない指導者との向き合い方」

→13歳の口から「ハマらない」と言った訳でもないのだが、良くある話として聞いてみた。プロの世界は3回続けて負けたら監督は交代になる世界。その交代の度に相性の良い監督とばかり出会えるわけではない。出場機会が減った場合、どうするのかという質問。答えは「何を練習するべきか」を直接聞いてみたらいい、とのことだった。日本のそれとは違い、発信することを我慢する必要はなく出たいからどうするべきなのかを聞く意欲が、逆に監督との関係を円滑にするという言葉が印象的だった。しかも、日本と違ってアルゼンチンは明確に返事をもらえる。日本独特の平均を重んじるべく、当たり障りのない言葉で終始することはないとのアドバイスであった。


6.有名なチームなのか出場機会なのか

日本のサッカー進路でもあるあるの「チームのお受験化」の問題。上位リーグに所属する名の通ったチームに所属することにバリューを感じる風潮、日本の学校教育の悪い面が象徴される様な現象は、いい傾向ではないというのが結論。
後藤プロ自身もJリーグ某チームの下部組織に所属してプレーしていた経験から、所属することで将来の選択肢を狭めてしまうことを懸念していた。それよりも出場機会をコンスタントにもらえることの方が大切で、チーム選びの際には出場機会を重視すべきということであった。そういう意味では自分のプレースタイルとチームカラーをしっかり見定める必要はあるのかもしれない、ということを教えてもらった気がした。

素敵な時間を過ごすことができた


7.サッカーとの向き合い方

最後の雑談の中の言葉で息子への「サッカーを楽しんで」という言葉が印象に残っている。確かにアルゼンチンの練習風景を見ていると、子供たちは練習でも楽しそうに、遊んでいるかのようにプレーしている。これは日本の練習風景には見られないことだった。どこか指導者や父兄の高圧的なものを感じながら群集心理で行う練習では、サッカーの本質を学ぶことができないと感じている。
残念ながら、小学生の技術レベルは日本の方が相当に高いのに、どこかの年代で逆転してしまう現象の秘密がここにあるような気がしている。小さい頃から生活の一部となっているサッカーが心から楽しめた時に後藤プロの「サッカーを楽しんで」という言葉の意味が分かる時が来るのかもしれないと感じながら帰路についた。
「また会いたい」そう思える若者との出会い。自分にとっても息子にとっても忘れることのできない貴重な出会いの瞬間だったことは間違いない。日本人というだけでなく、人間性に触れることでプロになる人には人間としての魅力を兼ね備えているということを感じる機会となった出会いだった。これからどうなっていくのか、お互いに楽しみになってきた。


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