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2秒のルール


1.アルゼンチンのサッカー指導者の言葉


「ドリブルは2秒まで」
そんな言葉のように聞こえてきた。手を2回叩いて伝えようとしていたので、2拍という意味なのかもしれない。ニュアンスに違いがあることを恐れず言うなら2秒までならいい、4秒も持つから取られるんだ、という意味あいでの言葉だったと解釈している。ジェスチャーから汲み取っているだけなので、何か違うことを伝えたかったのかもしれないけれど。
目まぐるしく状況が変わるスポーツにおいて、時間を物差しにして結果を見てしまうことに違和感を感じる。サッカーに限らず、スポーツでは「どんな指導者と出会うことができるか」それによって人生の大きな分岐点になるということ。そういう方からの言葉には影響力があって、言葉以上に心に残るものがスポーツを通じての出会いだと思うから。これは親や学校の先生にはない独特の影響力があって、大人になってからも心に残る言葉ってこういう場所で生まれていたりするものである。


2.日本での指導者からの言葉には


「Aチームでプレーがしたいなら
  Aチームのサッカーをしないと入れないよ」

という指導の言葉があったことを思い出した。聞こえ方のニュアンスは違っているのかもしれないけど、それがその言葉通りだとするとサッカー指導の終わりの始まりの様な気がしていた。11人のサッカー(日本の小学生年代は8人制)をする環境において、レギュラーの枠は当然限られてくる。11人目のパーツを目指すのも一つの選択肢だし、自分のプレースタイルで認めてもらって勝ち取りたいと思うこととの悩ましい部分である。
チームを作る側は当然ながら結果も求められる中、ジグソーパズルの様に空いた箇所にスパッとハマればこんなに楽なことはない。でも、それは果たして「個」を生かすという意味で適した指導なのかという疑問を持ったことがあった。

アルゼンチンの週末の朝


3.真似していたら超えられない


限られたレギュラーという枠の数。食い込もうと思ったら、目指すポジションのプレーヤーを真似することも手段の一つ。でも、真似だけではそのプレーヤーを超えることもできないし、狭い比較の中での「二番目」に甘んじる選択になってしまうということ。日本人は自分らしさを捨ててでも、そこに食い込もうと思うバランス感覚には長けている。でも、それはそのチーム事情でしか理解し得ないもので、同じスポーツなのに別の環境では通用しなくなるというデメリットもある。自分らしさとチームへの順応力、その判断の難しい部分ではあるが、自分の「良い点」を殺してしまうような競争環境が今後のスポーツの育成における大きな問題になるような気がしている。
そこで自分のプレーを貫く強さこそが「個」だと思っていたので、サッカー指導も日本の教育同様に平均点を重んじるような文化も蔓延ってしまっていると感じたものだった。


4.選んだ道を正解にする力


控え選手には控え選手の仕事がある。試合のリズムを変えたり、悪い展開を引き戻す様なプレーが求められるケースが多いのではないだろうか。人の真似だけで自分を見てもらおうとするプレーヤーに、そんなプレーができるのかということを考えた場合に、同じリズムでプレーする選手が交替で出てくるメリットとは、チームの動揺が最小限に留まるということだけで、相手にとっても戦いやすいということになってしまうという気がしている。
采配を振るう人の目線で言うなら、交替することがチームパフォーマンスのマイナスになることは避けたいはず。その意図が伝わる選手を控えのカードで持っておくことが重要で、同じ形をしたパーツの使い道は「スペア」でしかないことを指導する段階で理解しておかないといけないと思う。スペアが役立つのは、欠場(ケガ)の時だけでそれ以外の場面ではスペアはスペア以上のパーツにはなり得ないということになる。


5.語彙力も大切


指導者的には保護者の耳を必要以上に恐れたくなることもあるのかもしれない。モンスターペアレントみたいなケースもありそうなので、苦労もあることも承知している。だからこそ、言葉選びには慎重になってほしいと思うし、個を伸ばすという意味では日本のサッカーの将来のためにも学ばなきゃいけないステージなんだと思う。アルゼンチンでも「2秒のルール」が存在するということは、各国の指導者の年代によってそんな指導をする人もいるということ。日本が悪いということでないし、その指導がいけないということではない。
発する側がもっと表現力をつけていかないといけないし、そんな言葉がきっかけでサッカーを嫌いになるような子供を出さないために、どう伝えるべきなのかを一緒に考えてあげられるような環境であってほしいし、控え選手も一緒に戦えるような指導を探してあげられることを心から願っている。

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