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くも膜下出血後のリハビリテーション~どうする?脳血管攣縮への対応!~

脳外ブログ 臨床BATON

おはようございます。
本日も臨床BATONにお越しいただきありがとうございます。
11月に突入して関西も朝晩の冷え込みが強くなってきました。皆さん気温の急激な変化で体調を崩していないでしょうか?
第109日目を担当するのは、理学療法士のシミーです。

前回はマッサージについてお伝えしました。臨床でマッサージを効果的に活用するためにどうすればいいのか?について興味がある方はこちらからどうぞ!


本日はくも膜下出血後の亜急性期にかけて認められる『脳血管攣縮』についてどのように対応していくのかにポイントを絞りお伝えしていきます。

臨床場面でくも膜下出血後の患者様にリハビリテーションを進めていく上で何に注意しなければならないのか?また脳血管攣縮が起きている患者様にどのように関わっていけばいいのか、本当に進めていいのか?悩むことはないでしょうか。

臨床悩み


このような悩みの結論として、

・くも膜下出血後の亜急性期では『血圧』、『意識レベル』、『神経症状』に注意しながらリハビリテーションを進めていく必要があります。
・くも膜下出血後の約70%に脳血管攣縮は出現し、その内症状が出るのは36%であり、注意が必要です。
・脳血管攣縮は4~14日に出現するため、14日間は特に注意します。

なぜ、そうなるのか??
詳しく解説していきたいと思います!


くも膜下出血とは?

くも膜下腔に出血が起こり〔脳脊〕髄液に血液が混入した状態を,くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage;SAH)という。外傷によるくも膜下出血と区別して,突発的にくも膜下出血を起こした場合を特発性くも膜下出血(spontaneous subarachnoid hemorrhage)という。
引用:児玉南海雄・佐々木富男ほか編『標準脳神経外科学』第11版 医学書院(2009年)p206


原因と機序は簡単にまとめると以下の図のようになります。

SAHの割合

くも膜下出血後の3大合併症として『再出血』、『脳血管攣縮』、『正常圧水頭症』があります。
これらは重篤な状態に陥る可能性があるため、くも膜下出血後では十分に注意する必要があります。
今回は3大合併症の中で脳血管攣縮について考えていきます。

『脳血管攣縮』とはどのような状態でしょうか?
簡単に言葉の定義をしておきます。


血管攣縮とは

薬剤や機械的刺激、血管作動性物質やホルモンの作用により、一過性に血管が異常収縮をおこし灌流組織の虚血を生じること。
引用:一般社団法人日本救急医学会 医学用語解説集 
https://www.jaam.jp/dictionary/dictionary/word/0502.html


脳血管攣縮とは?

脳血管れん縮はSAH後に続発する特徴的な病態であり、それによる遅発性虚血神経脱落症状は、出血後4~14日に発症のピークがあり、それより早期(3日以内)または後期(21日以後)にも起こりうる。
引用:児玉南海雄・佐々木富男ほか編『標準脳神経外科学』第11版 医学書院(2009年)p210-211

血管攣縮

つまり、脳血管がなんらかの原因により一時的に狭窄を起こしている状態をいいます。

なぜ、くも膜下出血後に脳血管攣縮が生じるのでしょうか?
くも膜下腔の血腫により、破裂時のくも膜下凝血の分解産物が脳動脈に作用することで生じると考えられていますが、詳細な発生機序に関してはいまだに解明されておりません。

私たちセラピストにとって大切なのは、脳血管攣縮がなぜ生じるのかということよりも、脳血管攣縮がくも膜下出血後の予後を左右する重要な病態であるということです。
血管攣縮により狭窄が生じると灌流量の低下により脳は虚血状態に陥り、脳梗塞が生じ、最悪死亡してしまう可能性があるのです。


脳血管攣縮は必ず起こるのか?

脳血管撮影上の脳血管れん縮はSAHの70%の症例にみられ、このなかで虚血症状を呈する症候性脳血管れん縮の頻度は36%である。
引用:児玉南海雄・佐々木富男ほか編『標準脳神経外科学』第11版 医学書院(2009年) p211

つまり、100人のくも膜下出血の患者様で70人に脳血管攣縮が認められ、その70人の中で25人には症状が出現します。
症状が出る方は25%程度ですが、70%の方には脳血管攣縮が生じているので、脳血管攣縮に対するのリスク管理は重要になります。


脳血管攣縮の評価とは?


医師は経頭蓋超音波ドップラー法脳血管撮影MRAなどの画像にて診断します。しかし、私たちセラピストは実施することが出来ませんので、他の情報を用いて評価していきます。
主治医が診断することですが知っていて損はありません。
医師は下記の症状が出現した際に、頭蓋内出血や再出血、電解質異常、水頭症、けいれん、重症感染症などの病態を除外した場合に脳血管攣縮の可能性を考えます。
見当識障害
意識レベルの変化
局所神経脱落症状(失語症、片麻痺など)



脳血管攣縮の治療とは?


脳血管攣縮の治療は医師が行います。セラピストが医師の行う治療内容を知る必要は無いと思われるかもしれませんが、治療法を知ることは、患者様の脳の状態を把握する情報源になります。その為、セラピストも治療法やその目的を把握することは重要です。

治療は主に「攣縮の予防」、「攣縮発生後の血管拡張」、「発生した脳虚血の治療」を目的として行います。詳細は下記の表に記載していますのでご参照ください。

・攣縮の予防
・攣縮発生後の血管拡張
・発生した脳虚血の治療

亜急性期の治療

もし、triple H療法や血管内治療が選択されているのならば、脳の虚血を起こしている可能性が高いためリハビリテーションを実施していく際には慎重にならなければなりません。


リハビリテーションをどうするか?


脳血管攣縮が生じて、神経症状が出現しているときにはリハビリテーションを実施することはないと思います。
迷う部分は症状が出現していない状態の、亜急性期でのリハビリテーションです。
患者様はコミュニケーションも可能であり、頭痛や嘔気などもなく安定している状態ですが、脳の中も安定しているかどうかはわかりません。
今までの脳血管攣縮の知識から、積極的なリハビリテーションは控えた方がよさそうですね。
リハビリテーション中、特に注意するポイントは「血圧」、「意識レベル」、「神経症状」です。
少しでも症状が出現することがあれば実施中のリハビリテーションは中断し、主治医へ報告することで重篤な状態にならないようにしなければなりません。

脳血管攣縮では血管の一時的な狭窄があるため脳の虚血を起こしてしまう可能性があります。その状態では血圧が低下すると虚血状態を助長してしまい脳梗塞などのリスクが高くなるので血圧が低下しないように注意しなければなりません。

意識レベルも同様に、脳虚血が進行することと関連します。
ぼーっとしていたり、いつもと違うような状態ではないか、会話が成立するかなどに注意していかなければなりません。
意識障害に関してはゆっこさんの記事で評価について詳しくまとめられていますので合わせて読んでみてください。

神経症状では失語症や運動麻痺などの症状が出現してきていないかということに注意が必要です。
運動の状態や会話に変化がないかということに注意を払う必要があります。
運動麻痺については、脳外臨床研究会滋賀支部代表の小林隆大さんが詳しくまとめているので合わせて読んでみてください。

さらに、脳血管攣縮は2週間持続するため、2週間はこのような症状に注意しておかなければなりません。
特に、症状が出現しなくてもリハビリテーションを実施していく際には頭の片隅に置いておく必要があります。


くも膜下出血は症状が様々な場所に出現し、全身状態も不安定になることが珍しくないため、脳血管攣縮のみではなく、その他の症状に対してのリスク管理が必要になります。
不整脈や肺浮腫などの呼吸・循環器症状や抗ナトリウム血症や低ナトリウム血症などの電解質異常を生じることがあります。

血液検査のデータや胸部の画像検査、心電図などの検査データでも異常がないのかチェックすることや、主治医がどのように診断しているのかを把握しておくことがリスク管理に繋がります。

また、以前の記事で「BAD」についてリスク管理では、血圧を上げすぎないことが重要とお伝えしました。
BADは進行性脳梗塞といわれており、血圧の上昇により血栓が飛び、梗塞を助長してしまう可能性があるので血圧の上昇をさせないような介入が必要です。
今回の脳血管攣縮の場合は、脳虚血が起きているため、通常の脳梗塞と同様に血圧を高く保持して脳灌流量を維持していくという管理が望ましいので血圧が低下しないようにしていかなければなりません。

BADについて興味がある方は以下のリンクより是非読んでみてください!


まとめ


・くも膜下出血後の亜急性期では『脳血管攣縮』に注意する必要があります。

・なぜならば、脳虚血や脳梗塞を引き起こし、重篤な状態へと陥るリスクがあるからです。

・我々セラピストは脳血管攣縮が起きていると仮定した状態でリハビリテーションを進めていくことが望ましく、特に注意する点は「血圧」、「意識レベル」、「神経症状」の3つです。

・これらに注意することで、いかに脳灌流量を保ちながら、状態が悪化した時はすぐに対応する準備をしておくことができます。

・脳血管攣縮には発症後14日間注意する必要があります。


本日も最後までお読みいただきありがとうございました。
明日は脳外臨床研究会 滋賀支部代表の小林隆大さんです。
麻痺の患者様で力が入るようになってきたけど、すぐに力が抜けてしまうことってありませんか。
手を挙げて作業をしようとしても落ちてしまい、挙げては落ちてを繰り返してしまう・・・
実は筋出力が足りないということだけではなく、筋出力を出し続けるために必要な視点があります。
患者様が手を挙げて保ち続けるために必要な内容となっていますので、ぜひ明日の臨床BATONにもお越しください!

臨床BATONどうぞ!!


【参考文献】
児玉南海雄・佐々木富男ほか編『標準脳神経外科学第11版』医学書院(2009年)p206-211
医学情報科学研究所『病気がみえる』vol.7 脳・神経 第2版 p130-141
生塩之敬・ほか編『ニュースタンダード脳神経外科学第2版』三輪書店(2008年)p233-242
平山惠造・田川皓一編『脳血管障害と神経心理学第2版』医学書院(2013年)p25-28
太田富雄・ほか編『NEUROSURGERY脳神経外科学Ⅱ改訂12版』金芳堂(2016年)p857-875

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