2023年2月の本棚
2月に読んだマンガをまとめました。
家が好きな人 / 井田千秋(実業之日本社)
イラストレーターの井田千秋さんが過去に出版された同人誌をベースに描かれたコミック&イラスト集。ベースになった同人誌をはじめ、過去のエッセイ&イラスト集なども所有している身としてとても楽しみにしていた一冊。特製マグカップ付きの限定版を購入させていただきました。
作中に描かれる5軒の家とそこに住む人の関係に、それぞれのカラーが表れていて、一気に読むのが勿体なくて仕方がなかったです。自分だけの住処。なかなか難しいけど、少しずつでも整えていきたいな、と改めて思いました。デカい本棚を買うのが目下の夢。
ラーメン赤猫 3 / アンギャマン(集英社)
千客万来のラーメン赤猫。そこで働く猫たち一匹一匹にストーリーがあり、単なる癒しだけじゃない多くの栄養素が含まれているマンガです。
佐々木さんと店長の本名が明かされる回が好き。ハナもサブもクリシュナも好き。今回もご馳走様でした(3巻を機に紙でも全巻買い直しました)
株式会社マジルミエ 6 / 岩田雪花・青木裕(集英社)
実績作りとしての新種怪異退治も徹底した現場主義で無事乗り越えたマジルミエ。今度は事業拡大のために人員を補充することに。
描かれているのはキャラクターひとりひとりの仕事ぶりだけど、それらが集まってが会社という組織全体の形だったり、向かうべき方向を作っている。お仕事もの作品の魅力ってこういうところかもしれない。
アオのハコ 9 / 三浦糀(集英社)
合同合宿で練習に励む大喜・雛・千夏先輩。合宿最後の夜、大喜は雛へ自分の気持ちを告げる。
分かってはいたけど雛推しにはツラい巻だった。こうなったら大喜には千夏先輩に対して積極的になってもらわないと納得いかないのでガッといってほしいな。ガッと。バドミントンだけに。
ショーハショーテン! 4 / 浅倉秋成・小畑健(集英社)
漫才中にネタが飛んでしまった畦道と太陽のコンビ「天頂片道切符」の笑-1甲子園の結果は…!?
そして明かされる太陽がお笑いの道を進むきっかけとなった、かつての相方・椚 朔太郎との過去。
やっぱり過去編は大事だなと思った巻でした。月並みな言い方だけど物語に厚みが生まれる気がする。
SANDA 7 / 板垣巴留(秋田書店)
超少子化社会において、子どもの希少価値は非常に高い。大黒愛護学園にも子どもの誘拐を生業とする「子賊」が乗り込んできた。学園を守るために大渋学園長と共闘する三田。(急にモブ敵がドカドカ出てきて何事かと思った)
大渋学園長が段々敵っぽくなくなってきたので、もっと強大な存在が出てきそうな予感。今後、学園の外の世界にも話が広がっていきそう。
弱虫ペダル 82 / 渡辺航(秋田書店)
総北伝統の1年生レースに臨む初心者・六代。経験者たちとの差を痛感し心が折れかけながらも、仲間の力を借り、先頭へ喰らいつく。峰ヶ山の山頂を目指す六代の姿を目にした坂道は、彼の走りに大きな可能性を見出すのだった。
2年前、自分を見ていた先輩たちに思いを馳せながら目の前の新たな可能性に心を震わせる構図は良かった。もうレースの結末は読まなくても分かるけど読むぞ!
潮が舞い子が舞い 9 / 阿部共実(秋田書店)
海辺の田舎町で紡がれる様々な人間模様。今回も収録話の中から印象に残ったセリフを抜粋していくやつをやりたいと思います。
●第89話:氷室「あっ先輩の前で何言ってんねん私 おちんちんでした」●第90話:水木「中学生ってフリーエージェント権行使できましたっけ」●第91話:歌野「はっ!?おしっこ漏れそうつまりダム決壊つまり大嵐つまりアンゴルモアの大王つまり世界は終わる!なんで俺はそんなことに気づかなかったんだ!」●第92話:バーグマン「個性やパーソナリティってその人自身の性質のことじゃないですか つまり他の人との違いがあるかどうかは要点じゃない 朝が好きなこともその人の個性だし朝が苦手なこともその人の個性です なのに独自性を出すために他人と違おうとすることを個性と呼ぶことはむしろ個性的であることに最も反する行為ではと疑問に思うのです」●第93話:前島「女子と喋り慣れてなさすぎて自分が女子と喋ってる時とんなキャラなのか置き所がわからなくなってる感じのやつですかあああああああああ」●第94話:摩耶「先天的な本性は問題にせず好転的な教養にこそ人のあり方を見出しているの 性悪説は悲観ではなく人間と教養の可能性にすごく前向きなんだよ」●第95話:車崎「好きで性格悪いわけないだろ なんで俺は 俺はこうも性格悪く 悪く生まれてきたんだよ」●第96話:砲「右佐先輩もうひとつだけお願いしてもいいですか?後谷にもその動画送ってあげてくれませんか」●第97話:肇「お前らくらいやがれ 参の構え死流「烈日赫赫」」●第98話:氷室「じっとできておりこうさんでした」水木「どういう意味だよ 殺し屋のキメ台詞か」●第99話:車崎「もう釣岡と仲直りできないのかな もう遅いのかな 俺はこのまま大人になるのかな」
氷室の出番が増えていて嬉しい限りですが、今回はやっぱりなんと言っても車崎の独白。
自己中心的で、幼稚で、どうしようもない奴だと思っていたけど、「足りない人間」の心の叫びは至極人間らしくて響いた。釣岡とも、きっと仲直りできる。
ゴゴゴゴーゴーゴースト 4 / 蛭塚都(KADOKAWA)
元カレにして恨みを晴らしたい相手・ゆー先輩の今カノ(不倫)・竹中に接触するウシロ。しかし自分がゆー先輩と不倫していたことを周囲にバラしたのがその竹中だったと本人の口から告げられてしまう。正子の死に関わる過去を持つ人物も登場し、復讐劇は新たな局面へ。
ゆー先輩との因縁にケリがつかないまま、別の話に寄り道しているのは連載が好調ってことなのかな。出てくるキャラクターが正子以外全員クソすぎる。
違国日記 10 / ヤマシタトモコ(祥伝社)
高校2年生の秋。進路について考える日々を送る朝は、周りの友人たちと比べて己の「何もなさ」を嘆く。この絶望してしまいそうな「何もない」という現状が、今後の朝の希望になっていくことを願うばかり。というか、神田さんも言ってたけど何もなくなんかない。「"ない"が"ある"」と心得よ。
そして季節は巡り、「朝 高校3年生 春」へと進む。1巻の冒頭に返ってきたところは思わずワーーー!!ってなった。最終章の匂いがする。
可愛いだけじゃない式守さん 17・18 / 真木蛍五(講談社)
怒涛の二冊同時刊行。猫崎と狼谷さんの部活の試合の応援に行ったり、お泊り会をしたり、夏休みは勉強三昧だったり、文化祭、体育祭を全力で楽しんだり、高校生活最後の時間が過ぎていく。
次回も二冊同時刊行。そして完結。
るるひかる-Vampire Memories- 2 / 今村翠(新潮社)
かつて吸血鬼と呼ばれた特異体質「摂血種」と宣告された小川るるは、血とともに記憶を受け継ぐ「記憶伝承士」のエドの助手として働くことに。エドと共に「くるす石」を継いだ青年の元を訪れたが、そこは隠れキリシタンの信仰が今も息づく土地だった。失われてゆく「伝統工芸」を「吸血鬼」の記憶が繋ぐクラフト・ファンタジー。
河畔の街のセリーヌ 2 / 日之下あかめ(マッグガーデン)
笑わない少女がパリの街で目にする、人々の仕事ぶりと生活の様子。
ゆっくりじっくりと自己を形成していくセリーヌが、無表情ながらも愛らしくて可愛いです。でも笑顔も見たい。笑えばいいと思うよ。
東くんの恋猫 1 / 菅原亮きん(小学館)
仔猫の東 來瞳は飼い主の東 大和のことが大好き。
來瞳にとって、自分とご主人だけだった平和な世界はある日、大和の恋の始まりによって様変わりしていく。一匹の猫の視点で描かれる切ない恋の物語。
來瞳は人語を理解するだけでなく、人間と猫の両方の姿で描かれていて、それはあくまで読者しか観測できないという設定です。このちょっと特殊な描かれ方が「飼い猫から見た飼い主の世界」をより際立たせていて面白い。來瞳の健気な猫柄に胸を締め付けられます。
黄泉のツガイ 3 / 荒川弘(スクウェア・エニックス)
一度死に「解」の力を手に入れたと言う妹・アサの過去を聞かされたユル。双子の片割れである自分も、一度死ねば「封」を力を手にすると告げられ、はじめは困惑するも、真っ向から己の人生に宣戦布告する。ただ、生きたい。そのためなら、何だってできる。
「残機×1」という事実により、主人公・ユルがどこかのタイミングで一度死ぬ展開を読者に示してきた荒川先生、やっぱりスゴい。望まぬ境遇のせいで平穏な生活が脅かされても、それを跳ね返す気概と力も持つユルの物語はこれからどう転んでいくのか。熱い!面白い!最高!4巻も早く読みたい。
星屑家族 上・下 / 幌山あき(KADOKAWA)
子どもを持つことが免許制になり、社会が親の選別を行うようになった近未来。親を審査する「扶養審査官」のヒカリはある夏、一組の夫婦の審査を行うことに。
「子どもを持つこと」が「正しい」とされる社会、人の親でなければ「人間ではない」世の中、親と子どもの関係、本当の家族の形。SFと社会風刺を絡めたファミリーストーリー。
大好きな幌山あき先生の短期連載作品。全10話という形式は当初から予定されていたものだったのかな?連載開始時に1話を読んだ時には想像もしていなかったラストでした。次回作にも期待大。
これを機にBOOTHで販売(PDF)されている直近3作の短編(COMITIA143新刊含む)も読みました。BOOTHそのものが使いにくくてあまり好きじゃないけど同人誌とかを気軽に電子で買えるのはありがたい。
各媒体で発表された短編もどれも本当に秀逸です。現状、書籍化されているのが『マーブルビターチョコレート』と『星屑家族』だけなので、それらが代表作として語られがちですが、個人的にはジャンプ+で発表された『二番目の運命』とイブニング新人賞準大賞作『AIの行方』が特に好きです。出版社各位は早急に短編集刊行のために尽力してください。よろしくお願いします。
ゆびさきと恋々 8 / 森下suu(講談社)
同棲しよう!となった雪ちゃんと逸臣さん。善は急げということでご両親へのお許しをもらいに雪ちゃんの実家訪問をすることに。黒髪に染めて気合い十分の逸臣さんが見せた器のデカさよ。本人はそんなこと全然特別と思っていないんだろう。
という一連の話で一冊が終わってしまった。同棲の許しをもらうだけで一冊を丸々使えるのはすごい。いや大事なことだけど。
嘘つきユリコの栄光 4 完結 / 田中現兎(講談社)
家康の父・雪路は、ユリコと同じ嘘つきで目立ちたがり屋で承認欲求にまみれた悲しい人間だった。家康や巡の隣に立ち、「主人公」として世間の注目を浴びるユリコに対して醜い嫉妬心を抱く雪路は、ユリコの居場所を奪うために動く。
何のために嘘をつくのか。自分の信じる「本物」に近づくためにユリコが見せる意地の嘘。ラストも爽快でした。『栄光』ってタイトルがとてもしっくり来て気持ち良かったです。次回作にも期待したいですね。
天幕のジャードゥーガル 2 / トマトスープ(秋田書店)
チンギス・カンの死によってモンゴル帝国は新たな時代を迎えようとしていた。帝国への復讐を誓うシタラは「ファーティマ」と名前を変え、モンゴル帝国第三皇子にして新帝となったオゴタイの第六皇后・ドレゲネと出会う。互いに似た境遇を持つ二人の女性は、帝国に嵐を呼ぶため、手を結ぶのだったーー。
祝このマンガがすごい!2023オンナ編1位。強大な存在を敵に回してでも、曲げられない強い信念を持った二人の女性の生き様。本当の意味で女性が強いマンガは良作率が高い(持論)
海が走るエンドロール 4 / たらちねジョン(秋田書店)
映画祭出品のために、学業・バイトに加えて作品制作に奮闘するうみ子さんと海。うみ子さんが海にとって大きな存在になっていっているような、でも名前を付けるものでもないような、そんな不思議な関係が素敵。最後の引きはかなり気になるところです。
ふたりエスケープ 4 / 田口囁一(一迅社)
〆切に追われる漫画家の後輩と、顔が良い無職の先輩。現実から逃げて逃げて逃げた先には、二人にとっての理想の生活が待っていました。この作品自体が後輩の描いた現実逃避漫画だった、みたいな演出も良かった。なんかちょっと悔しいけど。
逃げたことを卑下せずに逃げたこと自体をプラスに変えてこそ、逃げた甲斐があるってことですね(?)。生きるための逃げは有りです。有り有りです。
百合姫での連載は終了しましたが、同人誌で続編のような、おまけのようなものも出ていたので購読しました。連載終了後も作者ご自身で続けていってくれるのはありがたい限り。これからもふたりの現実逃避を見守りましょう。
花は咲く、修羅の如く 4 / 武田綾乃・むっしゅ(集英社)
Nコンに向けて他校との合同練習会に参加するすももヶ丘高校放送部の面々。気後れしそうになりながらも他校の人たちと交流を深めていく花奈と個性豊かたな猛者たち。
「牡丹鉾ぽここ」とかいうとんでもない名前のキャラクターが出てきたけどこの娘が一番強いみたい。あと、オタクは『山月記』が好き。
音街レコード B面 / 毛塚了一郎(KADOKAWA)
音楽にまつわる自費出版作品を再編集した短編集。先月のA面に続いてのB面。郊外の大型レコード店兼倉庫に眠る一枚の不思議なレコードの声を聞く【音霊ドライブ】を中心に収録。
商品であり、作品であり、消耗品であり、骨董品であるという価値の中でどう折り合いをつけて付き合っていくか。レコード程の骨董品的価値はないかもしれないけど、マンガも同じだと常々感じるところです。
つらねこ 1 / 熊倉俊隆(KADOKAWA)
中学生・知里は、生まれながら「自分の住む町の御神木から2km以上離れらない」という特殊な体質を持っていた。自身の体質を解決すべく、ネット上で知り合ったちょっと怪しい謎のお姉さん・六尺先生に連れられ、「ネドコ」と呼ばれる外界への抜け道に潜り込むこととなる知里。その際の姿は何故かバニーガール衣装!?
土地に縛られた少女が異界経由で自分の世界を広げるために奔走するというストーリー。まだまだ謎多い雰囲気だけど、オカルティックな世界観に作者のフェチが散りばめられた面白い作品でした。過去作も気になる。
エレナの炬火1 / 小板玲音(KADOKAWA)
先の戦争に敗北した北方の小国。懸命に復興を目指す国家において、体を動かせない重病人やけが人は社会から取り残され、疎外されるしかなかった。そんな人たちが最終的に集められる、とあるお屋敷で働き始めることになった猫耳少女・エレナ。彼女を待ち受けるのは目を背けたくなるような厳しい現実の数々。
それでも生きることの尊さと生命の可能性を信じるエレナの想いは、いずれ周りの人々に、そして国中に伝わることとなる。これは、後に国家の福祉を変える少女の物語ーー。
あらすじ的にちょっとクサい内容かな、と思ったけどしっかりどっしり描かれていて、メッセージにも説得力がありました。ちなみに「炬火」とは篝火のこと。福祉という大枠は置いておいて、一人の少女の小さな想いの火が周りへと広がり、やがて大きな炎となる、はず。猫耳は作者の癖なのかな?
天狗の台所 2 / 田中相(講談社)
天狗兄弟の穏やかな隠遁生活。季節は秋から冬へ。大晦日には天狗ならではの儀式も執り行い、お正月は各地の同年代の末裔たちも集合して賑やかな一時を過ごす。
無邪気で自由奔放な弟・オンも、物静かで拘り気質の兄・基ももちろん魅力的だけど、犬のむぎの可愛さが本当に堪らない。「使い魔的ポジションだけど主人と対等な関係の人語を喋る別種族の生物」が個人的にツボかも。魔女宅のジジみたいな存在。
1巻の時以上に、回を重ねて季節が巡っていくことでより深みが増したように感じました。「豊かさ」が時間と共に積み重なっていく様子がとても素敵で心地良いです。
スタジオカバナ 4 / 馬あぐり(KADOKAWA)
少しずつ関係を育んでいく優助とゆかり。優助に執拗に構う春雪について描かれた前半と文化祭の準備が進む後半。春雪がだいぶ救いようのないキャラで呆れちゃった。これが本当の”承認欲求モンスター”。
ゆかりと良い感じになればなるほど、春雪に対する後ろめたさみたいなものを感じてしまっている優助。それもそのうち踏ん切りがつきそうだけど、そうなったらいよいよ春雪が”壊れ”ちゃいそうではある。
言葉の獣 2 / 鯨庭(リイド社)
「言葉」を巡る物語。〈生息地〉にて、様々な言葉の獣を目にする薬研と東雲。良かれと思って開設したTwitterアカウントには誹謗中傷コメントも寄せられていて、「誹謗中傷」の獣を見る二人。「妬み」「嫉み」の根源にある「寂しい」という感情。言葉は刃物なんだ。
「記憶」と「記録」を巡る解釈、考察を交わすところで次巻に続く。興味深い部分も多い一方で、台詞とキャラクターが乖離しているというか、作者が言いたいことを薬研と東雲の二人に言わせてるだけ感もちょっとある気がしたりする時がある。それが「マンガ」ってものだとも思うけど。
自転車屋さんの高橋くん 6 / 松虫あられ(リイド社)
祖父をことを置いて家を出るわけにはいかないと言う高橋くん。それでもパン子との未来を描きたい。二人にとって一番良い形ってなんだろう。お互いに歩み寄る中、パン子が出した答えとは…!?
友人・キミちゃんの結婚式でのパン子のスピーチには泣かされた。即興であんなちゃんと話せるんだからやっぱり度胸ある。パン子と高橋くんの母親同士も東京にて邂逅し、物語もまた次のステージに向かいます。
苺ましまろ 9 / ばらスィー(KADOKAWA)
ロリコンのバイブル、約5年ぶりの新刊(や、ロリコンでわない)。
そんなに経っていたのか〜、という気持ち。8巻読んだかも怪しいけど内容的には飛ばしていても問題なし。令和でも「可愛いは、正義!」を地で行く唯一無二のマンガで在り続けてほしい。
ぷにるはかわいいスライム 3 通常版・特装版 / まえだくん(小学館)
かわいい僕っ娘スライム・ぷにるを愛でるコミックス第3巻。例によって通常盤を電子で、特装版を紙で購入。
文化祭やクリスマスを過ごすコタローは思春期特有(?)の感情からか、どうもハジけきれない。そこで頼る先がぷにる。ちょっとのび太とドラえもんの関係に近いものを感じる。そうそう解決はできないけど、ぷにるの存在がコタローの腐った性根のどこか一部でも和らげていく。
コタローの求める「かっこよさ」と内に秘める「かわいさ」への執着。「かっこいい」とは?「かわいい」とは?と子供向け作品だからこそ考えられる部分があります。
BLUE GIANT 1~10 完結 / 石塚真一(小学館)
言わずと知れたジャズマンガの名作。アニメ映画公開を機に遅ればせながら無印1巻から第三部最新8巻まで読みました。
宮城に住む高校生・宮本大の夢は世界一のジャズプレーヤーになること。そのために毎日毎日、毎日毎日毎日毎日、サックスの練習を続ける。
高校卒業を機に上京した大は、一人のピアノマン・沢辺雪祈と出会う。そこに、進学上京していた大の同級生・玉田俊二もドラムとして加わり、3人でバンド「JASS」を結成。日本一のジャズバー「SO BLUE」への出演を目指す。
BLUE GIANT SUPREME 1~11 完結 / 石塚真一(小学館)
単身ドイツへと渡った大は右も左も分からない海外の地で、一からジャズを吸収していく。
ライブハウスを回る中で、ベースプレーヤーの女性・ハンナ、ポーランド人のピアニスト・ブルーノ、フランス人のドラム・ラファエルと出会っていき、カルテット「NUMBER FIVE」を結成する。ヨーロッパ各地を巡り、多くの経験を積む大はオランダでのヨーロッパ最大のジャズフェス「ノースシー・ジャズフェスティバル」へ臨む。
BLUE GIANT EXPLORER 1~8 / 石塚真一・NUMPER8(小学館)
ヨーロッパ修行に区切りをつけた大は遂にジャズの本場・アメリカ、の西海岸へと降り立つ。西海岸から東海岸へと海沿いに旅を続ける大は、メキシコ人のピアニスト・アントニオとアメリカ人のドラマー・ゾッドと共にバンド「Dai Miyamoto Momentum」を結成し、旅を続ける。
最新8巻では、ジャズ発祥の地・ニューオーリンズを後にし、観光都市・フロリダへ。そこで、大と真逆のスタイルを持つ天才アル中ベーシスト・ジョーをバンドに招き入れる。「世界一になること」。それは変わらない。でも何かを変えていかなければならない時が、大の目の前に訪れていた。
三部作通しての感想としては、まず大がとにかくストイック。活動時間の全てをジャズに捧げていて、自分が世界一のジャズプレーヤーになることを信じて疑わない。努力に裏付けられてた確かな実力が道を切り開き、物語は進んでいく。
時に、常人には到底理解できないほどに真っ直ぐな大を見続けれられるかどうか、読者を選びそうな面もあるなとは思った。理屈とかではない情熱だけが動力源の奴を見続けるのってかなりカロリーが必要だったりするので。
個人的には『EXPLORER』がその名の通り、旅マンガとしても面白くて、大が自分と向き合う時間も多くて好き。おそらくアメリカ編で終わると思われるので、長い旅の果てに大はどんな音を奏でるのか、この先も楽しみです。映画もかなり良い出来だったのでおすすめ。
雑記
大好きな井田千秋さんの『家が好きな人』、応援している幌山あき先生の『星屑家族』、新作の中でも特に良かった『東くんの恋猫』なんかもイチオシでした。『潮が舞い子が舞い』や『違国日記』も今回が今まで一番好きな巻かもしれないくらい好き。
『BLUE GIANT』一気読みからの映画館での”浴びる”ような体験はかなり楽しかった。『THE FIRST SLUM DANK』とかといい、最近は映画館で観ることが前提で作られたような作品も多い気がします。サブスクが台頭している今日この頃なので、映画館に行ってでも観たい!みたいな作品作りが求められているんだろうな多分。
『金の国 水の国』もちょっと遅れたけど観ました。これは別に映画館で観なくても良かったかもしれない。面白かったけど。
以上、あっという間に過ぎ去った2月の本棚を彩ってくれたマンガたちでした。
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